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法律  


 このたび不動産を購入することになりました。もうじきこちらで結婚するのでフィアンセと共同名義にしようと相談していますが、購入資金に関しては全額日本の両親からの援助を受けることにしており、両親が気にしている点は、もしも将来的に離婚した場合にも購入する家は私のものであると主張できるのかということです。生涯私だけのものであると主張することを確実にする方法はあるのでしょうか。
(30歳女性=シドニー在住)

山本(青木)智子(やまもと ともこ)
ディ・リッツィオ法律事務所

NSW大学法学部・教養学部卒、98年弁護士資格取得。2006年7月よりDi Lizio & Assocaitesにて家族法、不動産および一般商取引法、民事・刑事訴訟法を主専門として活動中

 

  まず、ご自身が現在永住権あるいは市民権保持者であるか否かによってコメントが変わってきます。オーストラリアには海外からの投資を規制するポリシーがあり、政府はこのポリシーのもと非居住者による不動産投資を原則的に制限しています。もちろんこの規制にはさまざまな例外条件が設定されていますが、もしもご質問者が同ポリシーに該当する可能性がある場合には不動産購入前にこの点について調査する必要があります。
  不動産を2人以上で共同購入する場合には「ジョイント・テナンシー」または「テナンシー・イン・コモン」の2通りの方法があり、一般に言われている「共同名義での購入」とはジョイント・テナンシーによる保有形態のことを指し、共有者は不動産全体の所有権と占有権を有します。このことはつまり、たとえ不動産購入における出資額の割合が共有者の間で均等でなくとも、所有者としての同等の権利が与えられるというわけです。また、共有者の片方が死亡した場合、故人の不動産に対する権利は他方の共有者に自動的に移転します。つまり、故人の遺言書に記されなくとも、また、遺言書の内容にかかわらず、残された共有者に故人の権利がすべて譲渡されるということです。さらに、ジョイント・テナンシーで不動産を共有する場合、売却したり抵当権を設定する際には他方の共有者の同意なくしては不可能となります。
  これに対してテナンシー・イン・コモンによる保有形態は1件の不動産に対する共有者の権利配分は必ずしも等分である必要がなく、出資額の割合などに応じて権利を案分することができます。また、共有者は各々の持つ権利を単独で売却したり、それに対して抵当権を設定したりすることができます。もちろん遺言により共有者以外の者に譲渡することも自由です。
  共同名義での購入とのことですが、そうすることの特徴をよく理解した上で決定することが肝要です。離婚に際した時の懸念が現時点で存在し、また前述の政府の投資規制に該当しないのであれば、共同名義ではなく単独名義での購入の検討をお薦めします。しかし、いくら単独名義で購入したとしても結婚期間中にその不動産のメンテナンスのために費やす労力や費用などは、資産保持のための貢献として夫も主張できる権利が発生する可能性はあります。また、名義がどちらのものであっても結婚期間が長くなればなるほど、離婚に際しての財産分配では結婚前にどちらかが保有していた資産も夫婦の資産に含めるとする主張が優勢になってくるのも事実です。子供が存在する場合にはこうした主張はより一層優勢になります。
  結婚時に双方が所有する資産は離婚の際も、それぞれの所有権を主張することを目的とした同意書をフィアンセと結婚前に交わすことも可能です。ただし、こうした同意書の有効性についてはこれから先の結婚の期間、子供の有無やそのほかの予期しえぬ境遇によって議論の対象となりえることがあることも事実です。
  なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。



*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9283-7646)、または郵送で「日豪プレス編集部・なんでも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答は致しませんので、ご了承ください。
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