診療所開業に高齢化の兆し、時代は「オーバー55開業」2008年、どうなる日本の医療【第2回】
長谷川氏の言う「ゆとり」は、オーバー55開業の特徴を語る上で重要なキーワードだ。原田氏は「55歳以上の開業は、子どもが大きくなっていて、余計な生活費を稼がなくていいので、がつがつしていない」と言う。 30歳代などの若手開業では、巨額の借り入れの返済のため“増患”に腐心する例が少なくない。家族を養うために収益を上げ続けなければとの心理的な重圧もある。そんなプレッシャーとは関係なく、ゆとりをもってやりたい診療を行えるのが、オーバー55開業の特徴だ。 こうしたセカンドライフを過ごせるのは、医師の“特権”ともいえる。サラリーマンなどの場合、仕事の経験を生かして定年後に何か新しいことを始めたいと思っても、多くの場合実現は困難だ。腕を生かしマイペースで仕事をして、しかも一定の収入を得られるのだから、医師はおいしい商売と言えるだろう。
地域の病院の医師不足解消につながる?最近では保証人なしの融資を行う銀行が増えるなど、中高年医師の開業への追い風も吹いてきている。このこともオーバー55開業の増加につながっている 可能性がある。 オーバー55開業の増加が地域医療に与えるインパクトは、意外に大きそうだ。今、若手医師の開業ラッシュが起こっているが、これは就労環境が悪化している上、病院経営の先行きが見えにくくなり、「早いうちに開業しておいた方がいい」という意識が働いているためだ。 オーバー55開業がキャリアパスの1つとして確立すれば、「可能な限り勤務医を続けて、それから開業してもいい」と考える医師が増え、地域の病院の医 師不足解消に一役買うかもしれない。
後に控える新設医大世代オーバー55開業が今後も増え続けていくのは、まず間違いない。団塊世代のすぐ後ろには、“新設医大世代”が控えているからだ。いわゆる新設医大の第 1期生は、今50歳代半ば。これ以降の世代の医師数は、団塊世代に比べてはるかに多い。 また今後は、診療報酬改定などの影響で、今より厳しい経営を強いられる病院が増えると予想される。2011年度末には介護保険適用の療養病床の廃止も 控える。病院数自体が減り、また人件費のかかるベテランを抱えられる病院が減ることで、55歳以上の相当数が開業に向かうことになるだろう。(オーバー55開業については、日経メディカル2008年1月号の特集記事に詳しい) (千田 敏之=日経メディカル編集長)
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