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2007年12月18日

辻元清美「聞きにくいことインタビュー」(2)

★国民投票法では、野党そろって反対に持ち込む。
——「絶滅危惧種」の社民党に何ができるのですか。
辻元 キビシイなあ。でも、選挙前より社民党の政治力は上がっています。社民党は議席は少ないですが、特に参議院では社民党が入ってやっと野党が過半数になるという重要なポジションにいます。
政治は数より『位置』。社民党の役割は、「国会の碇」になること。世の中がぐぐーっと右寄りになったとき、誰かが踏ん張って「ここに留まれ!」と引き戻す必要があります。国民投票法の審議のとき、委員会では50対2で少数派の社民党が、そういう役目をしました。このとき自民・公明は、民主との共同提案をめざしていました。私は「なぜ、いまこの法律が必要なのか」とあらゆる角度から問題提起。賛成派三党だけで進めたのでは日本中の反対意見が反映されなくなる。一方自公民VS社共という構図にならないよう、民主との折衝にも神経を使いました。
国民投票法は強行採決されたけれど、最後は野党そろって反対を貫けた。民主党が反対に回れば改憲発議に必要な3分の2がとれません。いま自民党は憲法について身動きがとれなくなっています。粘って粘って、何とか実をとりました。
「国会に戻って、憲法改悪を阻止せい」私に与えられた一議席の意味は突き詰めればこれや、と思います。この2年を振り返ると、憲法漬けの毎日でした。
——辻元さんはいつも護憲、護憲ですが、憲法に「環境権」とか「知る権利」が入るなら、変えてもいいんじゃないですか。
辻元 「憲法を変えればすべてがうまくいく」と叫ぶ政治家は、思考停止しているか他の思惑があるのだと思います。
国会で「改憲キャンペーン」を張っている人たちは、現行憲法は古いから「環境権」「知る権利」などの新しい権利を入れて改憲すべき、と主張します。でもそう主張する人ほど、環境問題に無関心だった。私が「地球温暖化防止」プロジェクトチームの与党メンバーだったとき、産業界の利益を代弁していた人たち。サンゴ礁を壊して米軍基地新設を進める人たち。情報公開法の審議で「知る権利」を入れるのに反対した人たち。その多くがいま「環境権、知る権利を入れて改憲を」と主張します。
彼らの狙いは9条です。集団的自衛権の行使を可能にして、アメリカといっしょに世界中で戦争ができるようにする。「自民党新憲法草案」を見れば分かります。「国民が権力をしばる道具」のはずの憲法が、「権力が国民をしばる道具」にひっくり返されています。徴兵制すら可能な文言もある。現行憲法を「押し付け憲法」と呼ぶ人たちは、集団的自衛権の行使こそ「アメリカの押し付けだ」と拒否すべき。
——憲法9条を護れば戦争をなくせる、というのは平和ボケでは?
辻元 アメリカと組んで戦争をしかける道か、非軍事に徹して国際貢献をする道か。憲法9条をめぐる議論は、どちらなら私たちは引き受けられるのか、という選択なのです。私は後者の方がリスクが低く、誇りを持って引き受けられると考えます。そこで、憲法9条をもつ日本だからこそできる政策を提案しています。
その一つが平和調停外交。NGOなどと連携し、和平のテーブルを用意するプログラムは世界中で必要とされています。60年間、軍隊が外国人を誰一人傷つけてこなかったという事実は、日本が思う以上に世界中で評価されているのです。
インド洋で無料ガソリンスタンドを今後何年も開くことが「テロ対策」に有効でしょうか。軍事力だけで国を守れる時代は終わり。グローバル社会ではエネルギー、食料、水などによる安全保障が不可欠です。人道支援こそ安全保障の切り札。日本のリスクを減らすために憲法9条は有効です。
——国民投票でみんなが反対したら改憲できないのでは。
辻元 私が国民投票法に反対していた最大の理由は、国民からの「憲法を変えたい」という声が聞こえないこと。強行採決までして急いでいたのは「改憲原理主義者」の安倍晋三前総理とその仲間が中心で、自民党内にも慎重な声は多かったのです。
法案の中身も問題だらけ。誰もが等しく意見表明できるのが国民投票の基本なのに、公務員や教員の運動規制が盛り込まれている。テレビCMも一定期間以外はやり放題。テレビ広告料は桁違いで、例えば改憲派のCMに対抗して市民団体がカンパを集めて作るのはまず不可能。改憲が金で買われかねません。最低投票率や絶対得票数の規定もなし。投票率40%なら、有権者の5人に1人の賛成で改憲できます。
国民投票の実施は最低3年後ですが、その間「憲法審査会」で着々と改憲案を検討できるしくみになっています。私は国会で、ただの手続き法どころか改憲そのものと地続きだ、と指摘し続けました。(続)


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