□ リコのメッセージ □
森
あたし リコ
ハンターの リコ=タイレル。
レッドリング・リコといえばわかるひともいるかしら?
…これから メッセージをカプセルに残していくことにする
後に あたしに続いて来る者のために。
今、これを聞いているなら 判るわよね。
この惑星「ラグオル」に何らかの異変が 起きつつあるって。
忠告しとくわ。
気を抜かず、常に周囲に気を配ること。
もし 生き抜くことを望むなら、ね。
セントラルドームの外に出た人が森の動物に襲われたって事件が相次いで報告された。
身体は大きくても おとなしい動物ばかりだったのに。
何か きっと原因があるはずだから、それを探ることにする。
ほとんど 商売抜き。
あたしも酔狂なことだ。
みんなが言うほど、あたしは大層な人間じゃないけど…
自分でできることはやろうと思う。
ただ それだけ。
とにかく…
このラグオルで何かが起こっている…
それはきっと 間違いない。
最近、軍の動きが 妙だ。
結局 ラグオルには 当初 懸念されたような外敵は やはり いなかったはず。
なのに、巧妙にカモフラージュされてるけど ここのところ かなりの動きがある。
いったい 何をしているのかしら…?
大変…!
大きい地鳴りと共に 地下から 何かが 吹き上がってきて、セントラルドームで大爆発が…
いったい何があったの?
パイオニア1とは連絡がつかない。
ドームのみんなは…!?
だれかに 見られてる?
頭の中を すべて覗かれたような…
そんな感覚…
すごい頭痛がする。
立っていられないくらい。
あの爆発は…普通じゃない。
単なる 物理的爆発ではなかった…
そんなことがあるだろうか。
この おっきな柱は、パイオニア1の入植を記念して建てられたものだと言われてる。
でも、到底 そんな最近のものとは思えない。
詳しくは 調べる必要があるけど…
それに この模様…
文字だろうか?
だとしたら、何が書いてあるのか…?
洞窟 |
すごい…!
ラグオルの地下に こんな洞窟があったなんて…!
見たことも聞いたこともない生物。
この星で これまで、存在を知られていない生物。
原生生物の亜種というか、突然変異したもののようにも思える。
政府が ラグオル生態系の情報を隠蔽していたってこと?
だとしたら なぜ そんなことを?
思えば パイオニア1には おかしなことがいくつかあったわ。
移民船「パイオニア1」は そもそも、衛星軌道上で解体、地上で都市として再構築できるよう 設計されている。
でも、完成したセントラルドームは、当初の想定より 12%ほど小さいのよ、これが。
12%分の物資は どこに使われているんだろうと思ってたけど…
この先に行けば それが判りそうよね。
見て このモニュメント!
森にあったのと 同じ。
少なくとも、政府の説明はウソだったというのが これで判る。
あれは やはり 我々が建てたものじゃなかったのよ。
やはり 先文明があったってこと…?
わからない…
確実には 何も。
この文字、解読できるかな。
こんなことになると思ってなかったから手持ちのツール、貧弱なのよね…
モニュメントの文字だけど、あれだけじゃ ほとんど解析のしようがない。
もっと サンプルがないかなぁ。
すっごい光景を 見ちゃった。
巨大なワームが触手を突き刺すと生物が変態していったの。
洞窟で襲いかかってきたモンスターは、みんな このワームの手にかかって
こんな姿にされたんじゃないかしら?
胸が 高鳴る…
恐怖、期待…いや、そんな言葉じゃ表しきれない
この感情は なんだろ?
科学者としての探究心?
それとも、ハンターとして未知の敵に挑む 高揚感?
脚が 自分の脚じゃないみたい。
…でも、確実に向かってる。
もっと 地下深くへ…
何かに 導かれるように。
坑道
これが…
これが パイオニア1の残りの12%…?
何のために こんな地下まで穴を 掘ったんだろ。
しかも、市民に隠して…
どういうこと?
今度は メカが襲いかかってくる。
どれも なんか 見覚えがあるのよね。
知ってるメカが 改造されてる…?
…いったい 誰に?
いままでの変異生命体は 前に倒した甲殻生物のせいと言えるかもしれない。でも…
改造メカに関しては、何者かの意思が働いてると考える他ない。
パイオニア1の誰か?
それとも…
こんな地下施設を建設するなんて聞いたことがない。
あたしの情報網でわからないんだから、よほど政府は
厳重に隠してたのよ。
この施設のこと。
政府の情報操作なんて、そりゃ 今に始まったことじゃないけど。
結局 あたしらは何も聞かされちゃいない。
…政府筋は あたしらハンターズにキビシイしなぁ。
利用するときは 利用するくせにさ。
おっと、あたしとしたことが グチってしまったわ。
失礼!
これで 三つ目。
複数で 何か意味を成すのかなぁ。
『光…影…対あり…存在…無限…律…印…』
いくつかの単語の意味は絞れても、文脈がつかめるまでには至らない。
くやしーっ!
