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東芝のチャンス

ワーナーがHD DVD(東芝)による映画の販売を打ち切り、ブルーレイ(ソニー・松下など)だけに絞ったことで、次世代DVDをめぐる標準化競争は勝負がついた。すでに日本では市場の9割以上、アメリカでも7割はブルーレイだ。勝者は誰かって? もちろん東芝だ。

もともと次世代DVDなんて、筋の悪い技術だ。私の6万円のPCでも160GBのハードディスクがついているのに、なんでたかだか50GBぐらいのDVDドライブに10万円も出さなきゃいけないのか。ディスクを買いに行かなくても、インターネットで映画もダウンロードできる。音楽と違って、映像は何回も見ることがあまりないので、ストリーミングでも十分だ。もうDVDというものが過去の技術なのだ。

WSJも、今回のブルーレイの「勝利」がソニーの経営にとってプラスになるかどうかは、まだわからないと書いている。次世代DVDは「過渡的な技術」であり、そのうちUSBフラッシュメモリに、そして最終的にはインターネットに取って代わられるだろう。CDの寿命は25年だが、DVDは10年、そして次世代DVDは、たかだかあと5年ぐらいの寿命だろう。こういう先の見えた市場に、コンテンツが出てくるかどうかもわからない。

それでも、ソニーはブルーレイを出し続けるだろう。かつてベータマックスのテープが世の中から消えても、再生機を製造し続けたように。不幸なことに、彼らは映画部門をもっているので、ディスクからも撤退できない。他方、松下はグーグルと組んでネットTVを開発する。戦いは、もう「次世代の次」に移っているのだ。

東芝は、今回の「敗北」を機に次世代DVDから撤退し、IPTVに経営資源を集中したほうがいい。松下がグーグルなら、東芝はヤフーと提携してはどうか。1980年代のアメリカでは、無意味に多角化したコングロマリットが、LBOによって解体・売却された。洗濯機からDVDまでつくる日本の「総合電機メーカー」も、時代遅れのコングロマリットである。これは「選択と集中」のチャンスなのだ。
コメント ( 13 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown ()
2008-01-08 16:14:44
次世代DVDの前に高画質のHDテレビが売れる必要がある。しかし、日本ではアナログテレビを超える可能性はない。個人用の14型ならばDVDで十分。今はテレビがネックとなっている。次世代DVDの市場はまだ小さかった。
東芝はシャープと提携しており、HDテレビの世界で勝つかもしれない。ここで投資家の誤謬に陥るか、どうか。
 
 
 
Unknown (miya)
2008-01-08 16:17:48
次世代DVD(笑)なんて欲しがる人いるんですかね?今の技術ので十分だと思いますけど・・・。
 
 
 
先見性の行方 (Tenor1966)
2008-01-08 16:29:11
 非常に示唆に富んだエントリと感じました。
 LDとVHD、DCCにMDなど、いくつかの記録媒体が開発・市場投入され競争し、その勝者もいつの間にか消えていきました。(それらの中で最も長命なのはコンパクトカセットテープではないかと思っています)
 単に次世代競争をするのではなく、次々世代、ともすると三世代先を洞察した上で市場競争を考えなければならないほどに技術の進歩の速度が上がっていると感じざるを得ません。
 一方で、それを使うヒトはそれほど変化しているわけでは無さそうで、SFの世界の様に機械にヒトが使われたり制御されるような時代にならない様に、感性と洞察力を磨いて行きたいなどと考えました。
 
 
 
勝者は誰かって? もちろん東芝だ。 (まさき)
2008-01-08 17:14:18
先生、お見事でございます。
沈む船(もともとオンライン配信の整うまでの時間稼ぎのMSの深謀)から真っ先にお役放免された東芝の勝ちです。
 
 
 
Unknown (ある視点)
2008-01-08 18:05:46
例えばソニーのように生命保険会社や銀行に展開しているとか、新日鉄が半導体部門を育てようとしていたという話しならともかく、総合電機メーカー(特に東芝)が「無意味に」多角化しているとは思えない。白モノはさすがに苦しいかもしれないが(一応黒字)、景気サイクルが違う分野を事業部門として複数持つことにより、利益のブレを小さくすることが期待できる。「選択と集中」は聞こえはいいが、そういうのは切羽詰まった企業がとる戦略であって、今の東芝にふさわしいとは思えない。R&Dにおいても、総花にしろとは言わないが、そう簡単に割り切って撤退できる問題でもなかろう。
 
 
 
データより現物の方がありがたみがある。銀行振り込みより給料袋手渡し (Unknown)
2008-01-08 18:29:47
次世代FDDの話がありましたね。いくつかあったのですが結局USBメモリ(フラッシュメモリ系)になって駆動装置を買った人はゴミを掴まされた。まだMOは現役のようです(+バイク便?)。映像の納品でもまだブツを使っているそうです。理由は色々あったが、これからはネットワークで送ることになるかも。

ただ文字をケータイや液晶で読むのは無理ですね。本はまだ死なないと思います。ただ大概のものは電子上で置き換えられる。暇つぶしとしての消費財なので。

>50GBぐらいのDVDドライブに10万円

10万以上かかります。コンテンツ保護機能を盛りだくさんなので映ることすらかないません。HDCP対応液晶・HDCP対応グラフィックカードが必要です。下手をすると総取っ替えが必要です。単なるデータを記録することは可能です。DVDのCPRM時のように混乱する可能性があります。

BDはまだ重いのでCPUとグラフィックカードの性能向上待ちです。エントリーレベルであと5年。

ですので私は高精細なPC液晶で見るのはあきらめました。テレビを買えと言うことでしょうか。もうPCもテレビも違いは無いのに。(MSが地デジ対応のソフトを造るそうです)

