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【主張】宇宙と地球環境 技術力で存在感示そう

2008.1.7 02:28
このニュースのトピックス主張

 ■温暖化の防止に衛星観測も

 今年の日本の科学分野では、宇宙と地球環境に注目したい。

 建設中の国際宇宙ステーション(ISS)に、日本の実験棟「きぼう」を取りつける宇宙工事が間もなく始まろうとしている。

 計画に大きな遅れが出なければ、2月末ごろ宇宙飛行士の土井隆雄さんがISSに向かう。そのとき、シャトルで運ばれるきぼうの倉庫部分(船内保管室)をISSの本体に接続する。

 4月には新人飛行士の星出彰彦さんが次のシャトル便でISSに行き、きぼうの実験室部分を取りつける。

 この段階で、きぼうは日本初の宇宙施設として機能を開始する。ほぼ20年越しの日本の夢の実現だ。

 そして、早ければ秋には、若田光一さんがISSで約3カ月間の滞在をスタートさせる。日本人の宇宙長期滞在は初めてのことだし、1年間に3人もの日本人飛行士が宇宙に出かけていくのもかつてないことである。日本の宇宙開発史上、一段階上に進む過程として位置づけたい。

 「地球の出」などの画像をテスト送信している月探査機「かぐや」も昨年末に機器の調整を終え、1月からは月面の科学観測を本格化させる。

 月の誕生や進化の謎を解く多数のデータを送ってくるはずである。これは惑星科学の先端を切り開く研究だ。

 地上では、地球温暖化防止を目指す「京都議定書」の第1約束期間が始まる年である。

 ≪第1約束期間の開始≫

 日本は2012年までの5年間の平均で、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を1990年の段階より6%減らさなければならない義務を負っている。

 7月には北海道の洞爺湖でサミット(主要国首脳会議)が開かれる。主要議題は2013年以降・ポスト京都の温暖化防止策の枠組み作りである。

 中国をはじめとする途上国や大量排出国の米国を参加させるために、先進国は新たな削減目標を自らに課すことになるだろう。

 そこで、忘れてはならないことがある。京都議定書での日本の削減量が決まった11年前のいきさつだ。重要な国際交渉に準備不足のまま臨んだ日本は議長国の立場もあって、過大な量を約束してしまった。

 早くから省エネに取り組んでいた日本は、すでに削減を進めていたにもかかわらず、6%を約束することになった。よく言われるように「乾いたぞうきん」を絞っても、これ以上水は出てこない。日本は、減らしきれない二酸化炭素を外国から購入しなければならなくなっている。

 掃除にたとえれば、ちりひとつないきれいな家庭が、減らしたゴミを示すために、金を払って不潔な家からゴミを買ってきて提出するのに等しい。

 汚れた二酸化炭素の購入に莫大(ばくだい)な税金や企業資金が使われる。地球温暖化防止のためとはいえ、省エネ先進国の日本にとってはおかしな理屈だ。

 この自覚がないまま、ムードに流されてポスト京都の協議を続ければ、矛盾は再び肥大する。

 ≪青い地球の説得力を≫

 では、どうするか。日本は宇宙技術力で地球温暖化防止に貢献し、世界に範を垂れるべきだ。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の上げた陸域観測技術衛星「だいち」は、熱帯雨林の観測などで有用なデータを提供できる。森林の違法伐採を宇宙から監視することも可能だ。

 昨年12月にインドネシアのバリ島で開かれた国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP13)でも、二酸化炭素の吸収源として森林の果たす役割が再評価されている。

 日本は来年度中に、温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT」を打ち上げる。宇宙から地上の二酸化炭素の濃度分布を測る。多く出している地域と少ない地域は一目瞭然(りょうぜん)だ。排出削減に多大な貢献をするのは間違いない。

 日本は地球環境でのリモートセンシング(遠隔探査)の有用性を強調し、世界に明確に伝えるべきである。

 暗黒の宇宙に浮かぶ青い地球の輝きは神秘的だ。温暖化防止に“後ろ向きの権利”を主張し続ける国々を説得する力を持っている。排出権の取引だけが解決策でないことを自覚したい。

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