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法律

 オーストラリア人の夫との間にこちらで生まれた子供がいます。私は永住権を持っていますが、国籍は日本です。友人から、もし離婚した場合オーストラリア国籍の子供のCustody(養育権)は自動的に夫に行ってしまうと聞きましたが、本当でしょうか。私がCustodyを取るためにはオーストラリア国籍が必要になるのでしょうか。(38歳女性=主婦)

山本(青木)智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativesのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している

A  現行のオーストラリアの家族法(The Family Law Act 1975)では1996年の改正により、子供の養育に関する裁判所の命令は「parenting orders」と総称されるようになりました。また、それ以前に使われていた「guardianship」「custody」「access」という言葉は「parental responsibility」「residence」「contact」という言葉にそれぞれ置き換えられています。これは、どちらかの親が子供を「所有する」ために親権争いをすることや、そうした争いで「子供を勝ち取る」という一般概念を払拭することを目的としています。子供は親の所有物ではなく、また、親は子供と居住する権利も持っていません。それに対し、子供は親との関係を保ち、養育される権利を持ち、そして離婚した夫婦はその子供の親として同等の養育義務を双方ともに持ち続けるというのが基本的な考え方です。特例的な場合を除き、子供の基本的な権利が守られることを確認するのが家庭裁判所の任務とされています。
  この観点から、例え子供がオーストラリア籍であっても親の同国籍の有無により、過去で言われたところの「親権」、あるいはresidence order(子供との居住命令)の決定が「自動的に」下ってしまうようなことはありません。また、親がオーストラリアの永住権を持っていれば「子供が親との関わりを保つ」ための命令を遵守することは必要十分条件であり、したがって通常の場合、オーストラリア国籍の有無が問題になることはないと思われます。
  ただし、ご質問の方のようにオーストラリア籍を持たない方が、離婚の際、夫の意に反して子供とともにオーストラリア以外の国で生活したいという要望がある場合などには、オーストラリア国籍について裁判所は異なる見解を示すことも考えられます。オーストラリア以外の国がその子供の親にとっての「自国」である以上、オーストラリアに子供を連れて帰らなくなる可能性が高いと考えられるためです。いったんオーストラリア国外、特にハーグ国際協定の加盟国でない国(日本も含む)に連れ出された子供をオーストラリアに連れ戻すことは非常に困難なため、それを未然に防ぐべく、裁判所がresidence orderを子供の国外退出を否定する当事者に単独で認めることが考えられます。もちろん、こうした命令も「自動的に」認められるようなことはなく、その命令を出すことによる子供自身への影響も含め、さまざまな要素が考慮されます。しかし、子供の国外退出を否定する当事者の承諾なくして他方当事者が子供をオーストラリア国外に連れ出した具体例が過去にある場合、あるいは将来的に連れ出す危険性が非常に高いと認識される場合などには、否定する当事者に対してresidence orderが単独に認められる可能性は高くなるでしょう。

 なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

 

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