ホーム > きょうの社説


2008年1月7日

◎2年目のBCリーグ ふるさとの「スター軍団」に

 プロ野球独立リーグ・BCリーグは、二年目を迎える今年が正念場だ。スタート時の熱 気が冷めるころで、福井と群馬が新規参入し、手ごわいライバルも増える。石川ミリオンスターズの連覇の道は、決して楽ではなかろうが、地元の声援を力に奮戦し、きらりと光る「ふるさとのスター軍団」の地位を確立してほしい。

 BCリーグをはじめ、日本各地の独立リーグは、ともすれば「プロ予備軍」のように見 られがちだが、私たちはそうは思わない。米国のマイナーリーグを例に取れば、大リーグの下部組織ながら独立採算制で、地元企業の広告が球場にひしめき、試合途中でも、球団が企画したイベントが球場のあちこちで開かれる。住民も、大リーグの人気チームより、わが町のチームへの愛着がはるかに強いと言われる。石川ミリオンスターズの理想像は、そんな姿だと思うのである。

 規模は小さくとも、それぞれの地域が情熱を持って選手をサポートし、その土地に根付 いた野球文化をはぐくむこと、いわばスポーツにおける地方分権を目指したい。

 BCリーグは、昨季の平均入場者が一試合平均約千八百人となった。初年度が約千人だ った四国アイランドリーグと比べると順調なスタートとなったが、四国は二年目に入場者が約25%も減り、ようやく昨季に観客数を盛り返した。二年目に前年超えの実績を残すことが、地元定着を証明するカギとなろう。

 選手らは、一年目から地域に出向いて野球教室を開き、地震の被災地を支援する募金活 動や、スポーツ現場での自動体外式除細動器の普及に取り組んできた。試合に勝つことだけでなく、「スポーツ市民」としての地域貢献がファン拡大の下支えになる。ファンも出来る限り球場へ足を運び、選手を盛り上げたい。

 ただ、選手たちの生活基盤はまだまだ十分とは言えず、地元企業の中にはオフシーズン の仕事先を提供するところも出てきてはいるが、退団後の不安も抱えている。四国リーグでは、野球経験者の採用に前向きな企業と提携し、退団者の就職をあっせんしている。選手も地域の一員という意識を醸成する意味で、こうした試みも一案であろう。

◎台湾定期便元年 互いに知る努力をもっと

 今年六月に予定される小松―台湾定期便の開設に向けて、私たちがまずしておきたいの は、台湾からの観光客の増加を目当てにソロバンをはじくことではなく、彼の地のことをもっと深く知ることではないか。

 学校では、台湾についてほとんど教えられる機会がなく、台湾に関する知識や関心が低 い人が多いのも無理からぬ面がある。だが、私たちのふるさとには、日本統治時代の台湾でダム建設など水利事業に多大の貢献をした八田與一氏(金沢市出身)との深い縁がある。今なお台湾の人々に慕われている八田氏の存在は石川県にとって大きな財産だろう。

 八田氏の足跡は、台湾の歴史の一こまを学ぶ格好の「教材」とも言える。昨年は八田氏 の生涯を描いた舞台が県内で上演され、今夏には同じく八田氏を主人公にしたアニメが公開される。それを生かして台湾との絆をさらに太くしていきたい。

 台湾のビジネス誌が一昨年行った世論調査では「移住したい国」「旅行したい国」の一 番はいずれも日本だったという。親日の人々の多さをあらためて裏付ける調査結果であり、実際、石川、富山を訪れる台湾の観光客は年々増加している。例えば昨年、兼六園を訪れた外国人観光客の六割以上は台湾の人たちで占められる。定期便就航でそうした動きがさらに強まることになろう。

 しかし、台湾の人々が日本について知っているほどの知識を、私たちが台湾に対して持 っているとは思えない。目先の観光利益を追う前に、相手を知る努力をしなければ、定期便も長続きしないのではないか。

 たとえば、台湾では今年三月、陳水扁総統の後継を選ぶ選挙があり、中国からの独立志 向の強い候補と中国寄りの候補が争っている。同時に、台湾名での国連加盟の賛否を問う住民投票も予定されており、中国政府が神経をとがらせている。

 こうした台湾の現実を私たちはあまりよく知らない。定期便開設後も、こんな状態が続 いたら、いくら観光を促進しても底の浅い友好関係しか築けない。それぞれの地域のことを互いに学び合う機運を少しずつ高めていくことができれば、おのずと行き交う人も増え、定期便の安定、拡大につながると考えたい。


ホームへ