久しぶりに年末年始をゆっくり休み、元旦を実家で過ごした。母の没後に一人で暮らす父を訪ね、妻と生後二カ月の娘とともに新年を祝った。
日ごろは仕事一辺倒になりがちなだけに、新鮮な空気を吸い込んだような気分だった。そして、新しい生き方のキーワードとして注目されている「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)について考えた。
一九九〇年代に米国で生まれた概念で、家族・友人・地域とのかかわりを大切にし、私生活と仕事の両方を充実させる発想だ。仕事と私生活のどちらも犠牲にせず、それぞれの人が希望に沿った生き方を実現する。
多様化するライフスタイルに対応した職場づくりは、企業にとってもメリットがある。長時間労働を改めれば、結果として生産性が向上、従業員の能力開発にも結びつく―と、経営戦略に取り上げる大手企業もあるほどだ。
もっとも私の年始は、のんびりと息抜きした程度。それでも家族や友人のありがたさは十分味わうことができた。
かつて頑固で話しにくいときもあった父が、老いたことにもようやく気がついた。優しい言葉の一つもかけなかったが、にこやかな表情だった。真夜中に夜泣きする娘に目を細め、「かまわんよ。赤ちゃんは泣くのが仕事だから」。妻には「来てくれてありがとう」を繰り返してくれた。
「ネズミ繁盛」「子だくさんで、神の使い」など、縁起がよいとされる子(ね)年。格差や食品偽装、年金問題といった昨年来の寒々しさを一掃し、心温まる一年になってほしい。
(文化家庭部・赤井康浩)