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この情報の最も新しい更新日は11月30日(火)です。    

 イラク派遣自衛隊の延長問題 延長すれば対迫撃砲レーダーを配備 (NHK 朝のニュース 11月30日)

[概要]来月14日に派遣期限を迎えうるイラクの自衛隊に対して、政府は1年間の派遣延長する意志を固めた模様。しかしサマワの治安を担当するオランダ軍が撤退することから、サマワの陸自・宿営地に対迫撃砲レーダーを新たに配備することにした。対迫撃砲レーダーは飛来する砲弾の弾道をレーダーで探知して、発射点や着弾地を割り出すことができるものである。

[コメント]この報道には悪意な情報操作が行われている。昨日もどこかの新聞で、「対迫レーダーで着弾地を知ることが出来るから、隊員の避難が容易になる」という記事が掲載されていた。さらに今朝のNHKニュースが、同じようなニアンス(上記)の報道をした。自衛隊員なら誰でも知っていることだが、対迫レーダーは弾道から発射点を割り出し、すばやく攻撃(お返し)することで敵の迫撃砲陣地を破壊するための兵器である。対迫レーダーで着弾地を予測し、避難するための兵器ではない。そんな時間的な余裕はないし、着弾時に待避壕から避難すること自体が危険になる。

 迫撃砲の砲弾は高い弾道を描いて落下してくる。そのため敵は建物の陰やくぼ地などを選んで迫撃砲を発射する。すると目視で発射位置を見つけることは難しくなる。そこで飛翔中の砲弾の弾道を対迫レーダーで捉え、発射位置を割り出すのである。そして次の段階で、この発射位置に砲弾を撃ち込むのである。もしサマワに対迫レーダーを配備し、敵の発射地点が判明しても、そこを攻撃できる兵器を自衛隊は配備していない。配備している携帯式の無反動砲やロケット砲は、自爆テロを仕掛けてくる自動車を阻止するためで、数キロも離れて発射される迫撃砲を攻撃することはできない。さらにロケット弾など低い弾道で飛来する兵器には無力である。これでは気休めにもならない。

 先日のラジコン偵察ヘリ(赤外線探知装置搭載)とか、今回の対迫レーダーのように、サマワではあまり意味のない対応に振り回されている。もう戦略(政策)がデタラメなので、現地の戦術(努力)では対応できないのである。

 自衛隊イラク派遣 来年12月終了 検討 (読売 11月29日 朝刊) 

[概要]大野防衛庁長官は28日のNHKの報道番組に出演し、「(来年12月にできる予定の)新しいイラク政府との話し合いで、自衛隊のイラク派遣はもういいんじゃないかということもあるだろう。来年12月に多国籍軍の任務が終了することになっている。一つの区切りではないか」と述べた。これは政府が来年12月をもって自衛隊のサマワ派遣を終了する方向で検討に入ったことを受けている。政府は来月12月14日に期限が切れるイラク派遣計画を、1年間延長する方針を決めているが、野党から撤退要求が強めていることから、活動期間の見通しを示すことで配慮したと思われる。今年6月に採択された国連安保理事会決議では、2005年末にイラク本格政権樹立に伴い、多国籍軍の任務を終了するとされている。

[コメント]政府がギリギリまで派遣延長を閣議決定しないのは、12月14日までにサマワの自衛隊員から死傷者が出るか出ないか様子を見ているのだ。もし閣議決定する10日までに死傷者が出れば、自衛隊のサマワ撤退は避けられない。しかし死傷者が出なければ、サマワから自衛隊を撤退させることができないからだ。ここで問題のは、もし15日にサマワで死傷者が出れば、自衛隊は来年12月まで撤退が出来ないということになる。もし派遣期間中に撤退すれば、延長を決めた小泉内閣の責任が問われ、首相の辞職と内閣解散は避けられない。そんな政治の駆け引きで、自衛隊員の命が軽視されていることに腹が立つ。

 昨日、早稲田大で奥参事官、井ノ上書記官の追悼集会が行われた。私はいつも言っているが、外交官二人を殺したのは小泉首相や岡本元首相補佐官たちと思っている。彼らがイラクが安全と言い続けたために、二人は武装護衛を付けられなかったのである。政府が安全というイラクで、日本の外交官が武装護衛を付けることはできない。そのように責任を取るべき人間が、二人の死を美化するような集会を行うことが信じられない。

 もし自衛官がサマワで死ねば、小泉首相は「危険を顧みず、イラクの復興支援のために犠牲になった」と自衛官の死を美化する言葉を贈るのだろうか。自衛官は「政治的活動に関与せず、危険をかえりみないで任務を遂行する」と宣誓している。これはたとえ政治が悪くとも、自衛官は黙って犠牲になれという意味では決してない。

 本日の毎日新聞朝刊に、自衛隊イラク派遣の延長問題で3人の方が意見を寄せていた。私は加藤紘一氏(自民党元幹事長)の「安全を見極めるまで待機」という意見に共感した。加藤氏のきちんと筋を通す姿勢にも共感する。

 「防衛計画の大綱」案概要 新たに中国の脅威追加 政府、与党のPTに提示 (産経 11月26日 朝刊)

[概要]政府は与党安全保障プロジェクトチーム(PT)の会合で、来月に策定を目指す新たな「防衛計画の大綱」案の概要を示した。これまで明らかになっていた骨子に加え、先の中国海軍の原子力潜水艦による領海侵犯を受け、「中国軍の近代化や海洋における活動範囲拡大に注目すべき」と、新たに中国軍の「脅威」を盛り込んだ。また中東から東アジアに至る「不安定の弧」は、我が国の安定にとって極めて重要とし、関係国との協力を推進して、この地域の安定に努めるという表現で、米軍のトランス・フォーメーション(軍の変革・再編)に日米の役割分担の重要性を強調した。

