【釜山6日神屋由紀子】韓国国内で、創価学会や天理教など日本に教団本部を置く日系宗教の信者が公称ベースで約193万人に上ることが釜山市の東西大日本研究センターの調査で分かった。研究チームは金大中(キムデジュン)政権下の1998年に始まった日本の大衆文化開放政策により反日感情が薄れ、教団の活動が活発になり、信者が広がったと分析。韓国での日系宗教の浸透ぶりが明らかになったのは初めて。

 研究チームは宗教社会学など日韓の研究者7人で構成。調査は政府系の韓国学術振興財団の委託を受け、2003年に開始し、07年11月に報告書がまとまった。

 報告書によると、教団数は18あり、信者数は各教団の公表数(韓国内の本部公表)を基に計192万8980人と算出。韓国の人口の約4%にあたる。ただ、研究チームは「入信カードの重複などで実数はある程度低くなる」とみている。教団別でみると、最多は創価学会の約148万5000人で信者数全体の77%。天理教の約27万7000人と合わせると2教団で91%を占めた。

 布教のきっかけは、主に(1)植民地時代に日本人が布教し、戦後、韓国人信者が再結集(2)在日韓国人の帰国で流入(3)教団側の戦略‐の3パターン。天理教が最も早く1893年から、創価学会など大半は1960年代以降に布教を始めている。

 研究チーム代表で李元範(イウォンボム)東西大教授(日本学)によると、60‐70年代は韓国での反日感情が強く、日の出に向かって礼拝する儀式が日本や天皇に対する崇拝とみなされるなど、日系宗教の布教が「文化侵略」として抵抗に遭い、表立った活動ができなかった。だが、金大中政権以降、都心で街頭広告が出るなど活動が活発になったという。

 研究チームは信者にもアンケートや対面調査を実施。入信動機で最も高かったのは「自分・家族の病気」(33.5%)。李教授は日系宗教の特徴を「個人の家のような日常的空間で一般信者中心の宗教儀礼や座談会を行っている」と指摘。「座談会で信者の不安に即座に対応するなど日系宗教は既成宗教では満たされない欲求に応え、人々をひきつけてきたのではないか。100万人超の信者を獲得していたのは驚きだ」と話している。

■韓国の宗教

 韓国政府の2005年の統計では、韓国で信仰する宗教がある人は全人口の53.1%。宗教別では仏教22.8%、プロテスタント18.3%、カトリック10.9%と続く。キリスト教のうちプロテスタントが多いのは、日本の植民地時代に独立運動を担った人物に同信者が多かったことや、戦後、米国などの救援物資が同教会を通して配布された経緯がある。

=2008/01/07付 西日本新聞朝刊=