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明日の私:認知症サポーター/上 北海道本別町 住民の手で見守り

 国の認知症サポーター100万人計画が始まって3年。高齢化が進展し、認知症高齢者が確実に増えるなかで、現在、全市町村の3分の1にあたる623の自治体がサポーター養成に取り組み、効果を上げている。注目される取り組みを2回に分け紹介する。【有田浩子】

 ◇現在500人、倍増目指す--もの忘れ、怖くない町に

 北海道東部の本別町。畑作中心の内陸の町で、夏と冬の寒暖差は60度にもなる。人口約9000人で、高齢化率は30%を超える。

 認知症サポーターの新津(にいつ)直子さん(43)が昨年12月、町の総合ケアセンターから車で約5分の男性(90)宅に着くと、男性は自分の部屋に招き入れた。ベッドサイドには新聞や読みかけの文庫本があった。

 日ごろ、町内のグループホームで働く新津さんは月2回、男性宅を訪問する。もっぱら聞き役だ。先の大戦中の旧ソ連国境での軍隊経験や生まれ故郷の話など繰り返しが多いものの、表情は穏やか。「(新津さんに)会えるのを楽しみにしています」と男性は話す。

 男性が認知症と診断されたのは3年前。同居の息子家族が、男性の話すことが時に理解できなくなり、要介護1に認定された。通常のデイサービスを週3回の他、町の「やすらぎ支援事業」に登録、新津さんら有償ボランティア(利用料1時間100円)の見守りを受けるようになった。症状は以来、安定しているという。

     *

 本別町の取り組みは介護保険導入前の99年にさかのぼる。それまで、認知症が疑われる高齢者の家族から相談を受けても、入院か施設入所を勧める程度。自宅で過ごす認知症の高齢者や家族を支える手立ては確立しておらず、同年、実態調査を実施した。その結果、在宅の要介護高齢者で認知症または認知症と思われる行為がある高齢者は4割に上ることが分かった。

 翌年、町は在宅介護支援センターに「もの忘れなんでも相談室」を設置。02年には、認知症の家族支援の一環として、やすらぎ支援事業を始めた。こうした取り組みが土台となり、05年に国のサポーター計画のモデル自治体に選ばれた。サポーターは約500人。町民の18人に1人がサポーターだ。

     *

 「認知症については何も知らなかった。講習を受けて、認知症には予防も治療もあるんだと初めて知り、これは仲間に知らせないと、と思った」

 廃止された「ふるさと銀河線」の本別駅の山側に位置する山手町地区。05年秋、地元企業を退職してまもない白戸洋さん(63)は、サポーターの先生役となるキャラバン・メイトの養成講座を受けた。

 一気にのめり込み、その1カ月後には早くも、自治会福祉部11人のサポーター養成の講師を務めた。その後も、自治会の65歳以上の高齢者を対象にした認知症講演や、保健所と共催で予防講座の開催に奔走した。

 かたい内容ばかりでは参加者は限られ、継続も難しくなる。そこで、クラブ一本で高齢者も手軽に楽しめるパークゴルフや、バーベキューの料理教室を講座とセットにするなどの趣向を凝らした。対象の高齢者は約40人だが、「最近になって出てきてくれた人もいる」といい、閉じこもりがちな高齢者への働きかけが実を結びつつある。白戸さんは「これからは認知症の人を出さないことが目標」と語る。

 要介護認定で、「要支援」は昨年3月までの6年間で、全国では2・5倍に増えたが、本別町は1・7倍にとどまる。町総合ケアセンターの飯山明美所長補佐は「サポーターを倍増させるのが次のステップ。もの忘れしても安心して散歩できるまちにしたい」と話す。=<下>は12日に掲載

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 ◇認知症サポーター100万人計画

 認知症の高齢者が2025年に現在の倍の323万人になるとの予測を見据え、国が05年度から5カ年計画でスタートさせた。養成するのはサポーターと、サポーターの講師役を務めるキャラバン・メイト。その数は07年9月末現在で約27万人(うちメイト約1万4000人)。養成講座はサポーターが90分、メイトが6時間。修了者には、認知症支援の意思を示すオレンジ色のブレスレットが手渡される。約6割が女性で主力は60代。都道府県では岩手が最も多い。

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 ■本別町の取り組み

99年 介護実態調査を実施

00年 「もの忘れなんでも相談室」を在宅介護支援センターに開設

01年 町国保病院に「認知症コーディネーター」(看護師など)配置

02年 介護者家族を支援する「認知症高齢者家族やすらぎ支援事業」スタート

03年 国保病院に「もの忘れ外来」開設

04年 認知症予防教室の開催地区拡大

05年 認知症サポーター養成のモデル自治体に「もの忘れ地域ネットワーク」を構築するため、社会福祉協議会と連携

06年 介護保険推進全国サミットの開催

    徘徊(はいかい)の恐れのある高齢者等を事前に登録してもらい、行方不明時に関係機関が捜索にあたる「SOSネットワークシステム」を構築

毎日新聞 2008年1月5日 東京朝刊

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