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毎日新聞世論調査:衆院選、日本の岐路/温暖化、世界の試練(その2止)

 ◆世代・職業による意識の差

 ◇「強い危機感」33%、「人間が克服」21%どまり

 アル・ゴア前米副大統領らがノーベル平和賞を受賞し、地球温暖化防止策を話し合う気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)が12月に開かれるなど、昨年は温暖化に関するさまざまな出来事があった。温暖化問題への関心度を男女別にみると、男性は92%が「関心がある」と回答したのに対し、女性は88%で4ポイント低かった。職業別では、経営者・管理職と自営業はともに97%が「関心がある」と答え、温暖化がもたらす経営や経済への影響に不安を募らせていることをうかがわせている。

 また、温暖化に対する考え方を聞いたところ、「漠然と不安を感じている」が38%、「強い危機感を持っている」が33%と続いた。「人間の力で克服できると思う」は21%にとどまり、解決が困難と受け止めている人が多かった。「自然現象であり、気にする必要はない」はわずか2%で、温暖化と人間活動が無関係とする懐疑論は極めて少数派になっている。

 年代別で「強い危機感を持っている」と回答した人の割合は60代が38%、70代以上が36%だったのに対し、30代で27%、20代で30%と、高齢層で危機意識が高い傾向がある。また、「人間の力で克服できると思う」については、60代と70代以上がともに26%を占めたが、20代では7%にとどまり、絶望感が強いことを示唆している。

 職業別では学生の73%が「漠然と不安を感じている」と答え、30%から40%台を推移している他業種に比べると温暖化への危機感の低さが目立つ。

 国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は、温暖化が水不足や暴風雨、生態系などさまざまな分野に影響を及ぼすと指摘した。

 どのような影響に危機感をもつか聞いたところ、「水や食糧の不足」が29%と最も高く、「大雨など異常気象」の27%、「海水面の上昇」の16%と続き、生活に直結する要素で不安が強かった。

 「水や食糧の不足」は特に60代(32%)、70代以上(36%)で危機感の高さが目立った。職業別にみると、学生では「動物や植物の絶滅」が37%と最も高かったのに対し、経営者・管理職は「水や食糧の不足」の43%で、立場の違いが意識の違いにもつながっている。

 ◆排出削減のために

 ◇冷暖房、レジ袋…「手近な行動」徐々に

 温暖化防止のために、自分がどのような行動をしているかについてもたずねた。

 選択肢のうち「特に何もしていない」を除く5項目を温室効果ガス削減効果の大きい順に並べると(1)「乗用車の使用をひかえる」(2)「省エネ家電を購入する」(3)「冷暖房を使いすぎない」(4)「レジ袋をもらわない」(5)「テレビや照明をこまめに消す」--となる。一方、実際に取り組んでいることは「冷暖房」(32%)「テレビや照明」(22%)「レジ袋」(16%)が多く、効果の大きさよりも手近にできることを優先させているようだ。

 男女別で見ると、男性は「冷暖房」(29%)「テレビや照明」(24%)に続いて「乗用車」(13%)をあげ、「何もしていない」(10%)が続く。一方女性は「冷暖房」(34%)「テレビや照明」(21%)「レジ袋」(20%)の順で、「何もしていない」は4%しかなかった。

 温暖化問題への関心や考え方と自らの行動についての関連を見ると、「温暖化問題に関心はない」層では「何もしていない」という回答が34%で最も多かった。また、「温暖化は自然現象であり気にする必要はない」と考えている層も「何もしていない」が45%で突出していた。

 環境省によると環境税とは、電気・ガスやガソリンなどのエネルギーに課税することで、CO2の排出量に応じた負担をする仕組みだ。ガソリンや電気などの価格が上がる一方、エネルギー消費の抑制や税収による環境対策などで、排出抑制と対策費捻出(ねんしゅつ)の両方の効果が見込まれる。導入された場合、1世帯あたり年間2100円の負担増になるという。