[コメント]中国軍の脅威論に触れれば、台湾問題や朝鮮半島の軍事問題に日本が足を踏み出すことになる。今までは中国には必要以上に気を使っていたのに、防衛庁にこれから本気で中国と軍事対決をする度胸があるとは思えない。まあ、他に脅威はないし、財務省から自衛隊の人員削減の圧力が強いので、「中国は怖いですからね」とぼやいているだけのような気がする。中国が自国の防衛外線として主張している、伊豆七島から小笠原、それにグアムに至る1000海里(中国沿岸から)以西の海域で、中国軍と自衛隊は覇を競う気なのか、また、その覚悟が防衛庁にあるのか。できもしない、やる覚悟もないのに、米軍の威を借りて中国の脅威を煽ってはいないか。「中国軍の・・・・・注目すべき」とは当たり前である。そして何をするのかを明らかにするのが「防衛大綱の意義」である。

 防衛庁はもっと他流試合(議論)をして欲しい。いつもいい加減な看板を掲げるだけで、中身が無いのは虚しすぎるし、極めて危険でもある。この際、徹底的に中国の軍事的な脅威と、その対応を議論しないか。小泉首相のような無責任体制で、いい加減な看板を掲げることはやめて欲しい。

 私は中国海軍の潜水艦が日本の領海侵犯したとき、これを放っておくと第二のテポドン騒動になると考え、中国の潜水艦は恐れずに至らずという見解を展開した。幸いにも、今回はそのような世論操作は行われなかった。しかしその種(たね)が残ったのが、この表現であると思う。だからどうするのか。「・・・・注目すべき」は、「・・・・・見ているだけ」と違うことを説明して欲しい。

 金総書記の義弟 北朝鮮「ナンバー2」失脚 韓国情報院が報告 (毎日 11月26日 朝刊) 

[概要]韓国の国家情報院長は国会情報委員会で、金正日総書記の義弟で、朝鮮労働党の組織指導部第1副部長の張 成沢(チョン ソンテク)が失脚したと報告した。張副部長は金総書記の妹婿で、北朝鮮では実質的にNO2と目されていた。昨年7月から公式に姿を見せず、自宅軟禁説や重病説が流れていた。国家情報院長によると張副部長は国内に派閥を作るなどの行為が問題にされ、7,8名の朝鮮人民軍の将官級とともに地位をはく奪されたという。

[コメント]以前、このホームページでも取り上げたが、張副部長が軟禁された可能性があると書いたことがある。それがついに失脚したという結論に至った。これは昨日(25日付け)の朝鮮日報(韓国紙)が報じたものだが、それを受けて昨日の読売・夕刊では、「粛正された」と報じている。そこで、思わず辞書で「粛正」を調べたら、粛正には処刑する以外にも、地位をはく奪されるという意味があるとわかった。北朝鮮では権力内のものが再教育施設に送られ、数年後に金正日から罪を許されて、もとの地位に戻ることが多々ある。そうして一層の忠誠心を高めるのである。しかし張副部長は金正日の妹で妻の金 敬姫(キム キョンヒ)とは別居状態で、離婚同様の状態であることがわかっていた。さらに金正日の後継者問題で失脚となると、許されて権力層への復活はない。

 実は9月に起きた竜川駅での大爆発事故は、軍に影響力のある張副部長グループ(軍人)の起こした金正日・暗殺未遂計画だったという情報もある。今の段階では暗殺計画の確証はないが、ともあれ、これで北朝鮮人民軍は一枚岩でないことが公になった。確実に北朝鮮は崩壊に向かって進み出している。

 ワシントンDCでのオフ会を終え、昨日、無事、帰国しました。(11月25日)   今回は前半3日間をニューヨークに滞在し、後半3日間をワシントンDCに滞在して、前後2日間を移動(航空機など)のために使い、それで合計8日間の訪米旅行になりました。訪米の目的は、ワシントンDCで開かれる月1回の「座論」で講演するためでした。その座論には約40人が参加し、私の講演の後に参加者から熱心な質問がありました。その熱い質疑応答には、私自身が存分に楽しむことができました。

 講演の翌日と翌々日にはワシントン市内をまわり、いろいろなところを見てまわりました。特に印象が深かったのは、スミソニアン博物館(航空・宇宙)で旧ソ連軍のSSー20中距離核弾道ミサイルと、米軍のパーシング2中距離核弾道ミサイルの実物が、仲良く並んで展示されていたことです。かつてSSー20には原稿料でかなり稼がせて頂きましたが、実物を見るのは今回が初めてです。そのためか、この実物は思ったより小さく感じました。さらに横のパーシング2がSS−20より小さいとは驚きででした。今の若い人には当時の米ソが、この2基の中距離弾道ミサイルで、国家や民族の存亡の危機を感じていたとは想像できないでしょう。

 それからアーリントン国立墓地では、イラクで戦死した兵士の墓を見てきました。ナンバー60と記された区画には、まだ埋葬されて数時間しかたっておらず、地面に盛られた土(土葬)の上に、多くの花が飾られていました。そのすぐ横には、深さが1,5メートルほどの新しく掘られた穴が、イラクで戦死した埋葬者の到着を待っていました。さらにその横には小さな立て札が10個ほど立てられ、埋葬される予定者の番号札が立っていました。その背後の墓群には、アフガン戦争で戦死した兵士たちの名前が刻まれていました。これが戦争をする国家という現実なのですね。

 ニューヨークでは初めて「自由の女神」を見物しました。その際、初めて火薬物を検知できるセキュリテー・チェックを体験しました。空港などにある金属探知器のように、検知器に立つと体に向かって数カ所からエアーが吹き付けられます。その時に周囲の空気を採取し、火薬の分子が含まれていないか検知するものです。

 もし鉱山などで爆破を職業にしている人は警報が鳴るかもしれませんね。

 そんなこんなで、本日の新聞(朝刊)を見ると、自衛隊関連の記事が多く出ていますが、8日間ほど日本の新聞を読んでいないので、いつもの勘がピンピンと働きません。そこで今日はWhat Newの更新を休みます。

