◇支援団体の育成急務
「ハイハイはしなくても大丈夫よ」。初めての子育てに悩む若い母親からの相談に、スタッフが語りかけた。
任意団体「かばさんファミリーの会」が山県市内で運営する育児サロン「おやこYY(ワイワイ)ひろば」。週3回、親同士がお茶を飲みながら語り合い、子どもを遊ばせる場を提供している。スタッフ9人は県の「子育てマイスター」認定者。乳幼児を育てる現役ママたちだ。現在、20~30代の親約20人が、ここを利用している。
県は06年、市民と地域の子育て支援事業を結びつける「子育てマイスター」制度を創設した。養成講座修了者や保育士などの有資格者を人材バンクに登録し、要望のある各市町村などに紹介する仕組みだ。
会の木村麻理代表(35)は2児の母。以前はアパート暮らしで、育児に孤軍奮闘する日々を過ごした経験を持つ。「月1回開かれる乳幼児教室が楽しみだった。虐待などを防ぐためにも、ママには外に出るきっかけが必要。おしゃべりだけでも笑顔になる」。マイスターには30~50代を中心に291人が登録している。県は4年後に1000人を目指す。
これまでも同様の制度はあった。だが官主導だったため、活用がおざなりだった。そこで県は、マイスターの人材バンクや研修会の運営を、ノウハウを持つNPO「くすくす」(大垣市)に委託した。「くすくす」はマイスター一人一人の性格や希望を把握し、市町村の担当者が意見交換する交流会を開くなどして、マイスターと自治体との意思疎通をスムーズにした。
ただ、民間との協働型の育児支援には、現時点で限界がある。県内の「地域子育て支援拠点」は現在121カ所。そのうち、「かばさんファミリーの会」のような民間運営は4カ所しかない。県は委託を拡大したいが、実績がある団体が見つからない。「くすくす」の安田典子理事長は言う。「子育て支援団体の育成が急務。私たち市民も、自分のできる支援のあり方を提案していくことが大切だと思う」【稲垣衆史】=おわり
毎日新聞 2008年1月8日