◇厳しさ増す医師不足
人口約11万人の西都児湯医療圏で、中核病院とされる西都医師会病院。3階の病室は今、机と椅子が運び込まれ、会議室に変わっている。かつて病室に並んでいたベッドは廊下の隅に置かれている。「ここが早く病室に戻るように願っておるんです」。森本広事務長がつぶやいた。
昨年6月、宮崎大医学部付属病院が派遣を中止し、医師会病院に常勤内科医がいなくなった。医師会病院は内科の一般外来を休止し、救急の夜間診療も午後11時までに限った。内科入院病棟だった3階は閉鎖されている。
相沢潔院長は「新しい内科医を見つけようと、考えうる限りのことをしてきた」と話す。昨年、国や県への協力要請、近隣県の医師会や個人的なつてを頼り、医師探しに奔走した。民間の医師派遣会社のホームページにも求人情報を掲載した。昨年末になり、ようやく医師1人が見つかった。しかし、1人では24時間態勢の医療や入院対応はできない。相沢院長は「早く2、3人目を見つけたい」と言う。
医師確保に取り組む県医療薬務課の須志原浩行主幹は「県内の医師の絶対数が不足している。月7、8回の当直や32時間勤務など過酷な勤務になっている病院は多い」と話す。県内19カ所の市町村立病院・診療所に限ってみても、必要な医師計109人に対し、23人が不足している(昨年6月現在)。
東国原英夫知事は先月28日の記者会見で「マニフェストで実現できなかった部分もある」として医療問題に言及した。「中山間地域にドクターを送るというのは、医師不足で現実には無理かなぁという感じがある」と悩ましげな表情を見せた。
県はこれを補う政策として新総合計画に医師確保対策強化事業を取り入れた。西都市を含む15市町村とともに医師確保のための協議会をつくり、ホームページでの求人情報の発信、県出身医師のデータベース化を進めている。県職員として医師を採用し、へき地の病院に派遣する制度を取り入れ、昨年4月から西米良村で第1号の医師が勤務を始めた。
「全国的に医師が不足し、限られた人材の奪い合いになっている。地道に一人ずつ確保していくしかない」と須志原主幹。今後一層、医師確保が厳しさを増すのは間違いない。【佐藤恵二】(つづく)
毎日新聞 2008年1月7日