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がん検診50%目標、困難 69市区「達成可能」ゼロ

2008年01月06日

 5年以内に受診率を50%以上にすると国が目標設定したがん検診について、達成可能と考えている自治体が、道府県庁所在地の46市と東京23区にはないことが朝日新聞が実施したアンケートでわかった。予算や設備の不足、関心の低さを訴える自治体が多い。がん死亡率を10年間で2割減らすという国の計画のもとになる検診体制のもろさが浮かび上がった。

 アンケートは昨年11月、がん検診の実施主体である全国市区町村のうち69市区に送付、回答を得た。胃、大腸、肺、乳房、子宮のがん検診について、国のがん対策推進基本計画で目標とされた受診率が達成できるかの見通しと、06年度の実施状況を聞いた。

 回答では、受診率50%が「達成可能」と答えた市区はゼロ。72%にあたる50市区が「不可能」とした。大分市だけは「肺がん検診のみ可能」と記述したが、その他の18市区は「現時点では判断不能」「わからない」などと答えた。

 なぜ目標が達成できないのか。がん検診の課題(複数回答)について聞いたところ、「住民の関心が低い」が67%と最も多く、「予算が足りない」(54%)、「機材が足りない」(43%)と続く。

 検診費用に国からの補助金はなく、市区町村と受診者が負担する。大阪市は、達成が困難な理由を「受診率を上げれば財政が窮迫するという矛盾がある」と答えた。

 乳がん検診は、乳房X線撮影(マンモグラフィー)の不足が響く。東京都千代田区は「機材が足りない」などとし、今年度の乳がん検診を先着で年600人に制限した。

 アンケートの回答をもとに、69市区の検診を06年度中に受けた人が、検診対象年齢の住民人口に占める割合を集計したところ、胃がん検診は男性3.6%、女性5.5%、大腸がん検診は男性6.3%、女性9.9%だった。

 がん検診は市区町村が行うほか、企業や個人が自主的に実施することもある。だが厚生労働省は、会社員が勤務先で受診する数などを把握していない。内閣府世論調査(07年)から推定すると、自治体検診の受診者数とほぼ同じ人数が、職場で受診しているとみられる。

 欧米では乳がん検診の受診率は80〜60%。検診推進などが功を奏し、乳がん死亡率は90年代から下降。日本では上昇傾向が続いている。

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 〈がん対策推進基本計画〉がん対策基本法にもとづき昨年6月、閣議決定。がん死亡率(高齢化による年齢構成を調整)の「今後10年間で20%減少」と「がん患者・家族の苦痛の軽減、療養生活の質の維持向上」を全体目標に掲げた。早期発見で死亡率を下げるため、がん検診の受診率の目標を「5年以内に50%以上」に設定する。がん検診は、厚生労働省指針にもとづき市区町村が実施するが、法的義務はないため、具体的な実施方法は自治体が決める。

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