 本日の「メールにお返事」のコーナーに、ワシントンDCの座論の皆さんのメールが届いています。関心のある方はそちらも覗いてください。

 更新休止のお知らせ!(11月16日)    ワシントンでのオフ会参加のため、11月16日(火)〜24日(水)の間、ホームページの更新を休止します。アメリカにはノートパソコンを持参しますが、ネットに接続(設定)する自信がありません。接続できなければメールを読むこともできません。その場合、9日間ほど音信が不通になりますが、よろしくお願いします。

 それでは行ってきます。アメリカで友人をいっぱい作くるつもりです。

 

 イラク 北部で蜂起続発 モスルとバイジ 米軍と暫定政府 増派 

 ファルージャ 激しい破壊 怒り拡散、選挙に暗雲 スンニ派地域 緊迫  (朝日 11月15日 朝刊) 

[概要]米軍のファルージャ総攻撃をきっかけに、イラク北部の主要都市、モスルで14日、武装勢力が警察署2カ所を襲い、警官6名を殺し、武器を強奪し、行政庁舎の一部を占領した。米軍はファルージャから500人の部隊をモスルに派遣し、武装勢力に空爆を行っている。また石油製造施設があるバイジでは、米軍のヘリや戦車が武装勢力数人を殺害したと米軍が発表した。

 一方のファルージャ市街戦では、米兵31人、イラク兵6人、武装勢力1200人が戦死している。イラク赤新社(赤十字)は医師と食糧をファルージャに派遣したが、米軍は危険すぎると市街地での活動を拒否した。バグダッドの赤新社本部に入った連絡では、市街の家屋はほとんどが破壊され、路上のあちこちに遺体が放置されている。ファルージャ市内は電気や水が止まり、救助活動ができない状態が続いている。

 ファルージャでの戦闘はイラク各地に広がり、「スンニ派宗教者委員会」は来年1月の選挙をボイコットするように呼びかけた。米軍は1月の選挙のために、武装勢力を壊滅する目的でファルージャ総攻撃に出たが、激しい戦闘はスンニ派の怒りをかったようだ。

[コメント]本当の問題はこれからである。戦闘が終結すれば、ファルージャ市内の映像がTVで報じられ、猛烈な街の破壊に世界の人が驚くはずだ。ファルージャ市民の死亡も桁違いに多く、犠牲になった子供たちの残忍な姿に心を痛めるだろう。そこまでして選挙を行う必要があるのかという疑問を、多くのイラク人が持つと思う。また占領統治を続ける米軍に対するイラク国民の抵抗も強まるだろう。もうイラク民衆を軍事力で押さえることはできなくなった。

 これで米軍は市街戦でRMAは無理だと学んだと思う。例えセンサーが敵を捕らえても、そこを爆撃や砲撃で攻撃すれば、大きな破壊力で市民の犠牲が出るからである。米兵が市内の地下通路に爆弾を投下したと話していたが、その爆弾は地下通路だけではなく、付近の建物や市民も吹き飛ばしたははずである。地下通路には非致死性のガスを使うといった発想はなさそうだ。やはり米軍に市街戦は無理とわかった。米軍はファルージャで勝っても、イラクの統治(戦略)に失敗した。

 しかしこれで変わるのはイラクだけではない。アメリカ国内もイラク反戦運動が劇的に高まっていくと思う。大統領選挙の結果に失望した人たちが、ファルージャの光景に胸を痛め、これからイラク反戦運動に動き出すからだ。今回のファルージャでの戦闘が、アメリカのイラク政策を変化させる節目になる。そうあって欲しいと希望する。日本人もここれから報じられるファルージャの光景に眼を背けないで欲しい。確かベトナム戦争の時も、大きな市街戦闘を繰り返すたびに、アメリカで反戦運動が高まっていった記憶がある。

 原潜領海侵犯 政府、中国に講義検討 きょう関係閣僚が協議 (毎日 11月12日 朝刊)

[概要]政府は11日、中国海軍の攻撃型原潜と思われる潜水艦が日本領海を侵犯した事件で、中国側に抗議する方向で検討に入った。小泉首相も、「潜水艦の国籍が判明すればしかるべき対応をする」と語っている。しかし原潜は浮上せず、尖閣列島の北方約160キロを、時速10ノット以下で蛇行しながら西に向かっている。

[コメント]本日の新聞朝刊は「アラファト議長 死亡」の特集記事でうめつくされている。アラファト無きパレスチナ和平の行方が大いに気になる。しかしあえて、今日のこの欄は原潜の問題を取り上げた。この記事が深刻な事態が起きる前触れを報じているからだ。というのはこの原潜の動きである。これだけ海自のP3Cや護衛艦が厳重に監視しているのに、速度が10ノット以下ではあまりにも遅すぎる。また蛇行を繰り返しているというのも明らかに異常な動きである。

 このホームページを読んでくださっている読者の方ならご存じと思うが、私はこの原潜は事故か故障を起こしていると分析している。潜水艦は潜航と浮上を繰り返すために、高い水圧を受けて金属疲労が起こりやすい。さらに中国の潜水艦は技術的に問題が多いことが指摘されている。もし潜水中に事故や故障で、浸水すれば浮力を失って沈没する可能性が高い。また火災が発生すれば、艦内の酸素が奪われ、乗員が窒息死可能性も高いのだ。また海水が艦内に浸水すれば、電気系統がショートして電気が止まる。するとバランスを失った艦は沈没するのだ。そのような深刻な事故か故障が起きていることをうかがわせる潜水艦の動きなのである。

 もし東シナ海に原潜が沈没し、爆発すれば、海流に乗って放射能を帯びた海水が日本に向かって流れてくる。爆発しなくとも、海底に沈んだ原潜を回収することは至難の業である。いやそれ以上に、艦内に乗り込んでいる乗員の命が奪われることになる。ロシアのクルスク原潜沈没事故を忘れたのか。

 この原潜が日本領海を侵犯したのは事実であるが、もしそのような事故や故障が発生していたらどうするのか。この原潜には日本領海を避けて迂回する余裕がなかったのである。原潜はあまりにも機密が多く、日本側に救助を求めることはできないのだ。今、私はこの原潜が無事に中国の母港に帰港することを願っている。そして日本政府は海自の潜水艦救難艦を至急、この海域に差し向けることを提案する。瀕死の重傷を予測させ、蛇行を繰り返すこの事態を見て、抗議がどうのこうのと考える時期ではない。地球規模の緊急事態に備えるのである。

