ドブネズミみたいに美しくなりたい―。ブルーハーツが歌った「リンダリンダ」に若者たちが揺さぶられたのは、もう20年以上前、バブルまっただ中のころだった。子[ね]年を迎えてふと思い出した。
ネズミに好意的な現代人は、遊園地の大ネズミ好きを除けばそうはいまい。大事な穀物を食いあさるし、病原菌を広めることもある。ドブネズミはなおさらだ。耳をかじられたドラえもんならずとも、嫌いな人は少なくない。
だが昔話などに出てくるネズミは、さほど嫌われ者ではない。むしろ財を呼ぶとして好まれる存在だ。大黒様の使いになってみたり、おむすびをやった礼に小判をくれたりする。
ネズミが今より身近な動物だったのもあるだろうが、そもそも本当に貧しく食うに困っている家にはネズミは寄ってこない。たとえ穀物をかすめ取ろうと、ネズミがいるのは豊かな証拠。昔の人はそう考えたのではないだろうか。
「リンダリンダ」も、そんな発想に似ていた。外見は小汚いドブネズミにも、家族を守る優しさやぬくもりがある。そんな面に着目したから、「写真には写らない美しさがあるから」と歌えたのではないか。要は考え方だろう。
子年の冒頭、原油相場が史上初めて1バレル=100ドルを超えた。今年もガソリン高騰が続きそうだが、これもお先真っ暗に思うことはない。ガソリン消費を控える習慣が付けば、何よりの温暖化対策になる。高いといっても、第2次石油危機の1982年には1リットル当たり170円を超えていた。そんな時期だって私たちは乗り越えてきた。
行き詰まったと感じたら、ドブネズミを思い出すといい。元気が出る。