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2008年1月8日

 超特急が、ホームで待機する列車横を猛スピードで駆け抜けるのを見る思いである。築四十九年、東京上野の国立西洋美術館が世界遺産に優先推薦されると聞いての感想だ

近代建築の巨匠と呼ばれたフランスのル・コルビュジエ氏の設計である。巨匠を評価するのにやぶさかではないが、何せ一九五九(昭和三十四)年の完成からまだ半世紀もたっていない。百年後にどう評価が変わるかもしれないと心配になるほどだ

政治体制が変わった途端、芸術文化の評価が一変するケースはいくらもある。歴史は後世が評価し、文化財は長い時によって磨かれるのだが、同美術館は昨年末、重文指定の目安である築五十年以上の枠も外して、特例の重文となった

日仏など世界七カ国にあるコルビュジエ建築二十三件を一括世界遺産に共同推薦するためだが、国内遺産との比較上、悩ましい判断である。一種の外圧とも言えようか。芸術と言えばからっきしフランスに弱い明治以来のコンプレックス説まで思い浮かぶ

超特急「コルビュジエ号」は日本国内にありながら日本側に世界遺産とする目がなかったことも象徴する。これが一番つらい。


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