人間誰しも年を重ねると、視力や聴力が低下する。瞬時に適切に判断したり、機敏に反応する運動能力も衰えてくる。
そんな高齢者が自動車事故の加害者になるケースが増えている。とりわけ深刻なのが認知症ドライバーの問題だ。昨年も高速道路での逆走事故などが相次いだ。
警察庁によると、六十五歳以上の運転免許保有者数は約千四十万人(二〇〇六年末)。このうち認知症ドライバーは約三十万人と推計される。可能性が疑われる前兆はいくつかある。センターラインを越えたり、車庫入れができなくなるなどが典型例だ。
国も対策に乗り出した。来年六月までに、七十五歳以上を対象に認知機能検査が導入される。認知症と判定されれば免許取り消しの対象となる。高齢者にとって自立の象徴でもある運転免許証を取り上げられるのは大きなストレスだろう。
「高齢ドライバーの問題は街づくりとも密接な関係をもっている」「交通の分野から発想の転換を図り日本社会を変えていく必要がある」。所正文国士舘大教授は著書「高齢ドライバー・激増時代」の中でこう訴える。
運転免許証を自主的に返納する高齢者も増えているが、過疎地に住む高齢者は生活手段としてのクルマを手放せないジレンマを抱える。移動手段を確保する環境づくりが欠かせない。高齢ドライバーの激増時代はもう目前だ。