土地所有権のないまま在日コリアンが定住してきた京都府宇治市のウトロ地区。住民がこの土地を買い取る資金の支援などを含む韓国政府の予算案が28日にも成立の見通しとなった。その背景や日韓関係への影響などについて、ともに与党系の「ウトロ問題を考える国会議員の会」(17人)共同代表、李光〓(イグァンチョル)氏と、統一外交通商委員長などを歴任し予算の増額にも尽力した金元雄(キムウォンウン)氏に聞いた。【新宮達】
◇60年放置、恥ずかしい--李光〓
05年4月にウトロを初めて訪問した。古里を失った在外同胞を60年間放置していたことに申し訳なさよりも恥ずかしさを感じた。上水道も満足にない劣悪な環境や彼らの暮らしぶりを考えると、生活の保障など何かをすべきことに価値と義務があると感じた。ウトロは韓日関係の過去と現在、将来を示すものだ。人間らしい生活を送れていないのは、日本政府や宇治市などに責任がある。ウトロの解決で、韓日が本当の意味での友達になれるのではないか。
盧武鉉(ノムヒョン)政権だから予算を提案できたというのは誤った見方。外交通商部は日本政府に対する外交的な配慮から渋ってはいたが、戦後補償を問うよりも、住民の生活保護の観点から動いたのだ。
◇生存権の回復に主眼--金元雄
「ウトロ問題を考える国会議員の会」などと連携しながら、政府の誠意ある態度が必要だと主張してきた。住民から直接話を聞くなどして、苦しい状況を知ったからだ。支援は生存権の回復に主眼を置いたものといえる。
植民地支配や強制連行などの歴史的観点からみれば、原則としては日本政府が対応すべき問題だ。65年の韓日基本条約はウトロや従軍慰安婦問題、サハリンなどに取り残された同胞の問題などを深く議論することなく締結され、非常に残念。今回は、人道的保護の観点から予算を決定した。
国交省と府、宇治市が協議会を設置するなど、日本の動きは肯定的に評価できる。韓日政府は互いの役割を認識し、建設的な方向で議論を進めてほしい。
毎日新聞 2007年12月28日 大阪夕刊