 どうして政府やマスコミは今回の異常事態に気がつかないのか。すでに中国は潜水艦救難艦や潜水艦曳航船を出動させた。ここで日本政府が中国政府に関係なく、救助のために海自の潜水艦救難艦を派遣しても文句は言われない。

 このままでは日本はサムライの心を知らない冷血漢になってしまう。急げ、無駄であってもいいから急げ。

 『海上警備行動』対応に課題 発令時すでに領海外 手順簡略化生かされず (産経 11月11日 朝刊)

[概要]海上自衛隊は8日から種子島周辺の公海で、中国の潜水艦救難艦を発見して監視活動を行っていた。周囲に中国の潜水艦が潜伏していると警戒したからだ。そして海自のP3Cが捕捉したのは10日午前4時半頃すぎ。潜水艦が領海に入ったのは午前5時50分ころ。防衛庁から連絡を受け、官邸が対策室を設置したのは午前6時50分。細田官房長官には7時過ぎに一報を入れた。しかし海上警備行動の承認権を持つ小泉首相や大野防衛庁長官に連絡が入ったのは8時を越えていた。官邸は8時10分に官邸対策室を設置した。そして8時45分に海上警備行動が発令された。

 政府は99年の不審船事件の領海侵犯事件を受け、海上警備行動の手順を簡素化したが、今回はそれが生かされたとは言えない。P3Cは潜水艦のスクリュー音から中国の潜水艦と特定できるが、政府は中国への配慮から「国籍が特定できない」と対応が遅れ、領土保全に対する意識の低さを浮き彫りにした。それに対し、細田官房長官は、「久しぶりにこういうことが起きたせいか、(与党への連絡が)マニュアル通りに行われなかった」と政府対応のまずさを認めた。

[コメント]潜水艦戦は一種の情報戦でもある。いつどこで、どのように潜水艦を探知したか、その方法や経緯は公開されないと考える必要がある。この記事では最初に潜水艦を発見したのは10日の午前4時半すぎというが、私としては????である。そんなことはないだろう。

 私の経験でいうと、事故か故障を起こした中国の原潜が、海面に浮上して救難通信を行ったの時が、自衛隊がこの潜水艦の存在を探知した最初と思う。自衛隊の通信傍受部隊は、中国海軍の艦艇が長距離通信をおこなう周波数は知っている。その救難通信が発信された海域に、最初のP3Cが那覇から捜索に向かった。しばらくして(数日後)、中国の潜水艦救難艦と潜水艦曳航船がその付近に現れた。しかし救難作業を開始する動きが見られない。

 だからP3Cは徹底して、沖縄近海の全域に捜索を拡大して捜索を行った。その場合は海図上に、最初の救難通信が発信された海域と、中国の潜水艦母港のある東海艦隊の基地(港)が1本の直線で結ばれる。故障した潜水艦は最短距離で母港に向かうからだ。安全のために迂回する余裕などない。その直線付近がP3Cで重点的に捜索を行う海域である。そして間もなく潜航中の潜水艦を発見した。しかし疑惑の潜水艦は充電のために浮上(ディーゼル機関を作動)して来ない。それでP3Cが潜水艦の音紋を取ると、中国の攻撃型原潜「漢(ハン)」級と一致した。その潜水艦はほぼ直線の航跡を描いて、やがて日本の領海を侵犯したというのが軍事常識的な話しだ。

 以上はあくまで想像の話しなのだが、今朝の新聞を見ると自衛隊の通信傍受部隊のことにまったく触れていない。中国の潜水艦の救難通信を傍受し、その海域を割り出した電波傍受部隊の存在と活躍である。

 まあ今回は、秘密に包まれた日本と中国の潜水艦競争の一端を知ることができた。それにしても今朝の新聞では、中国の攻撃型原潜が海洋の資源調査に投入されているとか、台湾近海で示威行為をするために行った意図的な行動という記事が出ていた。そんなバカなことはないでしょう。

 北朝鮮の不審船は活動を終了した。これからはグアムを中心に、西太平洋が日本の対潜水艦部隊が活動する海域である。その海自の相手役は、中国の潜水艦部隊である。決して強くはないが、暇つぶしぐらいにはなる。

※本日の朝刊のラジオ欄を見て驚いた。ニッポン放送の10時から「軍事ジャーナリスト 神浦元彰 号泣?」と書いてあったからだ。これは生放送の情報新番組である。 http://www.allnightnippon.com/hot/

 だから私はまだ号泣していない。どうやら番組制作サイドでは、スポーツ選手など感動的なストリーを作り、私がそれを聞いて号泣するような企画を考えているようだ。今までも、泣かないぞ、泣かないぞと、頑張ってみても、泣かせるようなストリーを作ってきた。この番組が今日から始まる。ヒマな方は聞いてください。しかし私は泣かないつもりです。

 中国?潜水艦 石垣島近海の領海を侵犯 海上警備行動を発令 海自哨戒機が確認・追跡 (各紙 11月10日 夕刊) 

[概要]中国海軍の潜水艦らしいものが、10日早朝、石垣島(沖縄県・先島諸島)付近の日本の領海内を潜航しているのを、海上自衛隊のP3C哨戒機が確認した。潜水艦は3時間後に領海を出たが、P3Cが引き続き追跡している。小泉首相は8時45分に防衛庁長官に海上警備行動を発令した。これを受けて大野防衛庁長官は自衛艦隊司令官に海上警備活動を命じた。なお、今月5日頃よりP3Cが種子島の南東340キロの海上を、中国海軍の潜水艦救難艦と潜水艦曳航船が行動しているのを発見している。日本の中国大使館はこの件で、今は連絡が取れないと回答した。

