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減災に活用、広がる緊急告知FMラジオ 魅力は低価格

2008年01月08日

 地域FM局が発信する災害情報を受ける「緊急告知FMラジオ」を減災に活用する自治体が増えている。05年に開発されて以降、すでに10自治体が本格導入して約2万台を配備した。街頭の拡声機を利用することが多い防災行政無線に比べて低コストで、屋内の住民に確実に情報を届けられる点が評価され、地域FM局の増加に伴って利用の輪が広がっている。

写真伊丹市がひとり暮らしの高齢者や近隣に住む支援協力員に配っている緊急告知FMラジオ=伊丹市役所で

 岡山県倉敷市では04年に台風被害が相次ぎ、2人が死亡した。市は避難勧告を防災行政無線で伝えたが、屋内では聞こえにくく一部で伝達が遅れた。その反省から、倉敷市の倉敷ケーブルテレビとエフエムくらしきが共同で開発に乗り出した。「情報伝達の手段は多いほど良い」と同社の大久保憲作社長。同市は06年5月に配備を始め、07年11月までに学校や社会福祉施設などに約880台を設置した。

 地震や水害が相次いだ新潟県では、長岡、燕(つばめ)、三条の3市や新潟市秋葉区で導入された。長岡市は06年度に800台を防災行政無線がない地域に配布。今年度は4500台を町内会や要援護者がいる世帯に配り、09年度までに計約9千台に増やす計画だ。

 市民に販売する自治体も出てきた。阪神大震災で被災した兵庫県宝塚市は昨年末から民間保育所や特別養護老人ホーム、障害者支援施設など62カ所に市費で配備したのを手始めに、約80カ所ある福祉施設へも配備を進める。市民向けの販売も始め、価格は1台8400円だ。

 兵庫県伊丹市は緊急告知FMラジオを使い、自力での避難が難しい高齢者や障害者を支える仕組みを構築中だ。支援を希望する人1人につき、近隣に住む支援協力員を2人ずつ決め、それぞれ1台ずつラジオを無料配布する。17日にはラジオを使った初めての避難訓練を、約300人が参加して実施する。

 ラジオの普及は地域FM局の広がりに支えられている。出力20ワット以下で放送範囲は半径数キロ圏内。きめ細かく市民に災害情報を提供するには適したメディアだ。阪神大震災が起きた95年1月には全国で14局だったが、95年度に12局、96年度に34局が開局し、今では全国216局に上る。

 総務省消防庁防災課は「メディアとの協力でコストを低く抑える工夫をしており、評価できる取り組みだ」としている。

 <緊急告知FMラジオ> 災害時に地域FM局が出す特別な電波信号で自動的にスイッチが入り、大音量で情報を流す。ライトも同時に点灯し、聴覚障害者も災害の発生を知ることができる。聴けるのは事前に設定した地域FMの放送だけで、充電式で停電時も使える。防災行政無線の屋内受信機が1台数万円なのに対し、このラジオは1台8千円程度。格安で配備できるとあって、開発したエフエムくらしきには100を超える自治体から問い合わせがあった。

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