遺跡の入り口
やっぱり あったんだ、この惑星に 先文明が。
もう これは 確実。
なんたって その遺跡が地下に埋まっていたんだから。
そして政府は、極秘に これを発掘・調査しようとしていたに 違いない。
少なくとも 我々がやってきたとき、この惑星上には知的生命体はいなかった。
ということは、先文明は何らかの理由により滅亡したということだ。
いったい この惑星に何があったというのだろう。
政府の研究機関も 例の文字を解読しようとしていたようだ。
ここに残ってた分析結果と、あたしの手持ちのデータを合わせてみる。
『光…影…対あって無く…存在…闇…無限…印を結ぶ…ムゥト ディッツ ポウム』
…?
…よく解らないけど、最後のは 呪文か何か?
印を結ぶというのは…何かの封印だろうか。
この扉らしきものが開かないのは封印されているから?
ムゥト ディッツ ポウムという呪文で?
それとも、 ムゥト ディッツ ポウムの三つの何かによって…?
そういえば ヘンなモニュメントが三つあった。
あれが 封印のキー?
遺跡
何なの、ここは!
なんで モンスターが出てくるの?
軍の戦った相手って こいつらなんだろうか。
全く未知のモンスター…
かなり 手強いわ。
すっごい 大きな穴…!
なにか すごいエネルギーが吹き出したような…
この下に いったい何があるっていうの…?!
この おびただしい残骸…
これはパイオニア1の軍の装備。
すでに 軍は この遺跡の中に 入ってたんだ!
そして 大規模な戦闘が行われた。
… … …
この様子じゃ、軍にも相当な被害があったに違いないわ。
窓から 遠くが見える…
かなり 大きい遺跡のようだ。
こんな文明が あったなんて…
この遺跡の中、あちこちに例の文字が刻まれている。
おかげで サンプルが増えて、あのモニュメントの文の内容が およそ 特定できたわ。
『光ありて 影を成し 対ありて 対無く
不在の在 かかる姿の 転生の宴 無限なる律 ここに印 結びなさん
ムゥト ディッツ ポウム』…
…こんなところかしら。
光と影…対になるその存在の どちらかが消滅した…
でも それは再び転生する…
そういうこと?
ゆっくり 意味を考えているヒマがないのが辛いわね。
すべてを解読できたわけじゃないけど、
あちこちにある 例の古代文字から断片的な情報は 手に入ったわ。
今 わかってることを まとめるから 良く聞いて。
どうやら このラグオルに やはり 先文明など無かったのよ。
今 あたしが立っているここは…
これは 遺跡なんかじゃない。
これは 宇宙船。
巨大な 宇宙船なの…!
あたしは 今、古代宇宙船の中にいる。
しかも これ、どうやら ただの宇宙船じゃない…
棺…!
何者かを封じ込めて、この惑星に 宇宙船ごと埋め込んだのよ。
でも、そんなことをしなきゃいけない存在って 何?
とにかく とんでもない化け物が この奥に眠ってる、きっと。
あたしらは、その禁断の扉を開いてしまった…
まだ 生きてる…
この船は まだ生きてる…!
もう どこかに逃げ出したい。
…そう思うけど、ふと気が付く。
帰るとこなんて きっと無いんだってことを。
あれから、パイオニア1とは まるで 連絡がつかない。
このメッセージだって、受け取る人なんて誰
も いないのかもしれない。
後から来る パイオニア2だって、この惑星が 危険と判れば きっと 降りてきやしない。
それでもパイオニア2の誰がが降りてきてくれるだろうか。
…それは わからない。
でも あたしは、これを残す。
これは 証なんだ。
あたしが、今 ここにいる…
そのものの 名はダークファルス…!
千年に一度蘇る 破壊神。
全宇宙の脅威。
…おそらく 遥か昔、ある文明圏に そいつが 現れた。
そして、勇者が 何とかして そいつを 倒した…
でも そいつは、完全に消滅したワケじゃない。
いつかきっと また復活する。
だから、巨大な宇宙船に封印して どこか遠い惑星に 捨てた。
それが このラグオル…
あたしらの移民は とんでもない星に、とんでもない時期に当たってしまった…
ダークファルスは闇の意識体であり、実体を持たない…
父さんに 会いたい。
…忙しい父さんが 昔 くれた赤いリング。
だんだんと お互い話さなくなっていったけど、それが 唯一の絆だった。
思えば 親不孝ばかりしてきたなぁ。
今頃 何してるんだろ。
取り込まれるな、とある。
闇の意識体は まず 実体を持とうとして…
優秀な素体となる生物を探す 習性がある…
もう 扉は開かれてしまった。
あたしたちが開いてしまった。
この惑星…いや、全宇宙を危険に陥れてしまったのかもしれない。
何とかしないと…
やるしかない。
今のうちに 倒さなければ!
ダークなんとかが優秀な素体を発見して完全復活する前に…!