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2008年1月10日

◎志賀原発の運転 今春再開へ不退転の決意で

 景気の減速が懸念されるなか、タービン損傷で停止している志賀原発2号機の運転再開 が焦眉の急になってきている。原発による低コストの電力供給は、北陸経済の浮上に欠かせぬ要素であり、供給不安を抱えたまま夏の需要期を迎えるリスクは極力避けねばならない。北陸電力は不退転の決意を持って、今春の運転再開を実現してほしい。

 北陸電力は、三月の検証委員会で、1号機臨界事故隠しの再発防止策の実施状況がどう 評価されるかを、2号機再開の「リトマス試験紙」にする考えのようだが、これまでの同社の取り組みを見る限り、打つべき手を着実に打ってきた印象はある。運転再開を地元に申し入れる環境はおおむね整ったのではないか。三月末発表の電力供給計画策定に向け、さらなる努力を求めたい。

 運転停止の影響は、北電の収益悪化にとどまらない。県に入る「核燃料税」が減り、地 域経済もさまざまな面でマイナスの影響を受ける。原油価格が史上空前の高値を付けるなか、発電コストにおける原発の優位性はますます高まっている時期だけに、志賀原発が「宝の持ち腐れ」になっているのは、地域にとっても、もったいない話である。

 北電がまとめた再発防止策は昨年十一月末の段階で、制度・体制など仕組みづくりが必 要なものは90%が完了し、研修・教育などの運用状況は80%程度まで進ちょくしているとされる。運転再開に際しては、これらが百パーセント達成されねばならず、検証委員会による厳格なチェックが必要である。特に「隠さない・隠せない仕組み」について、検証委や地元を納得させるだけのものが構築できたのかどうかが厳しく問われることになろう。

 北電は、地元向けに再発防止策や耐震工事の実施状況を点検する見学会を始めている。 実際に自分の目で見て、原発の安全性について理解を深めてもらう試みである。たとえば柏崎刈羽原発の被災では連絡の遅れや消防体制の不備が問題になったが、このときの教訓は道路基盤の強化や化学消防隊の整備などに生かされている。こうした具体的な取り組みを、できるだけ多くの人々に知らせていく努力が今後もますます重要になる。

◎党首討論 実りある政策協議を

 福田康夫首相と小沢一郎民主党代表による初の党首討論は、議論の深まりに欠けて物足 りなかったと言わざるを得ない。腹を割って連立協議まで行った両氏だけに、いまさら公式の場での討論に抵抗感もあると思われるが、党首同士が相手を論破しようと政策論争の真剣勝負を行うことは大事である。行き詰まる国会審議を動かし、実りある与野党の政策協議を行う突破口にしてもらいたい。

 福田首相と小沢代表が討論で口をそろえて強調したのは、「国民のための政治」である 。そうであればなお、不毛な対立を乗り越えて政策を決める新たな国会の仕組みやルールを考える必要がある。衆参がねじれ状態の国会では、与野党が政策協議を行い、どこかで折り合いをつけて政策を決定しなければならない。今回の党首討論では議論されなかったが、与野党の政策協議機関を設置する案は停滞する国会を機能させる具体的な方策の一つであり、検討を急いでもらいたい。

 延長国会に続く通常国会では、例えば揮発油税の暫定税率を定めた租税特別措置法改正 案など年度内に処理すべき予算関連法案の審議がまず大きな課題になる。これが成立しなければ国民生活の混乱は必至であり、民主党も反対ばかりでは済まないことを認識してほしい。

 福田、小沢両氏の党首討論の中身自体は乏しかった。時間の大半を費やした年金記録不 備問題は、互いに主張し合うだけで、本質的な制度改革の道が示されたわけではない。新テロ対策特別措置法案に関しては、自衛隊の海外活動の原理原則論を重視して首相の基本的な考え方をただす小沢代表に対して、福田首相は憲法論議を回避し、対テロ新法案の意義を説くだけで時間切れとなった。自衛隊の国際平和活動については、恒久法の制定をも含めて、あらためて討論してもらいたい。

 党首討論は、国民にとって次期衆院選での政権選択の判断材料の一つになり、定期的に 継続することが望まれる。しかし、現在の討論時間はわずか四十五分間で、範とする英国議会のような丁々発止の討論には至っていない。有名無実化とか形がい化といった批判を受けない真剣さと運営の工夫も求めたい。


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