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「感想うまく言えない」 「宝物」の子供失った夫婦
天国のきょうだいは、判決をどう聞いただろうか−。3児を暗い海で亡くした大上哲央(あきお)さん(34)とかおりさん(31)夫妻は、今も悲しみが癒えない。「なぜこんな事故が起きたのか」。答えを求め8日、初めて2人で訪れた福岡地裁の法廷。「厳罰を」の願いが届かなかった。
「胸がいっぱいで(感想は)うまく言えません」。判決後の記者会見で哲央さんは言葉を詰まらせた。「結論は裁判所の判断に委ねようと思ってきたので、受け入れようと思ってます」。自らに言い聞かせるような口調だった。
夫妻は3児がほほ笑む遺影を抱いて傍聴。「奪った命がどんなものだったのか、被告に分かってほしかった」と、かおりさんは話した。だが望んでいた危険運転罪の適用は見送られ、険しい表情を崩さなかった。
判決理由で裁判長が「3児は両親から最大限の愛情を注がれ、宝物のように育てられた幸せな日々を送っていた」と暮らしぶりに触れた時、かおりさんの涙があふれた。
かおりさんは「与えうる中での最高刑(が言い渡された)という点に、裁判所の配慮を感じた。3人には『あなたたちの価値が軽いと扱われたわけではないんだよ』と伝えたい」ときっぱり。
夫妻の自宅玄関には、今も長男、紘彬(ひろあき)ちゃん=当時(4)、二男、倫彬(ともあき)ちゃん=同(3)、長女紗彬(さあや)ちゃん=同(1)=の靴が3足並ぶ。昨年のクリスマスには、生前と同じようにプレゼントの絵本を1冊ずつ用意した。
ともに心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が続く。哲央さんは「夜の暗がりを歩いたり、タクシーに乗ったときに突然、事故の残像が脳裏をよぎることがある」という。事故以来、車を運転したことはない。
昨年9月、第4子となる愛子ちゃんが誕生し、少しだけ2人に笑顔が戻った。被告からの謝罪や面会は断り続けている。