◎脱「小京都」 見習いたい松本市の矜恃
金沢市と長野県松本市がきょう、文化・観光交流都市協定の締結に向けた覚書を交わす
にあたり、金沢市に注文したいことが一つある。全国京都会議を退会した松本市にならって「小京都」の呼び名を返上し、同会議を抜けることだ。
金沢と松本はともに近世城下町として発展し、武家文化を受け継ぐ歴史都市である。全
国に数ある城下町の代表格と言える金沢が、全国の小京都を束ねる全国京都会議にいつまで加盟しているのか。国土交通省が新年度創設する歴史的環境形成総合支援事業の選定第一号を目指すというなら、城下町を小京都と呼ぶごまかしを看過せず、退会した松本の矜恃(きょうじ)を見習ってほしい。
城下町は、公家文化と古都の条里制を基盤として発展してきた京都とは別物である。坂
が多く、三差路や広見が特徴的な金沢の街並みは、平地に碁盤の目状に造られた京都とはまるで違っており、「ミニ京都」に分類するのはおかしい。木に竹を接ぐ無理をしてまで小京都の名をありがたがっていては、観光客だけでなく、市民の歴史認識も誤らせかねない。これではふるさと教育が泣こうというものだ。
全国京都会議は一九八五(昭和六十)年に発足した組織で、事務局は京都市観光協会に
置かれている。京都も、一応は他の市町とともに名を連ねる形をとってはいるものの、その実は、北は青森県弘前から南は鹿児島県知覧まで、京都の街並みや京風の文化を取り入れて栄えた都市が数多くあると紹介することによって、「本家本元」の京都の存在感を一層際立たせ、観光振興につなげるための組織なのではないかという印象がぬぐえない。
千年を超える歴史と文化を有する京都の人気にあやかり、旅番組などで小京都と紹介さ
れることによるイメージアップ効果を期待する自治体もあるだろうが、金沢は、それと一線を画す必要がある。城下町の「トップランナー」として世界文化遺産登録を目指す金沢に求められているのはそんなものではなく、京都とはまったく違う個性的な部分にさらに磨きをかけていく姿勢だろう。市民にその意欲を示す意味でも、金沢は早く全国京都会議とたもとを分かってほしい。
◎ドラえもんとコロッケ 高岡発信の「最強コンビ」
高岡市内の若手経営者らが共同出資で新会社を設立し、ドラえもんと高岡コロッケを組
み合わせたご当地グッズを売り出す。コンビニ店頭にも並ぶなど人気が高まっている高岡コロッケと、アニメとして世界的な知名度を誇るドラえもんという二つのキャラクターが醸し出す温かみのある高岡を新たに発信したい。
昨年、高岡コロッケ実行委員会が企画した年賀はがきは、同市出身の藤子・F・不二雄
氏の漫画「キテレツ大百科」に登場する「コロ助」をデザインした絵柄が人気を呼び、県内外から購入の申し込みが殺到、限定五万枚が早々と完売した。それほど「藤子漫画」の効果は大きく、これがドラえもんとなれば、そのインパクトは絶大だろう。
このご当地グッズは、コロッケの中からドラえもんが飛び出すような絵柄のデザインに
なっており、キーホルダーや携帯電話ストラップ、ボールペンなどに付けてアイデア土産品として売り出される。新会社は高岡商工会議所青年部の役員七人が出資して約三万六千個を製造し、四月から販売する予定という。
この意表をつく組み合わせは、開町四百年を控えた歴史文化都市としての顔に加え、高
岡市に未来志向の魅力付けが必要であることを実感していた若い世代の発想が生み出したと言えるだろう。
日本発の先端カルチャーとして、今や世界的な広がりを持つアニメや漫画を取り込んだ
地域おこしは、鳥取県境港市の水木しげる記念館の成功に代表されるように、全国各地でご当地発信の切り口として盛んになってきた。輪島市でも、同市出身の永井豪氏の記念館を観光名所「朝市通り」の一角に建設する方針を打ち出している。ここにも、アニメと食との組み合わせにより、一般的な能登へのイメージの転換を促す可能性も期待されている。
高岡のご当地グッズは、人気が定着しているドラえもんもさることながら、売り出し中
の高岡コロッケの知名度アップにも頼もしい追い風をもたらすとみられるだけに、コロッケの製造販売関係者も、実際のコロッケとグッズを組み合わせて発信するアイデアなどを今後大いに打ち出してもらいたい。