黒海に面しロシアとトルコに挟まれたグルジアで大統領選が行われた。中央選管は前大統領のサーカシビリ氏の勝利が確実と発表した。
野党デモを催涙ガスで排除するなど強権的姿勢に批判を受け、辞職しての前倒し選挙だった。欧米の選挙監視団は国際基準に沿っているとの見解だ。一方、野党勢力やロシア外務省は、圧力や報道規制などがあったと指摘している。
サーカシビリ氏は、二〇〇三年、当時のシュワルナゼ大統領を辞職させた「バラ革命」と呼ばれる民主化運動で大統領に選出された。バラは非暴力の象徴だった。その後は親欧米の外交方針をめぐってロシアと対立し、野党の背後にロシアがいると、かたくなだ。
バラとグルジア人と言えば、加藤登紀子さんの歌った「百万本のバラ」を思い出す。十九―二十世紀に活動した画家ピロスマニが、広場一面にバラを並べ女優へ求愛した話が元になっている。バラを愛する国民なのだろう。
昨年秋、モスクワを訪ねピロスマニの名を冠したグルジア料理店に行った。グルジアワインを注文したが飲むことはできなかった。ロシアが輸入禁止にしていたためだ。両国の対立の厳しさを知り驚いた。
それにしても、かつての民主化運動の旗手が野党から批判を受けるとは。旧ソ連諸国の民主主義の未成熟さを感じる。バラ革命当時の気持ちを思い出してほしい。