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青木 智子(あおき ともこ) アドバンス法律事務所 NSW大学法学部・教養学部卒、98年NSW州弁護士資格取得。現在、アドバンス法律事務所にて活躍中 現在、オーストラリアではChild Support Agency(以下「CSA」)と呼ばれる家庭裁判所とは独立した政府機関が養育費に関する一切の手続きや処理を行っており、子供と住んでいない(あるいは日常的に養育に携わっていない)方の親が支払うべき金額の査定や徴収などを継続的に執り行います。 査定は支払い義務を持つ親の課税所得に対して行われ、また支払いを受ける親の経済状況なども考慮されます。支払い拒否や滞納は政府に対しての個人的負債となり、CSAにはさまざまな手段(給料や銀行口座からの差し押さえなど)を講じて支払い義務を持つ親から徴収する権限が与えられています。こうした手段を講じても支払いが行われない場合には、CSAによって請求訴訟が行われることもあります。 2000年7月1日、オーストラリアは「Hague Convention on the Recognition and Enforcement of Maintenance Liabilities」をはじめとする数々の国際条約の加盟国となりました。これにより、それまで支払い義務を持つ親、あるいはその子供が国外に移転した場合に困難となっていた養育費徴収が容易になりました。子供がこの条約の加盟国に居住している限り、当該国で下された養育費に関する命令がオーストラリアのCSAに登録、執行されることが可能となり、同様に、支払い義務を持つ方の親が条約加盟国に移転した場合でもオーストラリアのCSAの査定が当該国で登録、執行されることも容易に行われるようになりました。 しかしながら、日本はこれら条約の加盟国ではなく、したがってオーストラリアと互恵関係にありません。このことはつまり、日本でオーストラリアの実父に対する養育費支払請求手続きを行い、たとえ、実父に対し支払命令が出されたとしても、その命令はオーストラリアの裁判所やCSAなどでは登録、執行の対象にならないということです。 したがって、質問者のケースでは、実父の自発的な支払いが望めない場合、豪州国内でCSAに査定申請手続きを行うよりほか、現実的な方法は考えられません。ただし、その査定後、質問者が子供とともに再度日本に移転した場合にはCSAの権限はその時点で停止すると考えた方がいいでしょう。また上述の通り、子供が養子縁組をした場合、実父の養育義務は原則的に終結すると考えられますので、質問者のケースがこのパターンにあてはまるか否かは詳しく状況説明をした上で専門家のアドバイスを受けた方がいいでしょう。 なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。 *オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9283-7646)、または郵送で「日豪プレス編集部・なんでも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答は致しませんので、ご了承ください。
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