「中はくさいぞ! あやしいぞ!」
「中心の小さな葉」の甘さの秘密を探るため、白菜の一大産地である茨城県を訪ねました。白菜作り50年の名人によると、「真ん中で成長するから、おいしさがあつまる」とのこと。
そこで、収穫直前の白菜と、それより1週間若い白菜を切って比べたところ、収穫直前のものは葉がギッシリ詰まっているのに、1週間若いほうは中がスカスカでした。1週間でなぜこれだけ差が出るのでしょうか?
白菜の成長過程
白菜の成長過程を苗の時期から観察すると、根元の中心部分から葉が増えているのがわかります。
そして成長著しいのは収穫間際の1週間で、白菜の中心部では1日2枚もの葉が伸びます。成長が盛んな中心部には、うま味成分のグルタミン酸も集まっていて、白い肉厚の部分では3ミリグラムであるのに対し、中心に近い部分では41ミリグラムにもなります(いずれも100グラムあたり)。
白菜の成長は、次のようになっています。
- 外側の葉が伸びる。
- ある時、上に伸びた葉が丸く「結球(けっきゅう)」する。すると中が暗くなっていく。
- 内部で盛んに葉が増えていく。この時、成長に欠かせない糖やグルタミン酸が中心部にたくさん集まる。
葉は場所によって働きが違う
- 周りに広がる葉: 栄養の「製造工場」
- 小さい葉を囲む部分: 栄養の「貯蔵庫」
- 中心の小さい葉: 「成長ポイント」
「製造工場」で作られた栄養は、「成長ポイント」に送られます。余った糖やグルタミン酸は「貯蔵庫」でたくわえられます。このとき糖は「デンプン」に、グルタミン酸は「タンパク質」の形で保存されます。
白菜の真ん中は、糖やグルタミン酸がたっぷり含まれています。糖は甘み、グルタミン酸はうま味として味覚に伝わります。一方、結球部分の「貯蔵庫」には、デンプンやタンパク質が多く含まれていますが、どちらも人間の味覚では感じにくいのです。このため、真ん中が甘くて、周りは味が薄いように感じられるのです。
真ん中の成長パワー
白菜を半分にカットして冷暗所で1週間放置しておくと、中心部の葉がだんだん立ち上がってきます。これは中心部が成長している証拠です。さらに放置しておくと花が咲いてしまいます。
白菜の小さい葉を取ってしまうと、グルタミン酸は次のように変化しました。(冷蔵庫で一週間、ラップに包んで保存)
まとめ1:そもそも食べ方に間違いが!? → 常識逆転!内から外へ
外の大きい葉から使うと、おいしさたっぷりの中心部を残してしまうことになります。また中心部を残したまま保存すると、白菜に蓄えられた栄養が成長に使われてしまい、周りもおいしくなくなってしまいます。そこで内側のおいしい部分をまず食べ、そこから外に向かって食べ進んでいくのがおすすめです。
まとめ2:なんと!冷蔵庫でうま味UP!! → 中心抜いて うま味27%UP!
白菜が残ってしまいそうな時は、小さい葉を先に取って料理に使ってしまうのがおすすめです(サラダや漬物、みそ汁やスープの具など)。中心の小さい葉を取ってから冷蔵庫で保存すると、1週間でうま味成分・グルタミン酸が27%もアップします!
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