2007年12月14日 町田徹(ジャーナリスト)
「ネットの自由」が危ない!霞が関に続いて自民党も規制に名乗り
肝心の有害情報の具体的な基準について、メモには雲を掴むような曖昧なことしか書かれていない。が、委員会での口頭説明によると、新法案の中身は、この委員会で同日、法案の骨子が了解された「青少年の健全な成長を阻害する恐れのある図書類の規制に関する法律案」と多くの点が共通する見通し。
ここで懸念すべきなのが、「図書」の規正法で、規制対象となる有害図書の認定を、政府・内閣府に設置する「青少年健全育成推進委員会」(仮称)が担当するとしている点である。その判断基準として、青少年の性的感情を著しく刺激するものや残虐性を助長するもの、自殺・犯罪を誘発する、心身の健康を害する行為を誘発するものの4つを具体的に列挙しているものの、これらの基準が、政府が恣意的に表現の自由に介入する口実に使われるリスクは大きい。そして、この規定が「ネットの自由」の制限・規制にも準用される懸念が強いのだ。
警察庁は「出会い系」の届け出制を狙う
“秘密主義”で議論が進められており、ほとんど情報が公開されていないものの、自民党とよく似た問題意識を持っていたとされるのが警察庁だ。同庁は、すでに10月末ごろに審議会を設置し、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」の改正を目指していた。
同庁は、現行法が義務付けている利用者の年齢確認や、少年少女による利用の排除が十分に達成できていないとの問題意識を持っており、出会い系サイト業者に新たに「届け出制」を導入したうえで、行政処分の道を開いたり、様々な是正命令を発する法的根拠を設けることを狙っていたとされる。
警察庁や自民党だけでなく、野党の民主党などにも、出会い系サイトを通じて、18歳未満の少年少女が事件に巻き込まれるのを予防する必要があるとの意見は広く存在する。本来、売春防止法など既存の法律で対処すべき問題とも考えられるが、政治家の情緒的な規制強化論や、権限拡大を狙う官僚の周到な動きもあり、そうした冷静な意見は黙殺されかねない状況となっている。
- 町田徹(ジャーナリスト)
1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。
硬骨の経済ジャーナリスト・町田徹が、経済界の暗部や事件を鋭く斬る週刊コラム。独自の取材網を駆使したスクープ記事に期待!
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