My Fairy King

   

 

 

 僕はふわふわと漂っていた。柔らかな暗闇の毛布に、包まれて。

<お兄ちゃん>

 弟の声がした。

<起きて。僕たち、フェアリー・ランドにいるんだよ>

 弟は、とても嬉しそうだった。フェアリー・ランドはあったんだ。僕は嬉しいような悔しいような、不思議な気持で瞼を持ち上げた。

 弟が見えた。赤い花が沢山。それから、──────とても美しい人。おそらくは男性だろう、中性的で高貴な顔立ちの、白鳥の翼を背負う人。

 僕は起き上がった。

「お兄ちゃん! 僕たち、フェアリー・ランドにいるんだよ!」

 弟は嬉しそうに飛び付いてきた。僕は驚いて、言葉が返せ無かった。

「ようこそ、この世界へ」

 妖精王。美しく力強く、不思議なこの男は妖精王だ。僕はそう感じた。

「小川へ連れていってやろう。おいで、二人とも」

「やったぁ!」

 弟は妖精王の右腕に飛び付いた。楽しそうに笑う弟を見ながら、僕は何かが胸につかえた。それを無理矢理忘れて、僕も二人を追い掛けて走り出した。

 

 

  trois purte cinq

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