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【地球発熱】温暖化で“運び屋”も北へ 感染症流行、脅威潜む2008年1月6日
人間にとっては悪影響ばかりが論じられる温暖化だが、歓迎する“やから”も地球上には存在する。高温多湿を好む蚊は、温暖化によって生息域を北方に拡大しながら、繁殖や行動を活発にさせることが予想されている。しかもこれらの蚊は感染症を媒介するものも多く、温暖化の進行で、熱帯・亜熱帯地域に潜むウイルスが、日本国内で猛威をふるう可能性もあるという。 日本の都市部で流行が懸念されるのが、デング熱だ。東南アジアから中南米まで広い範囲に分布し、38−40度程度の高熱が続き、激しい頭痛や筋肉痛も引き起こす。現在、全世界で年間約1億人が発症していると推定されている。 ウイルスを媒介するヒトスジシマカは日本国内にも生息し、特に「日本では都市部で発生密度が高い」(環境省)とされる。このヒトスジシマカの生息域が、近年の温暖化で北へ拡大している。国立感染症研究所(東京都)の小林睦生・昆虫医科学部長らの調査では、第2次大戦後間もないころは関東地方北部が分布の北限だったが、現在は岩手県や秋田県まで広がっている。 □ □ ヒトスジシマカは、年平均気温が11度以上の地域に分布する。小林氏は、このまま温暖化が進めば2035年には青森県にも定着し、2100年には北海道南部にまで広がる、と予測する。 感染症の流行は気温だけでなく降雨量なども関係することから、媒介動物の分布域の拡大が大流行に直結するわけではない。しかし、複数の要因が重なれば、大流行を引き起こす可能性は否定できない。 実際、日本国内でも第2次大戦中、長崎、呉、神戸、大阪などの港町でデング熱が流行したことがある。東南アジアなどからデングウイルス感染者が入港したところへ、各戸にあった防火水槽でヒトスジシマカが発生し、大流行につながったと考えられている。 今のところ日本にデングウイルスは常在せず、国内での発症は海外から帰国後に発症する「輸入例」にとどまっている。しかし、小林氏は「温暖化で蚊の密度が高まり、さらにウイルスの増殖が増えれば(デング熱などが)流行しやすくなる」と警告する。 □ □ 日本国内に存在する感染症としては、コガタアカイエカが媒介する日本脳炎が挙げられる。予防接種の効果で患者は激減しているが、今でも年間数人が発症している。日本脳炎ウイルスは夏の気温が高い年に活発になるとされ、猛暑が続けば、ワクチン接種など十分な対策が必要になる。 一方、かつて日本でも流行したマラリアについて、小林氏は「温暖化に伴う被害の拡大を心配する必要はない」とこちらは懸念を払しょくする。媒介するハマダラカは国内に生息し、夜間に吸血する性質を持つが、日本の住宅構造の変化で、屋内に大量の蚊が入り込むことが少なくなったのも一因という。 (温暖化問題取材班)
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