現在位置:asahi.com>天声人語 天声人語2008年01月09日(水曜日)付
〈教育とは、学校で習ったすべてを忘れたあとに残るものをいう〉。アインシュタインの言葉だ。学校教育の「頼りがい」は常に問われてきた。教師は不本意だろうが、答えの一つが教育産業の隆盛である▼東京都杉並区の区立中学校が、大手進学塾の講師を招いた夜間授業を計画した。夜の教室を使い、正規料金の半額ほどで塾の指導を受けられる工夫だ。民間出身の校長の発案で、2年生19人が受講を希望していた▼ところが、きょう予定されていた初の授業は、東京都教育委員会の指導で先延ばしされる。生徒全員が出られない/特定業者に教室を供する/教材づくりに教員がかかわる――の3点に疑義があるという▼授業の理解を助けるための補習は別にあり、夜間塾は「できる子を伸ばす」試みといえる。週3日で1万8000円の月謝を出せない家もあろう。一方、少子化に悩む塾にはそれなりの商魂があるはずで、教室で営業されるという心配も分かる▼だが教師の過労が言われる中、公教育の建前を並べるだけでは、学力をめぐる保護者の焦りは消えない。お金のかかる私立校や塾が現にあるのだから、ここは塾に行けない子への福音と考えたい。先人の言葉を続ければ〈まずはやってみなはれ〉(西堀栄三郎)だ▼杉並区教委と学校側は「疑義を晴らして始めたい」としている。国の将来がかかる人づくりで、公と私をことさら分断しても無益だ。官民の知恵を合わせ、教育現場にようやく顔を出した試行錯誤の芽である。どう伸びるか、全国が見ている。 PR情報 |
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