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【遊びの流儀】ハイエンド・オーディオ (1/2ページ)
このニュースのトピックス:美術・芸術
■求めたのは音質より感覚
仕事仲間が持ってきた、1本の電源コードがきっかけだった。
「これがいいんだよ」
写真家の青木健二さん(39)は、意味がよくわからないまま、オーディオセットのコードをつけ替えた。いきなり音が格好良くなった。電源コードだけで?
「衝撃的でしたよ。で、これはもっとすごいのを買うしかないって、いろいろ調べてPADというメーカーにたどりついてね。『一番すごいの下さい』みたいな。太いケーブルに電磁波を防ぐ液体が封入されてるんですよ。1メートルが10万円だったか30万円だったか」
えーと、電源コードですよね…。
「そう。ところが、買って帰ってつけてみたら、最悪。音がこもっちゃって。言われました。これは最高級(ハイエンド)の機材に使うものですって。軽自動車にフェラーリのエンジンを積むようなもんですね。思えば、それが地獄の始まりでした」
電源ケーブルに合った機材を買うというのも本末転倒な話だけど、始めてしまったものは仕方ない。ショップをめぐり、資料をあさり、高級な装置を買いそろえた。ところが、なかなか心地良い音にはならない。
「記憶って美化されてるから、何をやっても到達しないんですね」
高級乗用車を何台も買えるほどの散財と迷走の果てに、「マーク・レビンソン」の古いプリアンプ「LNP−2」にたどり着いた。
レコーディングエンジニアだったレビンソン氏が、既存のシステムに飽きたらず自ら設計した録音用機材。オーディオメーカーが生まれる契機になった名機。かなりのマニアでも本物を見たことのない人が多いというシロモノを、1年待って手に入れた。