2007年12月14日 町田徹(ジャーナリスト)
「ネットの自由」が危ない!霞が関に続いて自民党も規制に名乗り
経産省・総務省は「迷惑メール」規制
これに関連して、以前にも、このコラムで触れた通り、経済産業省と総務省が「迷惑メール」に対する規制強化を準備中だ。
このうち、総務省は10月末に、「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」(座長:新美育文 明治大学法学部教授)の中間報告案を公表した。
現行の迷惑メール法は、受信者の同意を得ずに電子メールを送信する際に、「未承諾広告」とのことわり書きや、送信者の氏名・名称、住所、電話番号などの表示を義務付けているほか、受信拒否を通知した人に対して、それ以降、メールの送信を禁止する規定を持つ。しかし、件の中間報告は「全体としての迷惑メールの増加が続いている」ことなどを根拠に、現行方式の「有効性には問題がある」と断定。広告などのメールの送信を、予め受信者の承諾を得た場合に限定することを検討すべきだと結論付けた。その根拠として、この手法が、オランダを中心に欧州諸国で広く採用されていることをあげている。
一方、経済産業省も、通信販売や訪問販売、電話勧誘販売を規制する特定商取引法の改正によって、総務省とよく似た規制強化を目論んでいる。この動きは、「国民・消費者の保護」を高く掲げて、英会話大手のNOVAを営業停止処分にした措置が大成功だったと自画自賛する同省内部のムードを反映して打ち出された政策という。
インターネットのプロトコルの源流は、米軍の軍事技術だ。しかし、その一方で、研究機関などによる「草の根」的なネットワークの連結・拡大が、国境をまたぐ今日の壮大な通信網を育んできた。その中で、言論や表現の自由も、自然発生的に保証されてきた歴史がある。
ところが、インターネットが人々の生活や社会に大きな影響を及ぼす時代を迎え、草創期以来の無政府状態を危惧するムードが蔓延。これを見透かしたように、政治家や官僚が介入の野望をむき出しにし始めた。だが、市場・自由主義と同等、あるいは、それ以上の失敗を、政府・規制主義が犯さない保証はどこにもない。
- 町田徹(ジャーナリスト)
- 1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。
硬骨の経済ジャーナリスト・町田徹が、経済界の暗部や事件を鋭く斬る週刊コラム。独自の取材網を駆使したスクープ記事に期待!
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