[コメント]中国の攻撃型原潜(SSN)は「漢 級(HAN Class)」である。ミリタリーバランス(英誌)によれば、中国海軍は5隻の漢クラスの攻撃型原子力潜水艦を保有している。さて今回の騒ぎだが、これは明らかに中国原潜が故障か事故が起きたことを示している。潜水艦は航空機と同じように、もし事故や故障になれば、近くの飛行場や港に緊急着陸か帰港する。もし海水が艦内に浸水して浮力が失われたり、電気系統がやられると自沈してしまうからである。今回は事故か故障が起きて緊急救難通信を行って潜水艦救難艦を呼んだ。しかし何とか自力で潜水航行できるように回復したので、自力潜航で帰港を目指していたのだ。そこで救難に向かった2隻の救難艦は、海自のP3Cの注意を引きつけるために、わざと離れた海域を航行している。しかし海自のP3Cはそれに騙されることなく、日本の領海を侵犯した潜水艦を現行犯でキャッチした。これはP3Cの一本勝ちである。それ以上の意味も、それ以下の意味もない。東シナ海で行っている海洋地下資源の調査や、示威行動とはまったく関係ない。あえていえば、今年になって中国人民解放軍の機関誌「解放軍報」で発表された、1000海里の防衛外線のために行っている軍事活動である。1000海里防衛外線とは、中国海軍はアメリカ海軍の攻撃を、中国沿海から1000海里の距離で行われる空母艦載機からの攻撃、水上艦艇や潜水艦から行うトマホーク(巡航ミサイル)からの攻撃と想定し、1000海里の線に防衛ラインを設定するというものである。しかし、そのラインを守れる中国の軍事力は潜水艦しかない。それで中国海軍の潜水艦がグアム付近など西太平洋で活発に動きだしたというわけだ。グアムはこの1000海里の中に含まれる。

 このことを考えて、いろいろなニュースを見て欲しい。日本で軍事専門家といわれる人の水準がよく理解できるはずだ。今日の夕方のニュースでは、あまりにもひどい解説に絶句した。

 とりあえず、中国海軍の攻撃型原潜を相手に1本取った海自のP3C部隊に”おめでとう”と言いたい。しかしHAN CLACCの5番艦でも1990年の就航である。でもHANの1番艦なら74年の就航だ。相手が弱すぎたという見方もある。

 ファルージャ総攻撃 米・イラク軍、中心部に 道路、鉄道を遮断 (毎日 11月10日 朝刊)

[概要]ファルージャ攻撃を行っている駐留米軍とイラク政府軍部隊は、同市北西部のジョラン地区から進攻し、すでに市中心部に進出して足場を固めた模様だ。しかし米軍は南部での掃討作戦に手を付けておらず、制圧作戦は当面続くと見られる。イラク国内のTVなどは、イラク兵士が拘束した地元住民に目隠しをする様子や、病院に最初に飛び込む姿を放映している。イラク暫定政府はこの作戦を、「イラク政府軍による戦闘」を国民に強くイメージ付けようと躍起になっている。それは「米軍主導の戦闘」が強調されれば、国内のイスラム教徒から激しい批判が上がる可能性があるからだ。実態は米軍1万〜1万五千人に比べ、イラク政府軍はわずか二千人程度という。イラク暫定政府のアラウィ首相は、「イラク政府軍対テロリスト」のイメージを作り出すことで、国民の支持をつなぎ止めたい願いがある。しかしファルージャで子供や女性が多く死ねば、逆に暫定政府に国民の不満が高まることになる。

[コメント]米軍にとって市街地戦闘が難しいのは、非戦闘員(武装していない市民)と戦闘員の区別がつかないことである。そのため本格戦闘になる前に、市民に退避の呼びかけを行って分離を行うことはすでに述べた。(人道的にもそれが必要なのだ)。しかし非戦闘員(市民)が自主的に「人間の楯」を志願したり、武装勢力が市民の退避を許さないと「分離」は出来ない。そうなれば市民の被害は桁違いに大きなものになってしまう。不幸にも犠牲になった市民は、米軍の爆撃や砲撃で死亡したことは間違いない。だから米軍はベトナム戦争で懲りて、それからは市街戦闘を避けてきたのである。

 さらに市街戦闘は都市機能を徹底的に破壊する以外に、米軍の犠牲を少なくすることはできない。地の利は地元勢力にあるからだ。米軍は敵兵が潜みそうな場所は、事前に徹底的に破壊して前進することになる。また予め破壊することで、建物や路地に仕掛けられた爆弾を排除するためでもある。その爆撃や砲撃によって、さらに非戦闘員(市民)の犠牲が増えることになる。

 米軍は市の中心部まで進撃し、重要拠点を押さえたというが、今回の市街戦の場合はあまり意味がない。たとえ市役所の建物を占領しても、武装勢力は少グループで戦闘を行っている。統一した指揮系統が存在していない。旧シラク軍(フセイン軍)のような正規軍ならば、米軍はバグダッド中心部にあった国防省などの中枢指揮所を押さえれば、末端のイラク軍までを麻痺(マヒ)させることができた。しかしファルージャの市役所を押さえても、武装勢力の指揮・通信機能を奪ったことにはならない。これは正規軍的な発想で、象徴的な意味しかない。だから武装勢力は市役所を奪い返しに来ない。

 そこで最も問題になるのは、ファルージャ市内から退避しなかった市民の犠牲である。今年4月の戦闘では、ファルージャ市民の犠牲があまりに多いのでイラク国民の反発が高まった。そのために米軍は停戦し、撤退した経緯がある。今回のファルージャ攻撃では、病院など市民の遺体や負傷者が運び込まれる場所を事前に空爆(砲撃)し、そのような映像が報道されないようにした。

 その裏返しで、イラク政府軍がファルージャの治安を回復させるために、テロリストと戦っているというイメージを作り出そうとしている。

 すでにこの戦いは武装勢力側が勝ったようである。その原因は米軍の「分離の失敗」である。米軍は作戦開始までにファルージャ市民30万人のうち、8〜9割の市民が避難したと発表した。それなら1割の市民3万人が市内に留まったことになる。しかし別の情報では5〜6万人の市民が市内に留まったというのもある。この数字は不気味である。分離作戦は多くの市民が武装勢力を支持せず、なんとしても生存したいという気持ちが強い時に有効である。多くの市民が武装勢力を支持し、戦って死んでも抵抗したいとういう殉教の気持ちが強いと無効なのだ。その殉教の気持ちが高まるラマダン時期に、ファルージャ総攻撃を選んだことに読みの甘さがなかったか。