パッケージというブツ形態が安心する層はいるんですよね。友達と貸し借りに使うなどある程度はコミュニケーションツールとして使えるのではないかと。あとはカードを持っていない層にも有効とくに中高生(数はいませんが)。


日本人はPCよりケータイとビデオ(磁気テープです)。なので「no PC」でやることを決めた松下の賭は応援したいです。先にゲーム機がやりそうです。ソニーはPS3で。

なんだかんだ言ってボトルネックは持っている人たちなんですよね。機械(消費者の+消費者の保持意識)とコンテンツ(テレビ局など)。
 
 
 
Unknown (通行人)
2008-01-08 19:08:27
もっともだと思う面もある反面、既存だろうが次世代だろうがDVD映像は圧縮しすぎで画質劣化が激しすぎですよね。ネットは更に酷い状況。このままでは再配布用メディアの映像自体の価値が落ちていかないか心配です。そのうちyoutubeと画質が変わらんなんてオチになりそうな。
 
 
 
次世代マッシュアップ (初音ミクから考えたこと)
2008-01-08 19:37:15
初音ミクという珍らしいDTM音声ソフトウェアが2万本も売れたようにネットTVは環境さえ整えればそういうガジェットを最大限に楽しむ層によってブレイクしそうです。一般消費者はブルーレイであるとかHDであるとかのスペックなんて見ません。何となく楽しそうというものにお金を出します。今のリビングルームにおける家電製品の環境は液晶大型テレビを見ても楽しさよりも何となくお金がかかりおまけに場所もとられて嫌だと感じているのです。その上でさらに高額の映像プレーヤーを買うなんて無駄だと気づいている人もいるわけです。家電は部屋の中にある居心地のいい家の部品であればいいのですが。そういう家電がホームサーバーになれれば事象として既存のテレビ産業におけるアイドルだとか、お笑い、クイズ番組は廃業においこまれて番組のあり方が根本的にかわるでしょう。もうひとつ思考すれば映像のクオリティというよりもネットとテレビの画面をGUIにおさめて切り替えるための機能が成功する要因になると思います。ipodがヒットした同じ感覚を持ち込めばいい話ですが。itunes+ipodのような関係です。けっきょくネットと通信の融合が完全に達成されればこういうプレーヤーはいらないのです。そういういらない家電を利益のために機能を分散して消費者におしつけられていると思います。
 
 
 
Unknown (J)
2008-01-08 19:47:50
まずは高品位映像用メディアに需要があるかどうかが問題でしょう。SACDやDVD-audioに需要がないことから、高品位音声用メディアは必要とされないことがわかり、実質的にCDが最後のパッケージメディアとなりました。同様のことがDVDでも起きそうではあります。DVDの画質に不満がないならBDで高画質になっても大して嬉しくありませんので。ただし高品位テレビが売れていることから、DVDが取って代わられる可能性もあるとは思います。CDとSACD等の場合はマニア以外には音質の違いが認識できないのに比べ、DVDとBDの画質の違いは結構分かりやすいという事情の違いもあります。また、デジタル放送よりDVDの方が画質が悪く、「無料放送の画質>有料パッケージ(DVD)の画質」という状況が起きていますので、CDの場合よりは世代交代の推進力はあります。
なお、ディスクが絶滅してシリコンに移るにはまだしばらくかかるので(ディスクのようにタダに近い値段で量産するのはシリコンでは難しい)、パッケージ販売という形態が生き残るのであれば、ディスクの価値はあるでしょう。
 
 
 
書き忘れ (ある視点)
2008-01-08 19:48:40
IPTVは果たしてキャズムを超え、マジョリティに受入れられるのだろうか? アップルには新しもの好き・アーリーアダプターの熱狂的ファンが多いが同社のiTVはスルーされているようだ。

「選択と集中」で開発投資するとすれば、そんな市場があるのかどうかも分からないものについてはまず選択肢から外されるだろう。企業に余裕があるから殺されないのであって、複数のシナリオを同時に走らせていることに感謝すべきだ。
 
 
 
現在の視点 (へなちょこ技術者)
2008-01-08 19:58:12
>白モノはさすがに苦しいかもしれないが(一応黒字)、景気サイクルが違う分野を事業部門として複数持つことにより、利益のブレを小さくすることが期待できる。「選択と集中」は聞こえはいいが、そういうのは切羽詰まった企業がとる戦略であって、今の東芝にふさわしいとは思えない。
良い悪いは別にして、この考え方は現在では通用しないでのではないでしょうか。
かつての銀行を中心とした安定株主だけなら長期的利益を重視すれば良かったかもしませんが、現在のグローバルマネーはセッカチに利益を求めてきて、利益率が低ければすぐに離れて行きます。しかも、競争の激しい昨今は資本が少なければ買収されてしまい、企業の存続すら覚束ない。資金が無ければ半導体も原発も事業を維持できないでしょう。
資本投資で失敗したDRAMの二の舞は避けたいのでは無いでしょうか。
 
 
 
意思決定の試金石 (blog49)
2008-01-08 20:26:13
あけましておめでとうございます。おっしゃる通りにHDDからの撤退の英断を下せば東芝の勝利になる可能性はあると思います。外的要因で撤退の意思決定をするのは必然です。
しかし、HDDを推進してきた役員がいたりしてなかなか撤退できないのが日本企業の一つの特徴だと思います。これをすばやくすることで「選択と集中」をすすめ、次の次へさっさっと進出するならばそれは日本企業「意思決定の試金石」になるのではないかと思います。
 
 
 
実売価格4万 (村人A)
2008-01-08 20:41:35
既に実売価格4万です。来年には2万前半かと・・・
http://kakaku.com/item/01253019033/
http://www.iodata.jp/prod/storage/blu
ray/2007/brd-m4/index.htm
 
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