国の病床削減に東京など異議

 厚生労働省が進めている「療養病床」を削減する計画に反し、東京都は将来的に約2万8,000床に増やす計画を掲げていることが、キャリアブレインの1月8日の取材で明らかになった。国の計画をめぐっては、島根県内21市町村の全議会が反対の請願・陳情を採択しているほか、日本医師会なども削減に反対の見解を表明。療養病床について厚労省がどのように対応するか、今後の動向が注目される。

 療養病床は、慢性的な症状で患者が長期に入院する施設。現在、医療保険が適用される「医療型」の療養病床が約23万床、介護保険が適用される「介護型」の療養病床が約15万床ある。厚労省は2012年3月末までに医療型を15万床に削減、介護型を全廃する計画を進めている。

 この計画について、東京都は「基盤整備をせず療養病床を減らす考え方は疑問」などと指摘。都がまとめた「東京都医療費適正化計画」(原案)では、療養病床の目標値を約2万8,000床と記載しており、キャリアブレインの確認に対して「国は一律削減を打ち出しているが、急速な高齢化の到来等を踏まえると、都にはなじまず、約2万8,000床に増やすことが望ましい」などと回答。現在の2万1,379床(07年4月時点)を1.33倍ふやす方針であることを示した。

 島根県では、島根保険医協会が計画の中止を求める意見書を国に提出すること、医療・介護・福祉制度の充実と基盤整備を求めて各市町村に請願・陳情を提出。これまでに県内の全市町村議会(21市町村)が療養病床の削減に反対する請願・陳情を採択している。

 日本医師会は昨年、「療養病床の再編に関する問題点」と題する見直し案を発表。15万床に削減される療養病床について、「高齢者の増加に伴い、2012年度には26万床が必要になる」という見解を示すとともに、この26万床という数値に関しても「超後期高齢者ともいえる人口が増えるので、実際の必要性は(26万床)より高くなる」と推察している。
 そのうえで「療養病床を減らすシナリオが描かれた05年の38万床に比べ、07年1月の病床数は36.8万床であり、既に1万床以上が失われている。しかも、これもすべて円満な在宅復帰の結果かどうかは疑問」などと批判。厚労省の計画に対して「医学的管理・処置が必要とする医療区分1の患者や75歳以上の後期高齢者の増加数などを勘案した医療療養病床数にすべき」と主張している。

 同計画をめぐっては、療養病床の医療区分が3つに分けられ=表参照=、区分ごとに入院基本料に差がつくなど病院経営を圧迫。都内の民間病院のある事務長は「医療保険にしても介護保険にしても、国が財政をどう圧縮するかという枠で発想している限り、今後も患者にしわ寄せがいくことになるのは変わらない。また、医療区分による診療報酬の設定では、医療難民・介護難民の発生を防ぐことはできないだろう」と危惧している。

 療養病床について、「厚労省が計画を緩和し、20万床を存続させる方針を固めた」という一部報道もあったが、キャリアブレインの確認に対し、この報道を同省は否定した。





更新:2008/01/08   キャリアブレイン

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