 しかし、今回のファルージャの戦闘は米軍が短期間で勝利(制圧)することは間違いない。だがイラク人犠牲者の多さと、徹底的に破壊された市街地は、イラクで反米抵抗の聖地(シンボル)になるだろう。だから米軍の負けなのである。

 日本政府はサマワの自衛隊撤退に、本格準備に着手すべき時期である。

 ファルージャ総攻撃 米地上軍 北東部から進攻 イラク軍、最大の試練 米と共同作戦 失敗なら内戦の危機 (読売 11月9日 朝刊)

[概要]イラク駐留米軍は8日夕(日本時間9日未明)から、ファルージャ北東部で大規模な地上攻撃を開始した。AP通信によると米陸軍、米海兵隊など計四千人以上と、新生イラク軍がこの総攻撃に参加していると報じた。これはベトナム戦争以来では過去最大の市街戦となる。今回の作戦に参加しているイラク軍は、陸軍五個大隊、特殊作戦部隊、警察コマンド部大隊などで編成された総勢七千人前後とみられる。最大の任務は制圧拠点の確保と治安維持である。これに対し武装勢力側は入り組んだ路地や建物に爆薬を仕掛け、多数のモスクを地下道で結んで塹壕化するなど徹底抗戦の構えを見せている。また武装勢力は一部の市民を「人間の楯」にしたという情報もある。今回の制圧作戦が長引き、多数の市民に被害者が出れば、暫定政府への反発が強まる恐れがある。今月中旬からはラマダン明けの大祭も始まる。その意味での米・イラク軍は短期制圧が至上課題となる。

[コメント]この記事はカイロから送られたものだが、各紙とも、今回はカイロ(エジプト)とダマスカス(シリア)からの記事が多いようだ。昨日、今回のファルージャ戦闘で、戦うイラク兵(イラク暫定政府側)の映像が公開された。たぶん病院制圧(無抵抗)をしたときの映像と思うが、イラク人兵士がAK74自動小銃を構え、院内を捜索する姿に驚いた。しかしこれは本当にイラク兵かと疑った。戦闘中の取材映像にもかかわらず、兵士が平気で顔を見せていたからだ。もしイラク国内のTVニュースなどで顔を見られれば、イラクに住む兵士の家族が襲われる危険があるが、そのような不安を感じている様子はなかった。アメリカにはフセイン政権時代にイラクから逃れ、亡命生活を送っているイラク人が多く住んでいる。そのような在米イラク人が兵士として集められ、特殊訓練を受けていたのではないか。特に今回の作戦に参加したイラク人特殊作戦部隊とは、そのような在米イラク人を集めた部隊ではないかと思った。指揮官はアメリカ国籍を持つイラク出身のイラク人(アメリカ人)である可能性が高い。米海兵隊や米特殊部隊の経験を持ち、混乱した状態でも同士討ちすることなく、米軍兵士と難なく意思疎通できる兵士である。彼らならば武装勢力側のヨルダンやサウジ訛りのアラビア語もわかり、外国から反米勢力に応援にきたアルカイダ系兵士を識別できる。

 今の米軍としては新生イラク軍の水準(レベル)を、包囲作戦に動員できる程度として考えてるようだ。裏切り、逃亡、スパイ、報復への恐怖、士気の低さなど、米軍が信頼して戦線の一部を任せるほどは信頼はしていない。米国やイラク暫定政府の狙いは、イラク軍特殊部隊がファルージャ制圧作戦に参戦していることを演出し、この戦いが米軍のイラク占領支配のための戦いではなく、あくまでイラク人の治安回復作戦が目的で、来年一月の総選挙に向けた自治回復の過程としかたったと考えた。

 イラク軍特殊部隊の病院内の捜索を見て、あまりにも戦闘行動が上手すぎ、米兵スタイルそっくりなので驚いたことと、顔を隠していないことに不自然さを感じた。兵士の持ったAK−74自動小銃ばかり見ていては、今回のファルージャ制圧作戦で突然登場したイラク軍特殊部隊の巧妙な仕掛けが見抜けない。

 イラク 非常事態宣言 ファルージャ 米軍  総攻撃準備 反米の牙城 制圧狙う 議会選円滑実施向け ファルージャ内に300人の自爆攻撃志願 車118台に爆薬積む (読売 11月8日 朝刊)  

[概要]イラク暫定政府は北部クルド地区を除く全土に、60日間の「非常事態宣言」を発令した。現在ファルージャには、旧フセイン政権の残党や外国から来たイスラム過激派が五千人前後が立てこもっている。これに対し米軍とイラク軍の2万人がファルージャを包囲している。住民30万人のうち7,8割はすでに避難した。米軍はアルカイダ組織のイラク・リーダーのザルカウィ氏容疑者が、ファルージャに潜伏していると見ている。まもなく米軍のファルージャ掃討作戦が開始される模様。しかしファルージャはイラクの有力部族が多く、スンニ派宗教勢力が強い土地柄で、破壊と流血を伴う軍事作戦は国民各層の反発を呼ぶことは必至である。アミテージ国務副長官は6日バグダッドに入り、イラク暫定政府とファルージャ攻略の協議を行っている。

 7日付の英紙「サンデー・タイムス」は、ファルージャ市内の現地ルポを載せ、市内には約300人の外国人が自爆攻撃に志願したという。また118台の車に爆薬を積み終え、各所に狙撃兵が配備され、対空ミサイルも配備されたと報じている。記者はレバノン出身の女性記者で、市内には路上に黒いケーブルが走っており、爆発物が仕掛けらたと推測している。

