米大統領選の共和、民主両党の候補指名争いが始まった。幕開けとなったアイオワ州党員集会では、共和党はキリスト教右派に支えられたハッカビー前アーカンソー州知事が、民主党は黒人初の大統領を目指すオバマ上院議員が勝利し、幸先よいスタートを切った。次の焦点は、八日のニューハンプシャー州予備選だ。
四年に一度の大統領選には、現職の大統領か副大統領の出馬が通例になっていた。今回は、三選を禁じた憲法の規定によってブッシュ大統領は立候補できず、心臓に持病を抱えるチェイニー副大統領も出馬を見送った。現職の正副大統領が立候補しないのは八十年ぶりである。
候補者は共和党がハッカビー氏のほか、二〇〇一年の米中枢同時テロ時の指導力で知名度の高いジュリアーニ前ニューヨーク市長ら、民主党はオバマ氏のほか、夫がビル・クリントン前大統領で、女性初の大統領を狙うヒラリー・クリントン上院議員らが名前を連ねる。
初戦のアイオワ州党員集会で、クリントン氏は三位に終わった。全米で高い支持率を得て民主党候補の本命とみられていただけに、番狂わせだ。共和党もジュリアーニ氏が本命視されているが、アイオワでは支持が延びなかった。選挙戦の行方は混沌(こんとん)としてきたといえよう。
民主党でオバマ氏が初戦を制したのは、一貫して「変革」を主張してきたからとみられている。米国は、混迷から脱し切れないイラク戦争をはじめ、原油価格の高騰や信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)の影響によって雇用統計が大幅に悪化するなど景気後退観測が浮上し、閉そく感が漂う。有権者は、現状打破を強く期待したのだろう。
クリントン氏も、オバマ氏のキャッチフレーズである「変革」を逆手にとり「わたしは変革を約束するだけでなく、三十五年間も変革に取り組んできた」と、ファーストレディー時代などの経験を強調する。共和党で先勝したハッカビー氏の陣営も「彼こそは『変化をもたらす候補者』だ」と力を込める。
候補者に聞きたいのは、変革の中身だ。ブッシュ政権は「対テロ戦争」や地球温暖化防止対策などで一国主義に走り、各国に反米・嫌米感情が広がった。冷えた国際関係をどう立て直すのか、あるいはどのようにして経済の安定軌道を維持していくのか。
大統領選の本選投票日は十一月四日だ。米国は唯一の超大国であるだけに、長期間の舌戦を世界が注目していることを忘れないでもらいたい。
昨年一年間の全国の交通事故死者数は、前年に比べ六百九人(9・6%)減の五千七百四十三人だったことが警察庁のまとめで分かった。
七年連続の減少で、過去最悪だった一九七〇年の一万六千七百六十五人に比べると約三分の一である。五三年以来、五十四年ぶりに五千人台になった。
都道府県別では三十九府県が減少しており、岡山は百十五人(昨年比二十九人減)、広島は百三十二人(同三十三人減)、香川は七十八人(同十八人減)だった。
減少の背景には、飲酒運転に対する罰則を強化した改正刑法が昨年六月に、改正道交法が同九月に施行され、飲酒運転追放の機運が高まったことが挙げられよう。飲酒運転による死亡事故件数は昨年一―十一月、前年同期比31・7%減の三百九十五件である。このほか減少の要因としては、シートベルトの着用率向上などが指摘されている。
一方、昨年一年間の事故発生件数は八十三万三千十九件、負傷者数は百三万四千五百十五人だった。過去最悪だった二〇〇四年からは三年連続で減少したものの、負傷者数は九年連続して百万人を超えた。交通事故情勢は依然厳しいと言わざるを得ない。
見逃せないのは交通事故死者のうち六十五歳以上の高齢者が占める割合が高いことだ。ここ数年40%を超えており、岡山県では昨年50%と過去最悪を記録した。
高齢社会の進展に伴い、運転、歩行中の高齢者の事故の可能性は高まろう。年をとると判断力や動作が鈍り、事故につながるケースが多い。交通安全施策の鍵を握るのが高齢者対策だ。高齢者が歩きやすい安全な環境整備など多角的な取り組みが必要だ。
(2008年1月8日掲載)