第39回
米民主党も中国に甘くない
――“反中派”3議員が中枢ポストに
国際問題評論家 古森 義久氏
2007年1月5日
米国の第110会期の新議会が1月4日、幕を開けた。昨年11月の中間選挙で民主党が上下両院での多数議席を奪回した結果を受けての新しい連邦議会のスタートである。
米国の国政では外交や軍事は行政府の長たる大統領の特権である。立法府としての議会はあくまで法案の審議と法律の作成を任務とする。だから議会が民主党の多数となったからといって、ブッシュ政権の外交その他の政策が一気に民主党寄りに変更を迫られるというわけではない。とはいえ、大統領と同じ共和党が議会両院の多数を占めていたこれまでとは異なり、政権の運営が難しくなることも事実である。
そうした展望のなかでまず注目されるのは新議会を動かす民主党の幹部議員たちの政見だろう。上下両院の議事を先導できるようになる民主党リーダーたちはなにを考え、なにを目指すのか。その実態は間接的にせよ、必ずやブッシュ政権の対外政策にも影響を与え、東アジアや日本への新たな余波をも生むといえよう。特に民主党幹部議員はアジアにはどんな姿勢をみせているのか。
この点で注視されるのは、中国への態度がきわめて厳しい議員たちが下院の民主党中枢には存在するという事実である。中国を人権抑圧や不公正貿易を理由に激しく糾弾し、北京オリンピックのボイコットさえ唱えてきた議員たちが今度、新たに下院の枢要ポストに就くことになったのだ。この事実は日本のマスコミの多くは報じていない。むしろ民主党多数の新議会は中国に甘く、日本に厳しくなるだろうというような予測を報じる媒体さえあるようだ。
ところが現実にはこんどの第110会期新議会では年来、中国を激しく糾弾し、「反中」とさえみなされてきた民主党議員たちが大きな役割を演じることになったのである。
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