[コメント]アミテージ国務副長官が6日にバグダッドに入ったなら、今日明日にも米軍のファルージャ攻撃が始まることになる。すでに市内の武器庫や弾薬庫などといった、人の出入りが多い建物を疑って米軍は爆撃した。これは上空の無人偵察機が送る赤外線情報で、地上で人の動きや出入りを見張っているからだ。もしその場所が避難所や病院であっても、人の出入りが多いということで、米軍が精密爆撃する目標になる。要するに、人の出入りが多いことが”軍事上の要衝”と判断するからだ。ファルージャ周辺では24時間「ブー」という低音が響き渡っているはずだ。これは無人偵察機が飛行する音である。低空、中空、高空と、幾重にも重なって、かなりの数の無人偵察機がファルージャ上空で常時地上の動きを探っている。

 これは米軍の戦闘実験(兵器システムの実験)なのである。市街戦でいかに米軍のハイテク兵器(RMA)が効果を上げるか実験される。米軍が新開発したRMA兵器システムを、ファルージャの市街地とそこに立てこもる五千人の武装勢力に試すのである。

 米軍は素早い機動力でファルージャを包囲した。これがファルージャ作戦の第一段階(包囲)である。さらに市街地を包囲した上で、住民の退去勧告を行い、多くの住民が厳重な監視(身元調査)の元に避難させた。これが作戦の第二段階(分離)。さらに上空から無人偵察機で市街地の赤外線探知を行い、人の出入りが多い建物を爆撃した。これが作戦の第三段階(拠点の攻撃)である。そして全土に60日間の非常事態宣言を行ったのが、作戦の第四段階(逃亡や救援の阻止)である。これで米軍が市街地に突入する準備は完了した。

 ファルージャに突入した米軍にとって、地上で動くものはすべて攻撃し破壊する。上空や地上から赤外線探査で体温やエンジン温(排気温)を感じれば、すぐに砲弾や爆弾が撃ち込まれる。情報はすべてネットワークで構成されている。夜間戦闘能力を持った米軍は昼間は動かない。夜間暗視装置を持たない反米武装勢力の弱点を利用して、市街地でも戦闘行動は防御戦闘以外は夜間に限って行われる。

 このファルージャの市街地戦闘の勝敗は、驚くほどの戦果を短時間で米軍にもたらすだろう。そしてハイテク化された米軍の市街地戦闘のモデルケースとして、これから米軍の教材や訓練に利用される。そのための戦闘実験である。地上を走る黒いケーブルは武装勢力の通信線や爆破装置と考えられるが、激しい砲撃のためにズタズタに切断され、米軍突入とともにその役目が終わる。自爆テロの車はエンジンを始動すると同時にミサイルやロケット弾が飛んでくる。武装勢力の兵士は吐く息まで米軍の赤外線センサーに探知される。

 米軍が市街地で徹底したRMA戦闘を行うのは今回が初めてである。

 イスラエルTV 死亡説を流す アラファト氏重体 「アラファト後」へ緊迫 自治政府、急きょ会合 (朝日 11月5日 朝刊) 

[概要]パリ郊外の軍病院に入院しているアラファト議長は、容体が急変して意識を失い昏睡状態になった。イスラエルのTVは死亡状態と報じたが、パレスチナ自治政府のクレイ首相は死亡説を否定した。これを受けてパレスチナ解放機構(PLO)の指導部は議長府のあるラマラに集まり、情報収集や対応の協議を始めた。この幹部会は前首相のアッバス氏が招集した。アラファト氏は後継者を指名していない。イスラエル政府も軍や情報機関の幹部が集まり、アラファト氏の死亡が中東情勢に与える影響について協議した。

[コメント]アラファト氏もはや昏睡から目覚めることはなさそうである。ということは後継者はクレイ首相ではなく、パレスチナ解放機構で実質的にNO、2のアッバス前首相(PLO事務局長)が引き継ぐのか。あるいはクレイ首相などとの集団指導体制がとられるのか。ともあれ35年間にわたりPLOを率いてきたアラファト議長のカリスマ性が失われれば、PLO内のハマスやヒズボラといった過激派が台頭してくることは間違いない。イスラエルが予測するようにアラファト死亡がパレスチナで暴動を誘発させるのか。気になるところである。まずはこの暴動を回避させることが新PLO指導部の最初の仕事になるだろう。なぜならハマスの背後にいるのはシリアである。ダマスカスにはハマスの政治部門の本部事務所がある。パレスチナ問題とシリア情勢が連動して動き出すと、現在のイラク内戦はシリアに拡大することになる。それこそイスラエルやアメリカ(ネオコン)の思うつぼだからだ。

 アメリカは地中海からイラクへの回廊が欲しい。そのためにシリアをなんとしても勢力下に置きたいと願っている。CIAがシリアでクーデターを仕掛けるか。イスラエルがシリアを奇襲攻撃するか。とにかく今はシリア関連の動きに注目している。ネオコン勢力がシリアを奪えば、イランはアフガンとイラクの米軍で挟まれ、イランの保守派は大打撃を受けることになる。

 北朝鮮が崩壊するのが先か、それともシリアがアメリカの勢力下に入るか。再選されたブッシュ大統領の任期4年間にすべてが決まる。

 米大統領選挙 ブッシュ大統領再選 大接戦 (各紙 11月4日 朝刊)

[概要]米大統領選挙は接戦の末、共和党の現職ブッシュ大統領(58)の再選が決まった。今回の選挙はイラク戦争の是非など、外交・安保問題が第1のテーマに浮上し、双方で激論が交わされたが、ブッシュ大統領が保守色の濃い南部や中部の州を抑えて勝利した。しかし勝敗の差は僅差で、ブッシュ大統領が進めるイラク戦争が、米国民を二分するほど反対論が多いことが証明された。

 ブッシュ再選を受けて、次は閣僚人事に焦点が移る。すでにパウエル国務長官が辞任することが明らかだが、ラムズフェルド国防長官、ライス安全保障担当補佐官などが留任か交代かが検討されている。