 導入についての考え方を聞いたところ、男性は「賛成」が51%で、特に40代男性は57%と最も高かった。これに対し、女性は「賛成」が43%で男性を8ポイント下回った。年齢別では、40代と50代はそれぞれ51%が「賛成」。温暖化に対する考え方と環境税への賛否を見ると、温暖化に「強い危機感を持っている」層は60%が環境税に「賛成」だった。一方「漠然と不安を感じている」層は「反対」が50%、「自然現象であり気にする必要はない」とする層でも「反対」が43%で賛成を上回った。職業別では、「反対」が自営業で58%、農林漁業で76%で、事業への影響を感じているようだ。

 ◆求められる「覚悟」

 ◇生活レベル「下げられる」…世代間で温度差も

 京都議定書で定められた、温室効果ガスの90年度比6%削減義務に対し、05年度は7・7%増で、現状では達成は厳しい。義務を守るために「生活レベルを下げることができる」と回答した人を年代別にみると、40代、50代、60代で「できる」がそれぞれ56%、54%、54%と半数を超えた。逆に20代、30代は「できない」が「できる」を8~2ポイント上回った。さらに男女別でみると「できる」が最も少ないのは20代女性で34%、次いで70代以上男性の37%だ。

 二酸化炭素(CO2)排出量でみると、90年度比6%減は80年代後半に相当する。日本はハイリゲンダム・サミットで「50年に世界の排出量を半減」と提唱した。日本で排出量が半分の時代は、60年代後半だ。実際には第1次石油ショック(73年)当時よりエネルギー効率が35%改善しているため、仮に半減しても単純に当時の生活に戻るわけではない。しかし、大幅削減は国民にも相当の「覚悟」を求めることになる。

 議定書を守るため日本がすべきこととして、41%の人が「風力発電や太陽光発電に補助金」と回答。次いでCO2を吸収する「森林整備への補助金」が29%だったが、自民党支持者では「風力・太陽光」(36%)と「森林整備」(35%)がほぼ並んだ。一方、「経済成長を犠牲にしても排出を抑制する」との回答は14%で、逆に「犠牲を払ってまで達成する必要はない」は4%に過ぎなかった。

 原子力発電は、発電の際にCO2をほとんど排出しない。だが、増設については賛成が39%にとどまり、反対が50%。支持政党別では、自民、公明支持者で賛成が反対を6~5ポイント上回った一方、民主支持者は反対が半数以上を占めた。

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 ◇事態の深刻さ、もっと説明を--中央環境審議会臨時委員・筑紫みずえさん(58)の話

 環境への対応が優れている企業への投資「エコファンド」の導入を金融機関に促そうと、98年に投資顧問会社「グッドバンカー」を設立した。あれから10年が経過するが、市民の行動が変わった実感はない。それは、日本の温室効果ガス排出量が産業部門より民生部門での増加率が高いことでも示されており、今回の世論調査結果でも裏付けられた。

 つまり、温暖化への関心は高いが、「強い危機感」というより「漠然とした不安」が目立つ。危機感がなければ行動しない。事態の深刻さを丁寧に説明する姿勢が、メディアや行政に不足している。

 また、「今の生活レベルを下げる」ことについて、20代は「できない」が「できる」を上回った。他世代と対照的な回答だ。就職先が見つからない、見つけても生活に必要な収入が得られないワーキングプアと呼ばれる若者がいる。これ以上、生活の質を落としたくないのだ。「金持ち」「物質的な豊かさ」を勝者の象徴のように受け止める風潮から脱し、精神的な豊かさに価値観を見いだすことが、温暖化防止には重要だ。

 一方、経営者・管理職の危機意識の高さが浮き彫りになった。リーダーは、社会に製品やサービスを提供している責任感と先見性を持っている。願わくば、その見識がライフスタイルの変化という形で市民社会に広がるよう、一層の努力を求めたい。

