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社説:地域医療の危機 資源活用に財政出動を

 本県の地域医療が深刻な状況に陥っている。この1、2年、地方の病院で産科の休診や出産取り扱いの中止、精神科の入院の取りやめ、さらには救急指定返上などが相次いだ。いずれも医師不足によるものだが、対策に本腰を入れなければ地域医療が崩壊しかねない。

 医師不足は、国が義務付けた臨床研修制度(2年間)がきっかけとなった。医師派遣を担っていた大学病院に残る人が極端に少なくなり、人手不足に陥った大学が地方病院から医師を引き揚げているためだ。全国が同様の状況にあり、本県の場合は県北と県南で深刻化している。

 このような事態を受け政府は2008年度予算案で、緊急医師確保対策に前年度当初比75%増の総額161億円を計上した。具体的には▽医師派遣システムの構築▽小児科や産婦人科など病院勤務医の過重労働解消に向けた勤務環境整備▽女性医師の働きやすい職場環境の整備—などだ。これとは別に秋田大を含む全国の医学部の定員増と診療報酬引き上げも決めた。

 一方、県も医師確保に向けた取り組みを強化してきてはいる。医学生を対象とした修学資金制度やドクターバンクの創設、自治体病院への派遣医師を県職員として採用する事業もスタートさせた。さらに新年度には医師確保対策推進チームを設置する計画だ。

 しかし、これら県の施策や事業がどれほど効果があるのかとなると、心もとない。全国が同様の状況にあり、本県だけ医師を増やすことは至難と言わざるを得ないからだ。

 ならば、この危機的な状況をどう乗り越えればいいのか。当面は、今ある医療資源を有効活用するしかない。その一つが医療資源の集約化・重点化といえる。拠点病院に医師や医療機器を集め、病院勤務医の負担を軽減することだ。過酷な状況にある勤務医の労働環境を改善し、悪循環を招く離職を防止しなければならない。病院までの距離が遠くなるなど住民にはデメリットが生じるが、万一の場合に威力を発揮するドクターヘリの導入など救急体制の整備でカバーすることが必要だ。

 また医師の事務を補助する「医療クラーク(事務員)」の導入も効果があるだろう。さらに病院と診療所(開業医)の連携強化を進めるべきだ。県民も、風邪程度ならまずは診療所を利用するといったような姿勢が求められよう。

 いま、県内の病院関係者が危惧(きぐ)していることが一つある。産科、小児科などの医師不足が、内科や外科などにも及びつつあるというのだ。それは文字通り地域医療の崩壊を意味する。

 そうした事態を防ぐためには、県が今まで以上に医療行政に力を注がなければならない。国の方針や施策を待つのではなく、本県独自の施策を大胆に打ち出すことだ。

 いずれにしろ全国どこの地方も医師不足なのだから、医師は簡単には増えない。予算を注ぐことで医師を取り巻く状況が改善される事業を思い切って実施すべきだ。県医師会、秋田大病院、県厚生連なども協力し、一丸となって危機的状況を脱する方策を考えなければならない。

(2008/01/05 10:48 更新)

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