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【主張】3児死亡事故判決 危険運転罪の見直し急げ
福岡市の3幼児死亡事故の判決は、裁判所が危険運転致死傷罪を適用するかどうかが最大の注目点だった。結局、同罪の適用は見送られ、危険運転罪の成立には、高いハードルがあることを改めて印象付ける判決となった。
事故はあまりにも悲惨で許し難いものだった。被告の元福岡市職員は一昨年8月、酒を飲んで運転中に追突事故を起こし、幼児3人と両親が乗った車は、そのまま橋の欄干を突き破って海に転落、幼い3兄妹が水死した。
検察当局は危険運転致死傷罪を適用し、道交法違反(ひき逃げ)との併合罪で最高刑の懲役25年を求刑した。これに対し弁護側は、正常に運転できる酒気帯び運転で、危険運転罪には当たらないと争った。福岡地裁は弁護側の主張を取り入れる形で、被告に懲役7年6月を言い渡した。
そもそも、危険運転罪は飲酒運転などの悪質運転で人を殺傷した場合、道交法より格段に重い刑罰(死亡させた場合の最高刑は懲役20年)を科すもので、世論の支持も得て、平成13年12月、刑法に追加された。
ところが、施行当初から、取り締まりに当たる警察当局では、同罪の構成要件が厳密で、「故意」の立証が極めて困難との指摘が出ていた。このため、起訴段階で危険運転罪の立件を断念するケースが各地で目立っているのが実態である。
8日の判決でも福岡地裁は「酩酊(めいてい)状態ではなく、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態だったとは認められない」とし、事故はわき見運転による前方不注意と厳格に法解釈、業務上過失致死傷罪にとどめた。
裁判官によっても判断がばらついている。昨年12月の名古屋高裁判決では、1審で認められなかった危険運転罪を2審では認定し、懲役18年(1審は懲役6年)の判決を出した。
酒を飲んで運転し、一瞬にして3人の幼児の命を奪っておきながら、判決は求刑の約3分の1では、何のための厳罰化だったのかと問いたくなる。
危険運転罪の構成要件を早急に見直し、もっと弾力的に運用できるようにすべきではないか。また、危険運転罪が導入されて約6年にしかならない。判例を積み重ね、司法判断の基準を確立させることも重要であろう。