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2008年1月7日

 昭和天皇が最後に北陸を訪れたのは、昭和五十八(一九八三)年の全国植樹祭の時だった。短い日程の中、宿泊先の七尾市のホテルで石川県関係者に、こう質問された。「最近の結核患者はどうなっているのか」

繊維業が盛んな石川県は、劣悪な労働環境から、長らく日本有数の結核多発県であった。もちろん昭和天皇が訪れた当時、そんな汚名は既に昔話になっていたのだが、かつて耳にした患者の状況が何十年も頭に残っていたために出た言葉と思われる

取材した先輩記者は、一地方の人々の体を気遣う昭和天皇の心根の温かさに触れ、胸が熱くなったと話していた。昭和天皇の命日である七日は、昭和の命日でもある。その六十四年間で最も日本人の記憶に残る年と言えば、終戦を境に、終わりと始まりが交錯した昭和二十年だろう

昭和からバトンを受けた平成の二十年目が、きょうから本格的に始動し、国会では薬害肝炎患者を一律救済する法案が提出される。ケースによって違いはあれ、政治家や役所が、国民の痛みに鈍感であってはなるまい

激動の予感も漂う中で「昭和」から託された、まごころのバトンも受け継ぎたい。


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