核問題など、政治的な話題で取り上げられることの多いイラン。そのイランの市民の暮らしをユーモアたっぷりに描いたアニメーション映画が今年のアカデミー賞候補に挙がっています。しかしイラン政府は、この映画の上映を中止するよう各国に求めています。いったい、なぜなのでしょうか。
「戦争は我が国の大事な若き命を奪った」(映画「ペルセポリス」)
中東イラン。この国を市民の視点で描いた映画「ペルセポリス」。首都テヘランに住む1人の少女が25歳でフランスに移住するまでの半生をつづった手描きのアニメーションで、制作したフランスでは観客動員数120万人を超える大ヒット。今年のアカデミー賞のフランス代表に選ばれました。
この作品は監督マルジャン・サトラピさんの自伝。映画のキャンペーンで来日しました。
「イランはテロリストなどのために過激な国に見えるかもしれませんが、これはイランの人間を人間らしく見せる映画です」(監督、マルジャン・サトラピさん)
ただ、この映画に、イラン政府が強く反発しています。
主人公・サトラピさんのおじは、政治犯として投獄・処刑されています。映画は1979年のイラン革命以来の政府による弾圧もテーマ。政治犯の粛清、隣人による密告、女性のスカーフ着用の義務が生々しく描かれています。
これに対しイラン側は、革命の成果について嘘の姿を描いた作品だとして、カンヌ映画祭を前に、まずフランス政府に抗議、上映中止を求めました。
「それについて特にコメントすることはありません。もしカンヌ映画祭で、例えばブラッド・ピットが腕の骨を折るとか、ほかにニュースがあれば話題にもならなかったでしょうから」(監督、マルジャン・サトラピさん)
直接政府にコメントすることは避けるサトラピさん。代わりにイランで禁じられているお酒を飲むことで、反抗的姿勢を示しているのだそうです。
「今の時期だから(イラン側は)反対しているという所があると思いますね。今はイランの核問題というものに世界が注目するがために、やはりこれを併せて見るというのはイラン政府として嫌がっている、ということではないかな」(東京外大・イラン出身、アレズ・ファクレジャハニさん)
「イランの中にあるエネルギーとか、親近感、そういったものが感じられるようだと思います」
「(イランの)イメージが変わりますね」(映画を見た人)
イランでは上映予定はありませんが、海賊版のDVDが出回っているとのこと。サトラピさんは、見たい気持ちさえあれば、どういう形であれ、イランの人の手元に届くと言います。
「今の時代は大変複雑な問題に早急に答えを出そうとしていますが、問題解決には時間をかけなければなりません」(監督、マルジャン・サトラピさん)
サトラピさんの手描きのメッセージ。これから上映される世界各地でどのように受けとめられるのでしょうか。(09日18:14)