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【主張】公教育再生 規範意識の育成が急務 親から子への悪循環断とう

2008.1.8 03:25
このニュースのトピックスいじめ問題

 いま、公教育が危機の中にある。規範意識をどうはぐくむか、学校現場は指導法に悩み、実効が上がらないのが現状だ。一方、保護者も学力低下の向上策に関心は高いが、生活習慣やわが子のしつけには総じて関心が薄い。

 今年、小中高校などの教育内容の基準となる学習指導要領が改定される。今月中にもまとまる中央教育審議会の答申素案をみると、知、徳、体のうち、知は基礎基本重視や授業時間増など脱ゆとり教育へ端緒ができた。

 だが、中教審は徳育について政府の教育再生会議が提言した教科化の是非を明言せず、先送りの姿勢だ。学力とともに公教育の基本となる規範意識を高める指導をどう充実させていくか、あいまいである。

 ≪人との交流が大切だ≫

 規範意識が薄れ、おかしいと感じる事例はあちこちで見られる。

 小学校を視察した教育関係者は「あいさつをしない子供」どころか「きちんと上履きが履けない子供」が目立つようになったという。大学では、授業を聞かず、携帯電話画面から目を離さない学生が増えている。

 モラル崩壊は子供だけではない。保育園では、遅くまで子供を迎えにこない親が目につくようになった。入学式や学級参観で、おしゃべりに夢中な保護者もいる。親から子へ規範意識の薄れは広がる様相だ。この悪循環を断ち切らねばならない。

 かつては、朝から晩まで近所の子供たちが外で遊ぶ姿が見られた。異年齢の仲間のなかで自然に学ぶことが多かった。だが、ゲームやネット世代の子供たちは、人と話すより、機械相手に遊び、友人らとのトラブルに対応する方法が分からない。親自身も地域と交流したがらず、きちんとあいさつのできない大人が少なくない。

 親も子も、近所づきあいなど人との交流にもっと関心を持ってほしい。弱者を思いやる気持ちは、そうしたつながりの中でこそはぐくまれる。

 幼児期から集団生活に慣れない子供たちへの対応として、小学校入学直後に1週間程度、子供たちが学校に寝泊まりして生活習慣を学ばせる試みが一部で始まっている。わずかな期間の体験でも、夜遅くまでテレビを見ない約束事や、親と離れることで逆に親の大切さを知るなど、子供たちが変わり、落ち着く効果があるという。

 学校側が意識して子供に社会体験の機会を与えることも重要である。

 ≪内閣はもっと熱心に≫

 学校の道徳教育は、昭和33年に週1時間の「道徳の時間」ができ、50年がたつ。

 以前は「親、師を敬う」「困っている人を助ける」「うそをつかない」などの徳目が、郷土の偉人の伝記や古典など親たちも知っている具体例を通じて教えられた。そして家に帰れば親や祖父母からさらに詳しく聞き、目上の人を敬い慕う気持ちが自然に生まれた。今はそうした機会は極めて少なくなっている。

 文部科学省の調査では、道徳の授業時間をきちんと確保する学校が増えているとしている。しかし、形骸(けいがい)化の実態は変わらない。教師によっては、道徳教育をいまだに敵視し、別の授業をしている学校がある。いじめ事例や指導力不足教員の認知件数など実態と乖離(かいり)した調査と同様の構図である。

 少年の凶悪事件の低年齢化などで「心の教育」が重視されながら、「価値観の押しつけ」などの批判をおそれ、規範意識について指導をためらう傾向がある。善悪や正義などを毅然(きぜん)として教える指導が必要だ。教師の姿勢と指導力が問われている。

 公教育再生を憲法改正と並ぶ最重要課題に掲げた安倍晋三内閣から福田康夫内閣に代わり、教育改革への情熱が急速に薄れているようだ。

 徳育の教科化を再三、提言している教育再生会議は、官邸主導による迅速な教育改革を目指す前首相の肝いりで発足した。また、「国を愛する態度」や「道徳心」の育成を求める改正教育基本法は、前内閣で成立した教育の根本法規である。

 教育理念とは、内閣が代わるごとにくるくる変わってよいものではあるまい。福田内閣も、モラル回復をはじめとする教育改革に熱心に取り組んでもらいたい。

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