My Fairy King

   

 

 妖精国から帰ってきて数日後、僕と兄さんが庭の木陰で本を読んでいた時だ。その時兄さんは僕に、シェイクスピアを読んでくれていた。

「山を越え谷を越え 繁み いばらを かいくぐり流れに浮かび 火にも舞い 心のままに 駆け巡る………」

 僕は目を閉じ、妖精達の姿を思い浮かべた。それから女王タイテニアと、妖精王オベロンの美しく威厳に満ちた姿を。

想像の中のオベロンが振り向くと、それは僕の妖精王の顔だった。彼は僕の方へ手を差しのべて言った。

<帰っておいで、……私の愛し子よ。抱き締めさせておくれ、その頬に口接けさせておくれ……お前がいないと、私はひどく寂しいのだ>

 僕は慌てて目を開けた。

「月より早いこの翼 妖精女王様の お言いつけ 緑の芝の濃い輪形 一夜の舞の そのあとを 露で濡らしに出かけます………」

 兄さんのシェイクスピアを読む声が戻ってきた。妖精王の声は、もう聞こえない。鮮烈な幻だった。

 

 

  cinq purte sept

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