 ◇脱温暖化社会、国が提示せよ--国立環境研究所参与・西岡秀三さん(68)の話

 個人的には、温暖化対策で生活レベルを下げたり、経済成長を犠牲にする必要はないと思っている。むしろ(温室効果ガス排出を大幅に削減した)低炭素社会に向けて、新たなビジネスチャンスが広がっている。

 問題は、多くの人が温暖化や対策の行方に漠然とした不安を感じ、特に若い世代で生活を変えることに拒否感があることだ。これをぬぐい去るには、政府や研究者が、地球温暖化は人間の力で克服可能であり、そのためにはどのような道筋を歩むべきなのか、ビジョンを示すことが大切だ。「温室効果ガスの排出削減=経済的に損」という考えではなく、脱温暖化社会に希望を持たせなければならない。

 一方で今回の調査では、国民ができることから行動を始めている様子もうかがえる。レジ袋をもらわない人が16%もいることに驚いた。環境税への賛否も、温暖化対策に何らかの費用を払うことが、国民の間に受け入れられつつあることを示しているのではないか。

 日本のやるべきこととして、技術面を挙げる人が多かった。だが、同時に社会システムの変革を成し遂げることが重要だ。例えば、自家用車に頼るのではなく公共交通を充実し、便利さや快適さを維持する。そうした脱温暖化社会のライフスタイルを、国は早急に提示する必要がある。

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 ◇質問と回答--地球温暖化関連

 ◆地球温暖化防止策を話し合う国連の会議が12月3日から、インドネシアのバリ島で開かれました。地球温暖化問題に関心がありますか、ありませんか。

                     全体 男性 女性

関心がある                89 92 88

関心はない                 4  5  4

 ◆地球温暖化に対し、どのような考えを持っていますか。

強い危機感を持っている          33 34 31

漠然と不安を感じている          38 37 39

人間の力で克服できると思う        21 23 19

自然現象であり、気にする必要はない     2  2  2

 ◆温暖化によりさまざまな影響が出ると言われています。特に不安に思うことは何ですか。

真夏の猛暑                 7  7  8

大雨など異常気象             27 26 28

水や食糧の不足              29 31 27

海水面の上昇               16 19 13

動物や植物の絶滅             12 11 12

 ◆温暖化防止のために行っていることはありますか。最も取り組んでいることを、一つだけ選んでください。

冷暖房を使いすぎない           32 29 34

テレビや照明をこまめに消す        22 24 21

乗用車の使用をひかえる           9 13  6

レジ袋をもらわない            16 10 20

省エネ家電を購入する            7  9  5

特に何もしていない             7 10  4

 ◆温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑制し、対策の費用とするために環境税を導入しようという議論があります。環境税導入に賛成ですか。

賛成                   47 51 43

反対                   42 41 42

 ◆温室効果ガスの排出削減目標を定めた京都議定書で、日本は1990年の時点より6%の削減を義務づけられています。目標達成には、国民の生活レベルを下げる必要があるとの意見がありますが、今の生活レベルを下げることができますか。

できる                  49 51 48

できない                 41 42 40

 ◆京都議定書の温室効果ガス削減目標を達成するため、日本はどうすべきだと思いますか。

経済成長を犠牲にしても、排出を抑制する  14 14 13

風力発電や太陽光発電に補助金を出す    41 44 39

森林を整備するための補助金を出す     29 28 29

外国から排出権を購入する          3  3  2

犠牲を払ってまで目標を達成する必要はない  4  4  4

 ◆温暖化防止には原子力発電が有効と言われています。原子力発電の増設に賛成ですか。

賛成                   39 50 29

反対                   50 43 56

……………………………………………………

 ◇調査の方法

 12月15、16日の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で調査し、有権者1528人から回答を得た。

毎日新聞 2008年1月6日 東京朝刊

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