顧客満足の定義
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C S (顧客満足・顧客サービス)
定 義 提供された商品・サービスさらに提供者の理念などについて顧客が自分自身の基準によって納得の得られるクオリティと価値をみいだすこと(1992 c T.Satow)
CSは顧客満足の意味だが、一般的に「企業が顧客を満足させること」と間違って理解されている。顧客満足は「顧客が満足する」ことである。企業の出来ることは顧客の満足が最大限になるように経営者からすべての従業員までシステムに基づいて企業の総力を結集してサービスを提供すること、つまり顧客サービスしかないのである。企業のCS活動とは顧客満足を最大限にする活動のことだ。CSというコインの表はCustomer Satisfaction(顧客満足)、裏はCustomer Service(顧客サービス)だ。
いま展開されているCS活動を見るとどうも目的が見えていない企業が多い。CS活動を顧客接点でのサービス改善の技法と捉えたり、製品やサービスの改善手段、あるいは顧客の評価によって自社の業務を改善するために行うものと考えたり、すべて取引のあるお客を対象にする活動と信じこんだり、従来の伝統的マネジメントで成果があげられると思ったり、具体的に企業の利益につながらないと考える。企業が顧客満足に注目する唯一つの目的は顧客のロイヤリティを維持して、長期的な継続的な利益を得ることにある筈である。
すでにマーケティングの定義も「利益を考えながら顧客に満足を提供すること」と顧客満足を明確にうたっている。(Kotler 1998)
顧客満足が注目されるようになったのは欧米で1970年代の終わりから80年代初めにかけてだが、近代マーケティングの差別化戦略の行き詰まり、市場の飽和化と自由化が要因である。市場はこれまで企業に主導され、支配されて成熟してきた。その支配原理は「資本と労働の生産性の高さが利益を生む」という工業経済社会の経営思想に基づいていた。
今や、われわれは「第2の産業革命」に直面している。モノを作る経済からサービスを提供する社会、サービス経済社会の真っ只中にいる。これまでの普及率需要に支えられてきたモノを作る企業の思考では、新しい時代には順応できない。時代は顧客主導の時代に大きく変わりつつある。企業の利益の根源は「サービスのクオリティの高さ」(Albreht 1985)になった。サービス経済社会での企業理念・組織、さらに顧客(社内顧客である従業員を含めて)に対する考え方を180度転換させなければならない。 いまは「顧客革命」の時代なのである
すべての人があなたの商品を買ってくれなくなった。顧客が企業を選ぶ時代だ。企業の行く手を決めるものは顧客なのである。お客と顧客は違う。顧客とはあなたの企業が提供する価値に共感しそれを共有しようとする限定されたお客をいう。あなたの企業の顧客は誰か。その求めている価値はなにか。その求めている価値をあなたは提供しているか。これらをミッション・ステートメントで明確に文書化しているだろうか。それを顧客に明示して約束をしているだろうか。権限を付与された従業員が自分の判断の拠り所はミッション・ステートメントしかないのだ。
顧客主導経営はその中心に顧客(社外顧客と社内顧客)を据える。会社の組織、構造、戦略はすべてそれを中心に構築されなければならない。
社外顧客と社内顧客のいずれが重要だろうか。最近では「社外顧客は2番目」とされている。employee からassociates(共同事業者)と呼ばれはじめた社内顧客、つまり従業員が満足してやる気がなければ、社外の顧客が満足し感動することはありえないからだ。
顧客の求めているのはもはや商品・サービスでなく、価値なのだ。顧客の事前期待と実際に手にした価値がイコールな状態を満足という。顧客にとっては当たり前のことだ。顧客満足のレベルでは再購入につながることは少ない。満足した顧客の再購入率は70%だが、大変満足した、つまり感動した顧客のそれはほぼ全員の98%なのだ。いかにお客を顧客に、顧客を固定客に、固定客を贔屓客にするか。それには全社員が、顧客のためなら隣の店のモノも売る企業文化を育てなければ不可能だ。図のサイクルは採用・選抜に始まる。
そのためには組織の改革が必要だ。トップを頂点にした組織を逆さまにする。「逆さまのピラミッド」だ。ノードストロームの組織図は上に位置する各階層を下が手で支えている。リッツカールトンホテルの「クレド」「モットー」「べーシック」に見られるミッションステートメントの徹底。サービス提供者は知識労働者である。(Drucker 1993) 肉体労働者の生産性を飛躍的に上げたフレドリック・テーラーの「科学的管理法」では知識労働者の生産性は上がらない。従業員を単に労働力の提供者と見るのでなく従業員は資本財であるという、すなわち人材から人財への意識の変換。そして何よりも従業員に自主的に判断を許す権限付与(empowerment〈権限委譲は誤訳〉)、そして徹底したオープンネス(情報の公開)、評価の公正さと認知、管理職から支援職への変貌がそれを可能にする。顧客主導企業とは「やる気のある従業員と満足した顧客が真の唯一の従業員と考えている企業」なのだ。20世紀に引き続き21世紀にも先進国が優位性を保つ鍵は知識労働者の生産性の向上にかかっている。これはドラッカーの指摘するところである。(Drucker.
1999)
これまでわが国で「顧客満足経営」と信じてきてやってきたことは「サービスの質と生産性向上のアプローチ」の一つであって、その考え方はこれまでの「品質管理」を単に製品に限定しないでサービスの品質から経営の品質にまで広げたTQCあるいはTQMの考え方であったのだ
*参考図書
企業成長のサイクル