[コメント]アメリカ在住の知人からアメリカ中部や南部保守派のことを聞いたことがある。その州の多くの人が、地球儀で日本の位置を知らないと話していた。今でも日本の首都が北京という人も珍しくないという。しかしそれでもアメリカ国民であることは間違いない。そのアメリカ国民が選んだのがブッシュ大統領である。保守的な人は何よりも神と聖書を愛し、世界で邪悪な者を倒す使命があると信じている。異教徒にとってイスラム原理主義も困るが、キリスト原理主義の押しつけも困るものである。

 さてこれからブッシュ政権の4年間が始まる。副大統領は戦争で大儲けすることしか頭にないチェイニーである。またネオコンたちが中東の戦争を拡大させる気なのか。これで自衛隊のイラク撤退が遅れるだろう。いつの間にか自衛隊は多国籍軍に編入されていた。あれほど国会で、自衛隊は多国籍軍に入れないと言い続けてきたのにである。これからの4年間で何人の自衛官がイラクで死ぬのだろうか。それを思うと気が重くなる。

 日本人人質 武装勢力が映像公開 声明で身代金提示を主張 日本政府は全面否定 (産経 11月3日 朝刊)

[概要]イラクのザルカウィ容疑者が率いる武装組織は、日本人人質の香田さんを殺害する場面の映像を公開した。同時に明らかにした声明では、「日本政府は香田さんの解放のため、数百万ドルの身代金を支払うと申し出た」と述べた。身代金支払いの申し出にもかかわらず殺害したことは、「アルカイダのジハード(聖戦)への固い意志を示すもの」と主張した。これに対し外務省の高島報道官は、「日本政府は身代金を申し出た事実はない」と全面否定した。

[コメント]私は昨夜10時半頃に知り合いの新聞記者から、ロイター通信が殺害映像を報じたと電話で知った。その記者はすでに見ていて、「吐き気がするほど残忍」と話していた。

 予測されていたとはいえ、やはり日本人が首を切断する映像を流されることはショックである。

 それから身代金である。高島報道官は知らなかったとしても、別の政府関係者が身代金支払いを申し出た可能性がある。今年7月の参議院選挙のためにジェンキンス軍曹を日本に引き渡すかわりに、北朝鮮に25万トンの食糧支援を約束したような政府関係者である。もしこれが事実なら、アメリカ政府は頭にくるだろう。ザルカウィ容疑者にはビンラディンと同額の2500万ドル(28億円)という懸賞金が掛けられている。そのような相手に数百万ドルを支払うという提案した事実である。大統領選挙のゴタゴタでアメリカにはばれないと思ったのか、それとも武装勢力側が勝手気ままにウソをついているのか。

 政府は香田さん解放のために何を行ったのか。

 サマワではますます治安が悪化してきた。自衛隊に関係する仕事(収入)を得られない部族に不満が高まっているという。ムサンナ県の警察幹部(本部長)が地元の新聞に、治安悪化の責任は自衛隊にあると述べたという。(毎日新聞 11月3日付け 朝刊)。 地元の期待を裏切ったから自衛隊が悪いという論理である。そんな警察に治安をまかすしかない自衛隊を思うと、日本政府のいい加減さにますます腹が立つ。

 サマワ自衛隊 ロケット弾 宿営地コンテナ貫通 隊員無事、爆発なし (読売 04年11月2日 朝刊)

[概要]サマワの自衛隊宿営地に31日の午後10時半頃(現地時間)、ロケット弾が撃ち込まれ、倉庫として使っている鉄製コンテナを貫通している跡が見つかった。爆発はせず隊員に被害はなかった。ロケット弾は22日の夜にも宿営地内に着弾(信管なし)している。自衛隊の宿営地を狙った砲撃はこれで8回目。今回のロケット弾に信管が着いていたかは不明。10月8日にはサマワの中心部で、日本とイラクの友好記念碑が爆破される事件も起きている。なお防衛庁が今回の着弾を正式に発表したのは、発生から19時間後であった。防衛庁は発表が遅れた理由を、「事実関係の分析に時間がかかった」と釈明した。

[コメント]私が最も気にしている事件は、これまでに宿営地を砲撃された8回ではない。それは5月17日に、自衛隊宿営地から500メートル離れた道路脇に、目立つように置かれた対戦車地雷である。この道路はいつも自衛隊の車両が通過するものだった。対戦車地雷は埋められることなく、道路の脇に露出して置かれていた。このことで一部のマスコミは、「犯人は地雷の扱いを知らない者の仕業」と報じた。しかし私は警告という強いメッセージ性を感じた。この犯人は自衛隊を知るもので、自衛隊と交流のある地元関係者と思った。すなわち自衛隊と米軍が違うことを知っているから、あえて警告に留めたのである。おそらく前回の信管を抜いたロケット弾も、同じ犯人グループだと予測している。サマワ市民ではなく外部の者なら、警告などしないで撃ち込んでくるだろう。

 以前、富士演習場で空挺部隊の演習を取材したことがある。降下した空挺隊員は、敵部隊の接近を阻止するために、舗装した道路上にも対戦車地雷を走りながら置いていた。たとえ地雷が簡単に発見されても、路上の障害物して使えるからだと話していた。対戦車地雷にはそのような使い方もある。軍事では警告の意味を、無知の仕業と間違えることは極めて危険である。

 対戦車地雷を自衛隊の装甲車が踏めば、瞬時に装甲車は粉々に吹き飛ぶことは間違いない。装甲車の乗員が死傷するのを避けることは出来ない。

 攻撃したのは、表面では自衛隊に友好的な対応しながら、裏では自衛隊を細かく探り、いつでも攻撃できる立場の者である。(すなわち地元勢力である)。

 防衛庁は今回のロケット弾攻撃を、「外部からサマワに来た武装勢力」として片づければ、さらに次なる攻撃を呼ぶことになる。小泉首相はさかんに、「(自衛隊は)地元から歓迎されている。必要と求められている」と語るが、サマワの市街地にあった友好記念碑が爆破されて何を学んだのか。自己の間違い(サマワ派遣)を正当化するために、都合のいい情報だけを集める姿勢は改めて欲しい。

 サマワ周辺の部族長や市長を日本に招いて歓待しても、その周囲には日本に招かれなかったと怒るサマワ市民もいるのである。このことに気が付いているのだろうか。