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米国:注射で死刑は残酷な処罰か 連邦最高裁で弁論、違憲なら影響大

 【ワシントン小倉孝保】薬物注射による死刑執行は苦痛を伴い、米憲法が禁じた「残酷で異常な処罰」に当たるとして、米ケンタッキー州の死刑囚2人が執行の停止を求めた裁判で、米連邦最高裁が7日、口頭弁論を開き原告側の主張を聞いた。米国ではほとんどの死刑は薬物注射で行われているため、最高裁が違憲決定を下せば米国の死刑制度に大きな影響を与えそうだ。

 訴えているのはラルフ・ベイズ(51)、トマス・クライド・ボウリング(53)の両死刑囚。それぞれ90年代に2人を射殺し死刑判決を受けた。同州では、3種の薬剤を混ぜた注射で死刑を執行する。両死刑囚は、この方法が米憲法修正8条に違反するとして執行停止を求めたが、昨年4月に州最高裁が退けたため、連邦最高裁に上告した。

 現在、州法で死刑を規定しているのは全米50州のうち36州。そのほとんどの州が薬物注射で死刑を行っている。米国の死刑反対グループによると、米国で死刑が復活した76年以来、薬物注射が約900件と最多で、電気椅子が約150件。ごく少数のガス室、絞首刑、銃殺刑があった。

 薬物注射による執行は82年にテキサス州で行われたのが最初。意識が失われ苦痛を伴わないと説明されてきたが最近、研究者から「しばらく意識があり窒息感や焼けるような熱さを感じる可能性がある」との報告があった。

 同種の裁判は多くの州で行われ昨年10月には、テキサス州高等裁判所が死刑執行の延期を決めた例がある。最高裁の判断が出るまで、執行を停止する州が広がるとみられる。

 ◇日本は「絞首」、議論の可能性も

 日本の死刑執行は刑法で「絞首」とされている。鳩山邦夫法相は昨年10月、衆院法務委員会で「もっと安らかな方法はないか、という率直な思いはある」と言及。今後、執行方法について議論が広がる可能性もある。

 日本では死刑執行のあり方やその是非に関する議論は一種の「タブー」だったが、鳩山法相は10月、非公開で省内の勉強会を設置。戦後初めて、執行された死刑囚の氏名を公表するなど、一定の改革が行われている。

 しかし、12月7日に3人が死刑執行された際、記者会見した法相は、「死刑(執行の方法など)を議論しているのなら、執行すべきでないという意見があるが、モラトリアムはできない」と語り、「勉強」と実際の執行は区別する姿勢を強調した。

 勉強会の場では、薬物による海外の執行例も紹介されたとみられるが、ある省幹部は「(法改正が不要な)氏名公表と異なり、執行方法はあくまで研究材料の一つ」と慎重だ。【坂本高志】

毎日新聞 2008年1月8日 東京朝刊

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