なにかものを書いて公開するときのモデル問題というのは実にむずかしいと思う。
うちのブログ「本の山」によく登場するのはムー大陸さん。
原則的に無許可で書いている。
事前に見せて、これを公開してもいいかという承諾は取っていない。
わが友人は寛大だから、内心むかむかすることもあるだろうが、
いまのところ許してもらっている(と思っている)。
もちろん、ごくたまにだが、あれはやめてくれと改変を求められることもある。
そういう場合は、かならず要求に応えるようにしている(つもりだ)。
モデル問題といえば、「アジア漫遊記」にはすべてモデルが存在する。
失敗したと思ったのは満州の美女、石野梅子さん(仮名)。
これも書く直前にメールでモデルから許可をいちおうは得たつもりだった。
「思いっきり脚色して書きますよ」とメールに書いたら、
太っ腹にも(実際の彼女は痩身の美女だが)お許しいただいた。
そういうわけであの記事を書いたのだが、その後メールがない。
もしや怒っているのかもしれないと心配している。
これはちかぢか謝罪のメールを送るつもりだ。なんとか許してもらいたいと思っている。
では、自分がモデルにされるのはどうか。
これだけわたしは他人のことを書いている。
にもかかわらず、かりにモデルにされたらあまりいい気分はしない。
はっきり言うと不愉快だ。
こういう態度はきっとお叱りを受けるだろうが、これがわたしだと開き直るほかない。
したがってもし事前にモデルにしてもいいかと問われたら、勘弁してくださいと断わる。
むかしいちばんショックだったのは、あれは6年ほどまえのことだったか。
そのころわたしは家庭内の問題を、映画監督の原一男さんに相談していた。
おりしも原一男さんが教育テレビに出演する機会があった。
あろうことか、原さんは全国ネットのテレビでわたしのことをしゃべったのである。
むろん、映画監督は医者や弁護士ではないから守秘義務といったようなものはない。
それでも、ひどく傷ついたのは事実である。
と同時に、表現をするということは、こういうことであると教えられた思いもした。
かなり言いかたは悪いが、
他人からネタにされることがいやなら表現なんてしようと思うな、ということだ。
表現というのは、地獄へ猪突猛進するようなものなのである。
その覚悟がないのなら表現なんてしようと思うなよ。
鬼才・原一男から教わったことのひとつである。
だから、わたしは自身がモデルにされることを最終的には拒絶し得ない。
もとより、モデルにしてもいいかと言われたらお断りする。
それでもモデルにされてしまったら、もうどうしようもないと思うようにしている。
相手はわたしが不快になるとわかってやっているのである。
そうとうの覚悟があるということだ。殺されても文句は言えないだろう。
実際、場合によっては、殺傷沙汰を引き起こしてしまうかもしれない。
わたしは権利意識というのが希薄なので、
どうしても訴訟ではなく直接的暴力を選択する結果となる。
うちのブログは2ちゃんねるに嘲笑コメントとともに幾度も晒されている。
そのたびに傷つくが、だれかやったのかわからない。報復はあきらめるしかない。
対策として実行しているのは、見ないことである。
ネタにされていたら見ない。どうせ不愉快になるだけだから見ない。
せめてもの対策である。
今日いまからSさんという女性と池袋でお会いする。
このかたはミクシィでうちのブログを無断で紹介した。
お母さんに目の前で飛び降りられちゃったかわいそうなひととして
わたしが紹介されていた。
悪意はないのだろうが、
なにも日記のネタにすることはないだろうと無神経に苛立ったものである。
こういうときの対策はいつものとおりである。読まない。これに尽きる。
書かれるのは仕方がない。だが、こちらには読まない自由がある。
マイミク依頼を受けて承諾したが、わたしはいっさいSさんの日記を読まなかった。
大晦日に何通目かの長文メールが来た。
それはとうていわたしの理解を超えるものだった。
なにが書かれているのかよくわからないのである。
2ちゃんねるまでうちのブログを調べに行ったものらしい。
ストーカーされているようでぞっとした。
これが若い女性ならむしろうれしいのだが、Nさんは40をとうに超えるおばさん。
一児の未婚の母でもある。今現在は年下の恋人とうまくやっているようである。
Sさんはどういうひとなのか空恐ろしくなった。
ふつうなら無視するのであろう。ここがわたしのおかしいところなのだと思う。
会ってみようかな、と思うわけである。
もうメールではらちがあかない。会ってみたらどうだろうか。
Sさんはうちのブログのファンということである。過去ログも読みこんでくれている。
基本的なところでは悪意はないのだろう。なら、会ってみたらどうだろうか。
彼女は現在までに100人以上もの男性と関係を持ったという。
ともあれ、波乱万丈な人生が自慢の女性である。
いったいどんな顔をしているのだろう。わたしを前にしてどんなことをおっしゃるのか。
地雷だなと思ったものである。これは地雷だ。
踏んだら痛い目に遭う。しかし、命まで取られることがないのはわかっている。
だとしたら、その痛みを体感してみたい。
このへんはわたしが原一男の弟子たるゆえんである。
怖いものの存在を知る。すると、どれくらい怖いのか見たくてたまらなくなるのである。
今晩7時半に新宿で待ち合わせをしている。
当初の予定ではSさんの日記を読まないで行くつもりだった。
だが、それはさすがに失礼だろうといまさらながら急いでSさんのブログ、ミクシィを読んだ。
けっこうわたしのことがネタにされているので笑ってしまった。
送ったメールの無断公開までされているではないか。
ネタにされたのなら、それをさらにネタにするのは許されるのだろう。
わたしはSさんにどのようにネタにされていたか。
彼女のミクシィ日記から無断で公開する。
> それに加えて、彼は大変な人生を背負わされている。
> こんなところに軽々しく書いてはいけないような
> それこそ本当に、こころの中に真っ暗な地獄を無理やり抱えさせられた・・・
> まさに生き地獄のような・・・そんな人生。
生き地獄まで言うなって!
当初はここでわたしの不幸がネタにされていた。改変したようだ。
> でも、私は、どんなに(抱えた地獄のせいで)ひねくれてしまっていても、
> 貴方の書く文章がとても好きです。
ひねくれていて悪かったな! なら、こういう記事を書くことは想定していただろう。
> 私が好きなブロガーさんは、とても変人な上に
> 文章で食べて行く決意をなさっているので
> 他人の文章にもめちゃくちゃ厳しいんですよ・・・
そんな変人じゃないんだけどな。会ったひとはみんなあまりにもふつうだと驚く。
> ・・・返事きました。
> 無断引用↓
> >文章がちょっといいからといって、だまされないでください。
> >盲目的とも思われる礼賛が、正直申しましてこわいのです。
> >あのような賞賛は容易に正反対に変わりうると思うのです。
> ・・・・ドン引きされてしまいました・・・。゜(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
> まぁしょうがないっすね。今自分で書いたメール読んでも
> ちょっとキモイもん('∀`)
40過ぎたら無断引用はともかく顔文字はやめようぜ!
> とにかく斜にかまえてる。
> 仕方ないんでしょうね・・・。彼は心に重い鉛を抱えている人。
> いついかなるときも、その全てが目の前から離れることはない・・・・・。
> だから大酒を飲む。
おいおい、おれはちょっとロマンチストなだけで、根は陽気なあんちゃんなんだがな。
さて、いまから新宿へ向かおう。果たしてSさんはこの記事を読んでいるか(笑)。
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