今年は世界人権宣言60周年
公明新聞:2008年1月5日
日本から啓発と宣揚の風送ろう
普遍の価値として
「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とについて平等である」。あまりにも有名なこの文言で始まる世界人権宣言が国連で採択されて、今年は60年目の佳節に当たる。
国連は、「わたしたち全員のための尊厳と正義」をテーマに、1年間かけて世界各地で60周年キャンペーンを展開していく計画だ。人権をテーマにした短編映画の巡映や、「マンガで描く人権展」の巡回などがすでに決定している。
各国政府や国際NGO(民間団体)もこぞってキャンペーンに参加する意欲を見せている。2008年はまさに世界挙げての人権啓発の年になりそうだ。日本からも大いに人権宣揚の風を送りたい。
人権宣言の基本精神は、国連の最大の目標である「恒久平和の実現」のためには人権の確立が不可欠である、との考え方にある。未曾有の被害を出した二度の大戦への反省から、人類普遍の価値として確認されたのだった。
事実、宣言は世界で最も多くの言語に訳されており、国連人権高等弁務官事務所のウェブサイトには366言語もの宣言文が収録されている。このこと自体、その普遍性と影響力を物語っていると言っていいだろう。劇作家の山崎正和氏は、21世紀の国際社会にあって人権は国家主権を超えて決定的な力を持ち始めた、と指摘している(同氏著『21世紀の遠景』)。
だが、昨年12月10日の世界人権デーに寄せて潘基文国連事務総長が発表したメッセージにもあったように、「宣言に謳われた基本的自由は今なおすべての人々の手に至らず」「その国際的規範を実践する政治的意思に欠ける政府があまりに多い」のも世界の現実だ。
ブット元首相の暗殺で揺れるパキスタン、大統領選に絡んで部族衝突が激化しているケニアなど、年末から年始にかけての、ここ数日の世界の動きを見ただけでも、人権と平和を脅かす悲惨な事件は枚挙にいとまがない。北朝鮮による拉致問題も、進展がないまま新しい年を迎えてしまった。
GDP(国内総生産)世界第2位を誇る経済大国・日本も、こと人権に関しては頼りない。
子どもたちを取り巻く人権状況は、いじめや児童虐待が一向に後を絶たないままだし、国連自由権規約委員会などからの度重なる勧告にもかかわらず、婚外子への民法上の差別規定も依然是正されていない。女性の人権についても、性的嫌がらせやドメスティック・バイオレンスが絶えない。外国人労働者とその子どもたちへの不当な差別もまかり通っている。
グローバル化で競争激化が進む中、ホームレスや非正規労働者、ニート、フリーターなどが激増しているのも看過できない問題だ。格差社会の進行は今や、「健康で文化的な最低限度の生活」(生存権=憲法第25条)を侵害する人権問題の様相を見せている。
それでも1本の木を
世界と日本の、こうした人権を取り巻く厳しい状況を思うとき、世界人権宣言の理想は遠くにかすむ幻のようにすら映る。人権と平和の道の何と遠く険しいことか。
だが、私たちは諦めるわけにはいかない。60周年の年が開幕した今こそ、「たとえ明日世界が終わろうとも、今日1本のリンゴの木を植える」(マルチン・ルター)覚悟を固めたい。人権の党・公明党も、この1年をかけ、世界人権宣言の精神を社会に深く広く浸透させてゆく決意である。
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