2007/12/3 月曜日

26年間も日本一の旅館・加賀屋さんに学ぶ・・・(3)

Filed under: 未分類 — 松本祐 @ 11:52:34

どうして、日本一のサービスが全社員、出入り業者にまで浸透されたのだろうか?不思議に思って、ご挨拶に来られた、総支配人、総料理長、支配人、お部屋のサービス係の女性に矢継ぎに聞いてみた。結果は、「どこよりも社員を大切にしている」とうことである。いい畑に美味しい果物や野菜が獲れるように、社員の満足なくして、サービス業なし!、と心底悟った。誤解を承知で言うと、顧客満足ナンバーワンを目指すならその前に”一番のお客様が社員さん”という位に社員を大切にすることだ。自分の与えた愛情分しか、愛情など帰ってこない。子育ても同じだ。暖かいまなざしや愛情一杯に育った子供は、誰にも優しい子供に育つ。社員を大事にした愛情がそのまま、いいサービスや笑顔となりいい顧客を惹き付けるのだ。悪い会社には悪い社員と悪い顧客が集まり、お互い足を引っ張りあう地獄の修羅場を演じるのである。逆にいい会社には、いい社員といい顧客が集まり、足りない所を支えあい、励ましあい、褒めあって、感謝の日々を送るのである。

加賀屋の社員は皆、社歴が長い。私たちの部屋を担当したお部屋係は、何室担当なの?と聞くといえ、松本様お一方の担当です。今日は暇なのかな?と思って聞くと、いえ、私たちが充分な”もてなし”ができるように女将が配慮してくれて、一人一部屋が担当なのです。だから、担当のお客様のために毎日花を生けたり、お茶を立てたり、いかに快適にお過ごしいただくか、何か足りないものは無いのか、料理にご不満は無いのかなどお好みや体調にまで気を配れるというのだ、という。

また、こんな逸話もある。加賀屋は今年、3月23日に発生した能登沖大地震で大災害を受けた。道路は寸断され、建物は大きく痛んだ。通常なら3~4ヶ月も掛かる補修の大被害だ。一日も早い復興をと24時間昼夜兼行でも1ヶ月以上の改修が余儀なくされ、やっと5月のゴールデンウィークに再開できたのだ。私はその間従業員はどうしたんだろう?と思って、支配人に聞いてみた。「本来なら一旦全社員を解雇して開業後、再雇用すると補助金が出て経営的には助かったのですが、加賀屋はあえてその道を取らなかったのです」、という。旅館という職業柄、母子家庭や高齢者、地方から出てきている社員も多い。災害とはいえ、今解雇するとそんな社員たちの明日からの生活にも困るだろう・・・そういう社長の決断で休業中も全社員を雇用続け、その間は、研修や社内清掃という「お金にならない仕事」をやり続けたのだった。

常に利に走らず、ひたすら社員を大切にする土壌に「もてなしの心」の大輪が咲いたのだ。お部屋係の遥かさんも18歳からもう、20年も勤めているという。実家は埼玉県だが、「この加賀屋が好きだから、サービス業が好きだから、ずっとこの和倉温泉にいるつもりです!」と言い切った。そこには、自分の仕事に対する誇りと自信が漂っていた。

正直者が得をする、そんな時代が来たのだとこころが和んだ。善の循環がもたらす巨大エネルギーが織り成す旅館、加賀屋、その美しき流れはどこまで続くのだろうか。わが社は足元にも及ばないが、その遠い道のりをひたすら歩いて行こうと心に誓った。毎日こころくばりをしてくれたお部屋係の遥かさん、3日間、1.5時間も掛かる漁港まで自ら足を運んで特別料理を毎日作っていただいた総料理長、突然の歯痛で歯医者まで送り迎えしてくださった支配人、笑顔で出迎えてくれた、若女将、中女将・・・・タオル一つ残っていない湯殿を管理していたおじさん、36年も勤めていた全盲のマッサージ師、・・・・・みなさん本当にありがとう。お陰さまでサービス業の極意を伝授していただき、また苦労を共に下かみさんへ最高の「結婚23周年記念」のいいプレゼントができました。

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