My Fairy King
5
妖精王は僕らが僕らの世界に帰る事を禁止したわけではなかった。
僕らは妖精の小道を通って、ひょっこり家に帰った。妖精国では数日が過ぎていたから、さぞ母さんと父さんが心配しているだろう。
僕らが家の方へ歩いていくと、庭で母さんが洗濯物を取り込んでいた。
僕らは急になつかしい様な気分になって、(実際僕らは数日を知らない場所で過ごしたんだから)走っていって、
笑いながら同時に母さんのウエストに抱きついた。
「ただいま!」
「お帰りなさい、……まぁまぁ、二人ともどうしたの? やけに甘えんぼさんね。お魚とれた?」
母さんは笑いながら、僕らを抱き締めてくれた。僕らは顔を見合わせた。
「僕たちね、……」
妖精王の事を話そうとしたら、弟に口を塞がれてにらまれた。
説明する必要は無かった。僕らの世界ではほんの数時間しか過ぎていなかったのだ。
そしてその数時間は確かに、僕と弟の間から何かを奪ったのだった。
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