若い外科医が海外に逃げていく--もう1つの医療崩壊2008年、どうなる日本の医療【第1回】
大学教授は教授会で選ばれるが、選考の際一番の目安となるは、インパクトファクターだ。インパクトファクターとはその学術雑誌が「どのくらい引用されているか」を示す指標で、その雑誌の「格」を表す。そして、学術雑誌に論文が掲載された回数にインパクトファクターを掛け合わせたものが、いわばその医師の「獲得ポイント」となるのだ。 この仕組みは、内科系の医師だけでなく、手術のイメージが強い外科医でも基本的に変わらない。 外科医は一般に、医学部卒業後、いくつかの関連病院を異動しながら、臨床経験を積み、10年ほどで一人前になる。その合間に、大学院に入って研究を行い、論文も書く。論文を書く暇がないほど手術に明け暮れた“根っからの外科医”は、手術はうまくなるかもしれないが、教授になるのは難しい。 逆にいえば、大学で上に上っていきたければ、外科医であっても手術の腕を磨くよりも論文書きに精を出した方がいい。そもそも、関連病院に出ずに大学に残っていると、若い医師は執刀する機会がなかなか回ってこないという現実もある。 一般国民には、外科医の技能を保証するものと思われている「専門医」資格でも事情は同じだ。手術の技術よりも論文が重視されるのだ。
米国の充実度は日本の3〜6倍「外科医になりたい」「早く手術がうまくなりたい」。そう思って医学部に進み、卒業後、この現実を知ったら、あなたならどうするだろうか? 医局にとどまってしきたりに従う以外、手術の修練を積むチャンスがないのであれば、我慢するだろう。だが、ほかにもっと魅力的な選択肢が目の前にあるとしたら…。 今、若い有能な外科医が米国を中心とした海外に目を向けるのは、こうした至極当然な理由からなのだ。 |
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