地方の財政状況が厳しさを増す中、自治体のお荷物ともなりかねない「ハコモノ」。ところが最近、このハコモノにコスプレ愛好家から注目が集まっている。独特の世界を表現した建築や空間が、コスプレ写真の背景に適しているためだ。イベント開催も盛んで、地元経済への波及効果も期待されている。【田辺佑介】
◇「雰囲気ある」撮影人気
鳥取県湯梨浜町の中国庭園「燕趙(えんちょう)園」は95年、中国・河北省との友好のシンボルとして県が建設した。皇帝の庭園を模した建物や、中国の作家による彫刻などが並ぶ。昨年11月の「第3回中華コスプレ日本大会」には、三国志や西遊記などのキャラクターに扮(ふん)した約150人が参加。ほとんどが県外からで、地元の東郷温泉に宿泊する人も多かった。中華コスプレ常連の会社員、新川ゆき子さん=東京都=は「雰囲気のある建物や景色の中で、キャラになり切って楽しめるのが魅力」と話す。
園の06年度の入場者は、ピーク時の半分以下の約15万人。園は「地元振興や入場者増につなげたい。全国的に情報発信できるのは大きい」という。
東京都荒川区の区立「あらかわ遊園」は、日本庭園や洋風の建物などが撮影スポットとして人気を呼び、毎月のようにコスプレ愛好家のイベントが開かれている。南アルプスを望む山梨県北杜市の「県立フラワーセンター・ハイジの村」でも昨年12月1日、東京・秋葉原からの直行バスなどで訪れた約200人が、ヨーロッパ・アルプスを思わせる風景の中、写真撮影やコンテストを満喫した。
イベントによっては露出が過剰な衣装を禁止するなど、一般入場者にも配慮する。コスプレ情報誌「CosPick」の杉森浩一さんは「特徴的なハコモノは愛好家にとって魅力。正確な数は把握していないが、開催情報は確実に増えてきている」と話している。
■ことば
◇コスプレ
「コスチュームプレー」の略で、漫画やアニメなどの登場人物の衣装や髪形をまねて変装すること。1990年代中ごろから単独イベントが開催されるようになったが、風紀上の問題なども指摘されている。「○○が好き」「○○に興奮する」などを意味する「萌(も)え~」は東京・秋葉原のメイドカフェから広まり、05年の新語・流行語のトップ10に選ばれた。
2008年1月5日